第6話 勇者、お店に行く







 サヤとめちゃくちゃエッチした後。


 俺たちは山賊を縛り上げて拐われた村娘たちを救出し、村まで護衛した。


 村長からは感謝され、宴を開いてもらった。


 最高だったのは捕まっていた村娘たちがお礼と称してエロいことしてきた時である。


 まさに酒池肉林の宴だった。


 ティオも誘われていたが、顔を赤くしながら断っていた。

 こういう時はガンガン行った方がいいのに、相変わらずむっつりだな。


 さて、今回の依頼は無事に完了したが、一つ問題が残っていた。


 サヤに関してだ。



「旦那様。何か困ったことがあったら、この鈴をならしてほしい。旦那様のピンチには必ず駆けつける。――もちろん♡ ムラムラした時に呼び出してくれても構わない♡」



 そう言ってサヤが俺に鈴を預けてきた。


 ぶっちゃけ俺にピンチなどないし、エッチなお店に通うお金がなかった時くらいしか呼ばないかもしれない……。


 というのは心の内に仕舞っておいて俺は鈴を受け取った。



「あー、サヤ。デキてたら面倒くらいは見るからな」


「流石は旦那様、素敵♡ カッコイイ♡ 好き♡」



 そして、サヤは唇を尖らせてご機嫌斜めなティオの方を見て声をかける。



「あと、そっちのお前」


「え? えっと、僕のことかな」


「そうだ。少し耳を貸せ」



 俺に聞こえない小さな声で去り際にティオに何かを囁いた。



「安心しろ。私は娶られるとしても、二番目の妻でいい。いや、別に妻でなくとも愛玩用のペットでも構わん」


「!? い、いきなりなんの話!?」


「……お前と旦那様は恋仲ではないのか? お前の身体中から濃密な旦那様の匂いがしたのだが。一度や二度の交尾では着かないような匂いだ」


「ち、ちが、あぅ、違わなく、ないけど、色々と事情があって……ごにょごにょ」



 会話の内容は分からなかったが、ティオは顔を真っ赤にしていた。


 サヤは何を囁いたのだろうか。


 それを聞く前にサヤは音もなく足早に立ち去ってしまった。



「……じゃ、帰るか」


「う、うん」



 こうして俺とティオは王都アストラーダへと帰還した。


 そうそう、山賊たちについてだが。


 洞窟で頭目が待ち構えていた部屋の奥にはもう一つ隠し部屋があった。


 そこには村娘捕まっていただけでなく、今まで山賊たちが人々を襲って集めてきた大量の財宝があったのだ。


 山賊を退治した場合、その山賊が持っていた財宝は討伐者に所有権が与えられる。


 元々名のある賞金首の山賊だったようで、王都の兵士に引き渡すとしばらくは働かなくてもいいくらいの金が手に入った。


 宿に戻ってきた俺は早速ティオに立て替えてもらった金を返す。



「ティオ!! これでお前が立て替えてくれた金は全額返済できたよな!?」


「う、うん、そうだね」


「よっしゃあ!! じゃあまた夜のお店行ってもいいよな!?」



 俺がそう言うと、ティオは「むぅ」とまた唇を尖らせた。



「好きにすればいいんじゃない? アッシュの稼いだお金なんだし」


「じゃ、俺はちょっくら『女神の安息日』に行ってくる!! 待っててくれ、ティアラちゃん!! 今すぐ会いに行くからな!!」



 俺は興奮して、思わず最近熱中しているお気に入りのお店の女の子の名前を叫ぶ。


 すると、何故かティオが焦り始めた。


 めちゃくちゃ動揺しているみたいだが、何かあったのだろうか。



「どうしたんだよ、ティオ?」


「あ、いや、えっと、僕ちょっと用事を思い出したから!!」



 そう言ってティオは宿を出て行ってしまった。


 少し気になるが、まあ、困り事なら俺に相談してくるだろう。


 深く考えるのをやめて俺も宿を出る。


 向かう先は貴族もお忍びで使う高級色街の中央にある建物だった。


 俺は勢いよく扉を開け、建物の中に入る。



「おっ邪魔しまーすっ!! ロザリアさん!!」


「おや、アッシュの坊やじゃないか。また来たのかい?」



 俺を出迎えたのは受付の高そうな椅子に腰掛けたグラマラスな美女だった。


 紫色の髪は腰まで届くほど長く、菫色の瞳が俺を真っ直ぐ見つめている。

 肌は色白で、顔立ちが人形のように恐ろしく整っていた。


 煙管を吹かして妙に色気を放っている。


 彼女こそ俺が金に余裕のある時に通い詰めているエッチなお店、『女神の安息日』の店主であるロザリアさんだ。



「で、今日は誰を指名するんだい?」


「ティアラちゃん一択!! 三日間で!!」


「……ふふふ、相変わらずだねぇ? いいよ、いつもの部屋で待ってな」



 ロザリアさんから鍵を受け取って、指定の部屋に向かう途中。


 俺は廊下で顔見知りと遭遇してしまった。



「あ、王様。おひさ」


「ん゛んっ!! ひ、人違いではないかのう」


「いやいや、王様がここに通い詰めてんのは誰でも知ってることだから。誤魔化しても意味ないだろ」



 一見するとただの初老の男性だ。


 しかし、この人物の正体が実はとてつもない大物だったりする。

 俺が勇者として活動しているアストラダム王国の国王、アレクサンドリア三世だ。


 パッと見はただ遊び歩いているだけの老人にしか見えないが、マジの話である。


 王様がこっそり耳打ちしてきた。



「コホン、アッシュよ。このことはどうか妻には内緒にくれんか?」


「王妃様なら把握してるだろうが……。ま、王様にはここの紹介状を書いてもらった礼もあるからな。黙っておくぜ」


「ほほほ、お主も男になってきたのう。どれ、今度城へ来たら一杯どうじゃ?」


「お高いヤツ?」


「王の飲みものじゃぞ? 王国一の品物に決まっておろう」


「ぐへへへ、じゃあ酒代に困ったらご相伴に預かろうかね」



 二人で悪い顔をして笑う。



「ところでアッシュよ。あの子はどうしておるかの?」


「あの子?」


「ほれ、あの子じゃよ。お主の幼馴染みの……」


「ああ、ティオのことか。まあ、元気にしてるけど、それがどうしたんだ?」


「……いや、元気ならば、それでよいのじゃ」



 よく分からないが、王様は満足そうに頷いた。


 少し雑談してから王様と別れ、俺は指定の部屋でお目当ての人物がやって来るのを待つ。


 しばらくして、部屋を誰かがノックした。



「お、お待たせしました、アッシュさん!!」



 急いで走ってきたのか、その絶世の美少女は肩で息をしていた。


 雪を彷彿とさせる純白の長い髪、琥珀色に光るぱっちりした目。

 陶器のような肌は色白で、ふわふわした甘い匂いがする。


 何より目を引くのは大きなおっぱいだろう。


 華奢で小柄な体躯には不釣り合いなほど豊かなおっぱいで、そのサイズ感はメロン並みと言っていい。


 それでいて全体のシルエットが奇跡的なバランスで美しく整っているのだ。


 ああ、何もおっぱいだけではない。


 腰は括れてキュッと細く締まっており、太ももはむっちりしている。

 脚が長く、お尻の肉付きもしっかりしていてエッチだ。


 芸術の神様が自らの心血を注いで作った存在だと言われたら万人が納得するであろう美しすぎる少女だった。


 あと単純に生地の薄い純白のネグリジェが似合っていてエッチすぎる。


 彼女の名前はティアラちゃん。


 この女神の安息日で働く女の子で、俺の童貞をもらってくれた人物だ。



「ティアラちゃんは今日もかわいいな」


「え、えへへ。ありがとうございます、アッシュさん」



 そう言って柔らかく微笑むティアラちゃんは、少し緊張しているようだった。


 もうお互いの気持ちいいところを把握しているくらい肌を重ねているのに、演技っぽさを感じさせないこの初々しさ。


 まじ最高っすわ。



「じゃあ、えっと、その、一緒にシャワー、浴びませんか?」


「浴びる浴びる!!」



 俺は迷わず服を脱ぎ捨てて、部屋に備え付けられているシャワールームに入った。


 ここが『女神の安息日』の凄いところだ。


 王城でも使われているような温かい水が出る魔法の道具を始め、魔法を利用した照明器具等が各部屋に設置されている。


 ま、王様も使うエッチなお店だからな。


 王様自身が後ろ盾になっていることもあってか、国が開発した最新の魔法具を真っ先に使えるのだろう。


 この快適な空間で、俺はティアラちゃんと三日間を過ごすのだ。


 本音を言うと一ヶ月は過ごしたい。


 食事も睡眠もティアラちゃんと肌を重ねたまま過ごしたい。

 でもそれをするとティオが怒るだろうし、冒険者ギルドの依頼も溜まってしまう。


 何より勇者と言えども客は客である。


 この『女神の安息日』を使うと結構なお金がかかるのだ。


 月に一度、数日お泊まりするのが限界だった。



「アッシュさん? どうかした?」


「あ、いや、ごめんごめん。ティアラちゃんとどう過ごそうか考えてた」


「ふーん?」



 お金のことを考えるのはやめよう。


 というかそもそも、俺は細かくお金のことを考えられない馬鹿だ。


 そういうことはティオに任せればいい。


 俺が稼いだ金をティオに管理してもらって、そのお金からいくらかお小遣いを貰い、そのお小遣いを好きなように使う。


 それだけでいいのだ。


 などと考えていた俺に向かって、ティアラちゃんが恥ずかしそうに言う。



「えっと、じゃあ、いっぱい気持ちいいコト、して過ごそう?」


「――おう!!」



 俺はティアラちゃんと二人でシャワールームに向かった。







―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「この勇者、鈍感すぎない?」


テ「ね」



「おい勇者、気付け!!」「男装女子が女の子の格好したら萌えるよね」「あとがきにティオいて草」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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