第7話 幼馴染み、勇者と過ごす




 俺は湯浴みが好きだ。


 特に『女神の安息日』にあるシャワールームは熱めのお湯が出るから気持ちいい。


 加えて言うなら。



「は、恥ずかしいからあまり見ないでください……」


「まあまあ、そう言わずに」



 頬を赤らめるティアラちゃんの身体を舐め回すように上から下まで見つめる。


 本当にえっちだ。


 どこを見ても男を喜ばせる要素しかない美少女って最高でしょ。


 俺の息子カリバーも興奮している。



「も、もう!! 背中流しますから、早く座ってください!!」



 俺はティアラちゃんに促されるまま風呂椅子に座り、背中を流してもらう。


 石鹸のいい匂いがシャワールームに充満した。



「ど、どうですか?」


「上手~。あ、そうだ。あれやってよ、あれ」


「ふぇ? あ、あれですか? あぅ、は、恥ずかしい……」



 ティアラちゃんはそう言いながらも、俺の後ろでゴソゴソし始める。


 そして、その次の瞬間だった。


 柔らかくて大きなものが俺の背中に押し当てられて、緩やかに上下する。

 ほのかに硬い二つの突起が背中をくすぐってきて気持ちいい。


 この柔らかくて大きなものの正体はご想像にお任せしよう。


 世の中の全男子が喜ぶものとだけ言っておく。



「……ごめん、ティアラちゃん。ベッドまで我慢しようと思ってたんだが、無理っぽいわ」


「あっ。……も、もう、アッシュさんのエッチ」



 そのままシャワールームでティアラちゃんとやらかす。

 一回や二回では収まらず、ティアラちゃんを隅々まで堪能した。


 俺は性欲が強い。


 どれくらいかと言うと、発射直後にはもう発射準備できる程度だ。


 まあ、俺に関しては勇者の力で精力もパワーアップしてるわけだから、そこまで驚くことではないだろう。


 本当に恐ろしいのはティアラちゃんだ。


 俺がティアラちゃんと出会ってしばらく経つが、一度たりともエッチしてへばっているところを見たことがない。


 むしろ時間が経てば経つほど激しくなり、エッチが濃密になっていく。


 勇者である俺以上に絶倫なのだ。


 相性もバッチリで俺も全く萎える気配がないし、その気になればずっと繋がったまま過ごせてしまうのではなかろうか。


 とはいえ、いくら絶倫でも食事は必須。


 俺とティアラちゃんはシャワールームから出た後、しばらく互いを貪ってから食事を摂った。


 『女神の安息日』では料理を注文して部屋で女の子と食べることができる。

 この料理を手掛けているのがまた一流のシェフらしい。


 当然、味はとても美味いが……。



「美味しかったですね、アッシュさん」


「ああ、まあ、そうだな」


「……美味しくなかったですか?」


「いや、美味いんだけど。ぶっちゃけ俺の親友のティオって奴が作るメシの方が美味いかなって」



 ティオの作る料理が美味すぎるのだ。


 俺がそう言うと、ティアラちゃんは顔を耳まで真っ赤にした。


 怒らせてしまっただろうか。


 このお店で働いているティアラちゃんにとって、俺の発言はあまりいいものではなかったに違いない。


 俺が慌てて謝罪しようとした瞬間――



「アッシュさん、今日はいっぱいサービスしてあげますね♡」


「え、あ、ありがとう?」



 その言葉通り、ティアラちゃんはいつもなら苦笑いする体位や行為も積極的にしてくれた。


 まじでティアラちゃんが天使すぎる。


 俺は最高に幸せな三日間を『女神の安息日』でティアラちゃんと過ごすのであった。



















 三日目の早朝。


 僕はふかふかのベッドで目を覚まし、まだ隣で眠っている彼の横顔を見つめる。



「ふふっ。アッシュの寝顔、子供っぽくてかわいいなあ」


「……うへへ……ティアラちゃん……」


「ホントに、いつになったらティアラの正体が僕だって気付いてくれるのかな?」



 僕の名前はティオ。


 ティアラというのは偽名だし、本当にこの『女神の安息日』で働いているわけじゃない。


 事情を話すと長くなるので今はやめておこう。


 僕は隣でぐっすり眠っているアッシュを起こさないよう、静かにベッドから出て着替え用に借りている部屋に向かう。


 化粧を落として胸にサラシを巻き、急速育毛ポーションで伸ばした髪を切った。


 あとはいつもの服に着替えたら『女神の安息日』で働くティアラから、アッシュの幼馴染みで親友のティオに戻る。


 僕は『女神の安息日』のロビーに足を運んだ。


 すると、受付カウンターに座っていたロザリアさんが僕に気付いて声をかけてきた。



「おや、もういいのかい? ティオ」


「あ、はい。ありがとうございました、ロザリアさん」


「そうかい。ああ、アッシュの坊やが持ってきたお金は返しとくね。部屋代は抜いといたけど」



 僕とロザリアさんは友人と言っても差し支えない仲だと思う。


 あれはいつだったか。


 たしかアッシュと故郷の村を出て、王都にやってきて間もない頃だったはず。


 アッシュは『女神の試練』で忙しそうだったので、暇潰しがてら自作のポーションを市場で売っていた時だった。



『そこのお嬢ちゃん!! うちの店で働かないかい!?』



 せっかくの美人が台無しになるくらい必死な様子で声をかけてきたのがロザリアさんだった。


 僕の考えていることが分かったのか、ロザリアさんは煙管を吹きながら、妖艶な笑みを浮かべて言う。



「ふふ、懐かしいねぇ」


「え?」


「市場で初めてティオと会った時のことだよ。あたしの思った通り、やっぱりあたし以上にドスケベな才能があるよ」



 僕は慌てて首を横に振る。



「ぼ、僕はドスケベじゃないです!!」


「いいや、ティオはドスケベだね。今からでもどうだい? あたしの弟子にならないかい? 最高の女になれるよ?」


「……前にも言いましたけど、僕はアッシュと一緒にいたいのでお断りします」


「世界を傾けられる女にしてみせるよ? いずれはこの店の店主になって、世のすべての男たちを思い通りに操れるようにもなるはずさ。本当にいいのかい?」


「え、遠慮しておきます!!」



 ロザリアさん曰く、僕はとんでもない才能を秘めたドスケベらしい。


 それこそロザリアさんが出会って間もなく『女神の安息日』を任せてもいいと言ってくるくらいには。


 正直、あんまり嬉しくない……。



「で、アッシュの坊やとは今のところどうなんだい?」


「ど、どうって?」


「何か進展はないのかい? 部屋の外まで喘ぎ声と腰を打ち付ける音が聞こえてくるくらい激しく愛し合ってたろう?」


「!? き、聞こえてたんですか!?」


「そりゃあ盛大にね。そろそろアッシュの坊やもティオとティアラが同一人物だって気付く頃なんじゃないかい?」


「そ、それは……まだ、ですね」



 僕は首を横に振った。


 アッシュは鈍感というか何というか、ちょっぴりお馬鹿なのだ。


 今みたいに少し化粧をしてサラシを外し、女の子らしい格好をしたら僕が僕だと気付かないくらいには。


 まあ、そこが可愛いんだけど。


 ……本音を言うならアッシュには早く僕だと気付いてほしい。


 でも気付いてほしくもない。


 僕はアッシュのことを友人としても好きだし、一人の男性としても魅力的に思っている。


 ティアラちゃんの正体が僕だと知ったら、アッシュは友人として僕に接してくれることがなくなりそうで怖いのだ。



「やれやれ、アッシュの坊やにも困ったもんだよ」


「……ごめんなさい。色々とお膳立てしてもらってるのに」


「いいよ、悪いのは鈍いアッシュの坊やさ」



 そう。


 僕が『女神の安息日』でアッシュとエッチできるのは、他ならぬロザリアさんのお膳立てがあってのことだ。


 何でもロザリアさんには、勇者のアッシュでも断れないようなコネがあるらしい。


 お城の偉い人から『女神の安息日』の紹介状をアッシュに渡してもらい、ここに連れてきてもらった。


 お陰で僕はアッシュと初めてを交換できた。


 アッシュと友人のままの関係でいたいけど、やっぱり男女としても親しくなりたいと思ってロザリアさんに相談した結果だ。


 だからロザリアさんには感謝しかない。



「本当に、ありがとうございます。ロザリアさん」


「いいよいいよ。あたしは若い男女の色恋沙汰を見るのが好きなだけさね。本音を言えば二人のエッチに混ぜてもらいたいけどね」


「だ、駄目です!! それは絶対に駄目です!!」


「冗談だよ。半分はね?」



 アッシュはスケベだ。


 綺麗な女の人を見つけたらナンパするし、アッシュは顔もいいから普通に成功する。


 僕の把握しているだけでも一日に二、三人は抱いている。

 相手が人妻でも幼い少女でも可愛いと思った女の子は抱きに行くのだ。


 本当に、僕が愛してしまった男の人は悪い人だと思う。


 そこもまあ、可愛いんだけど。


 そんなアッシュにロザリアさんみたいな美人が迫ったら絶対に抱きに行く。


 僕が女としてアッシュと過ごせる時間を他の女の人に取られたくないし、アッシュには僕で気持ちよくなってほしい。


 だから絶対にアッシュとロザリアさんを同じ部屋に居させちゃ駄目なのだ。



「とにかく絶対に駄目ですから!!」


「ふふふ、本当に冗談だよ。っと、そろそろアッシュが起きてくるよ?」


「え、あ、そうですね!! じゃあ僕は先に宿に戻ってますから!!」


「ああ、帰り道に気を付けるんだよ」



 僕は急いで宿に戻る。


 まだ日が昇り切っていないため、人の気配がない王都の街中を走った。


 そうしてアッシュが帰ってくるのを待つ。


 きっとまた僕がティアラだと知らず、僕とエッチした話を自慢気に赤裸々に語るのだろう。

 それがまた可愛くて、僕もちょっと興奮してしまうのだ。


 と、その時だった。


 コンコン、と誰かが僕の部屋のドアを軽くノックする。



「アッシュがもう帰ってきたのかな?」



 僕はアッシュを迎えようと扉を開ける。


 しかし、そこにいたのはアッシュではなく、知らない大柄な男だった。



「え、だ、誰?」


「……おい、お前がティオって奴か?」


「えっと、は、はい。そうですけど」



 何が起こっているのか分からなくて困惑していると。



「悪いなあ、嬢ちゃん」


「むぐ!?」



 次の瞬間、僕は薬を嗅がされる。


 かなり即効性があるようで、僕は気を失ってしまった。


 そして、僕は心の中で助けを求める。



(……アッシュ……)



 大丈夫。


 何も恐れる必要はない。アッシュならきっと助けに来てくれる。


 そうして、僕の意識は暗闇に消えてしまった。








―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「友達でいる時間も大切だけど、男女でイチャイチャしたい時間もある……。作者の人生ではなかった時間です」


ア「お、おう、そうか」



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