第5話 勇者、うさみみ美女を口説く





「お? あれだな」


「うん、間違いないよ」



 俺とティオは山賊が根城にしているであろう洞窟を発見した。


 ご丁寧に見張りと思わしき山賊が二人いる。


 普通の冒険者なら仲間を呼ばれないように作戦でも立てるのだろうが……。



「ティオ、俺から離れるなよ」


「わ、分かった」



 俺は特に準備もしないで山賊たちの前に立った。



「あ? んだてめぇ、村の人間か?」


「いや、冒険者じゃねぇか? たった二人で来やがったのか」


「あー、一応確認はしておく。お前らが山賊だな?」



 俺の問いに対し、見張りの山賊二人は顔を見合わせた。


 そして、下卑た笑い声を上げる。



「ぎゃははは!! 他のもんに見えるならお目めのお医者さん行った方がいいぜ!!」


「ま、オレたちから無事に逃げられるならの話だがよお!!」


「そうか、なら遠慮なく行くぞ。――3%パンチ」


「え?」



 俺は山賊二人のうち、腹を抱えて笑っていた方を殴り飛ばした。


 顔がメキョッという音を立てて凹み、そのまま後ろの方にぶっ飛ばされて、地面に頭から突き刺さる。


 もう一人の山賊は仲間に何が起こったのか分かっていないようだった。



「え? え? い、今、何が――」


「3%パンチ」



 もう一人もぶん殴って地面にぶっ刺しておく。


 完全に意識を刈り取ったので、半日は目を覚まさないだろう。


 俺はティオを連れて洞窟の中に突入した。


 山賊が根城として利用しているからか、洞窟の岩肌には壁掛け松明が設置されており、視界は確保されている。



「ティオ、松明を持っててくれ」


「うん」



 万が一、敵が壁掛け松明を消して暗闇で待ち伏せしていたとしてもこれで大丈夫だ。


 まあ、俺は暗闇でも問題なく戦闘できるが、複雑な道が続く洞窟の中でティオとはぐれてしまっては大変だからな。


 俺はズカズカと洞窟の奥に進む。


 道中で山賊に遭遇したが、完全に油断していたのでぶん殴って気絶させ、地面に刺しておいた。


 弱い弱い。



「おっ、ここが行き止まりみたいだな」



 複雑な洞窟の中を虱潰しに探索していると、大きな扉に突き当たった。


 ここに山賊の頭目がいるのだろう。



「邪魔するぞー!!」


「あ? な、なんだ、てめぇは!?」


「3%パンチ」


「へぶ!?」



 頭目と思わしき男に一撃をかます。


 今まで遭遇した山賊同様、ワンパンで意識を完全に刈り取った。


 と思ったのだが、頭目は鼻から下が真っ赤に染まるくらいの大量の血を流しながら、よろよろと立ち上がる。


 3%パンチで倒せないということは、それなりに強い相手ということだ。



「て、てめぇ、い、いきなり何しやがる!!」


「何って、山賊退治?」


「お、お前、さては冒険者か!! おい、野郎ども!! さっさと来やがれ!!」



 山賊が大声で叫ぶが、やってきたのは数人。


 運良く俺と遭遇しなかった山賊ばかりで数は少なかった。



「くそっ!! 他の奴らは何してやがる!!」


「ああ、それなら俺が気絶させたぞ。こんな感じで」


「――え?」



 俺はやってきた山賊たちを一瞬で沈めた。


 正確にはほぼ一瞬、頭目の目には瞬きした間に山賊たちがバタバタと倒れたように映っただろう。


 制圧完了だ。


 あとは頭目を締め上げて、拐われた村娘たちを救出したら今回のお仕事は終わりだな。



「こ、こうなったら、おい!! さっさと出てこい!! お前にいくら出したと思ってる!!」


「いちいち大声で叫ばなくても聞こえている」



 何者かが音もなく頭目の背後に立った。


 夜空を彷彿とさせる艶のある濃紺色の髪と月のような黄金の瞳の美女だ。


 長身で肌は褐色、抜群のプロポーションだった。


 おっぱいが非常に大きくて、腰がキュッと細く絞まっており、太ももはムチムチでお尻は安産型という最高にエッチだ。


 何より俺を驚かせたのはその格好だろう。


 街中を出歩いていたら痴女と思われるであろうピッチリ身体にフィットした妙にテカりのある全身タイツだ。


 得物のナイフや胸当て、身体の各所を守る防具のお陰で辛うじて戦闘服だと分かるが……。


 どのみち破廉恥極まる格好である。



「……獣人か。珍しいな」



 俺は思わず呟く。


 その美女には人間の耳がなく、代わりにウサミミが生えていた。


 頭目がその美女を見て歓喜の声を上げる。



「そ、そこにいたのか!! 早くこの冒険者を殺してくれ!!」


「分かった」


「へ、へへ、これでもうてめぇは終わりだ、冒険者!! こいつは暗殺者ギルドの元エース、伝説のアサシン『夜兎』だからな!!」


「……人の素性をペラペラ話すな」



 暗殺者ギルドの元エース?



「お前が山賊に雇われてる用心棒か?」


「そうだ」


「名前は?」


「……教える必要はないが、冥土の土産に教えてやる。私の名はサヤ。夜兎のサヤだ」


「サヤ、か。いい名前だな。俺はアッシュという」



 まずは簡単な自己紹介を済ませる。


 サヤは暗殺者らしい静かな殺気を放ち始めるが、俺は構わず問うた。



「年齢は?」


「そんなことを聞く必要があるのか?」


「ああ、ある」


「……十九歳だ」



 なるほど、つまり……。



「歳上の黒髪褐色ウサミミの長身美女!! 最高じゃねーか!!」


「……何を、言っているんだ、お前は?」


「なあ、サヤ。そんなハゲ散らかした山賊のオッサンなんて放っておいて、俺とイイことしようぜ!!」


「アッシュのお馬鹿……」



 背後からティオの呆れる声が聞こえてきたが、こればかりは仕方ない。


 美女は誘って抱くものだ。


 それが例え大勢の人を殺めた極悪人であっても俺は構わない。


 いい女ならヤる。当然のことだろう。


 俺が期待で息子カリバーを奮い立たせていると、サヤはまるで汚いものを見るような目で俺を見つめてきた。


 美女に冷たい目で見られると興奮しちまうぜ。



「冒険者、お前はさっき一瞬で山賊どもを蹴散らしたな」


「ん? それがどうしたんだ? あ、仲間ボコッちまったから怒ってる?」


「別に。山賊どもは雇い主にすぎないからな。ただ、速度で自分が勝っていると思っているなら間違いだと指摘しておく。私にもお前と同じ芸当ができる」



 そう言って黒兎は凄まじいスピードで洞窟の中を縦横無尽に駆け回り始めた。


 天井や壁を蹴って残像を作りながら。



「たしかに速いが……」



 俺が口を開いた瞬間、サヤがナイフを構えて上から襲ってきた。

 サヤの振るったナイフを、俺は人差し指と中指で挟む。


 ナイフを手放し、咄嗟に俺から離れるサヤ。


 その表情は努めて冷静を装っているが、明らかに動揺している。



「ま、ガチバトルでもいいか。戦った後でヤる方が興奮するし」


「寝言は寝てから言え」


「じゃあ俺と一緒に寝ようぜ?」


「……私に勝ったらな」


「ますますやる気が出てきた。ちょっと本気出すわ」



 俺は足腰に力を込めて、拳を握る。



「――10%パンチ」


「!?」



 地面を抉れる勢いで蹴る。


 サヤは全く反応できなかったようで、俺の拳が顔面に直撃する――


 ことは無かった。


 俺はサヤの顔面に拳が当たる直前で拳を寸止めしたのだ。



「なんてな。これからヤる女の顔面は殴らねーよ」


「……さっき山賊ども蹴散らした時は、全力ではなかったのか」


「まあな。俺が本気出したら周辺一帯が更地になるかも知れん」



 10%パンチですら衝撃波が生じて洞窟が揺れてるからな。

 やったことはないが、本気を出せば周辺が更地になると思う。


 と、その時だった。



「やっと、見つけた」



 サヤが凄まじい速度で迫ってきた。


 不意を狙った攻撃かと思い、適当に対処しようとしたのだが……。


 どうやら違ったらしい。


 サヤが俺を攻撃することはなく、いきなり抱きついてきた。



「私よりも強い――オス♡」


「ひょ!?」



 大きくて柔らかいおっぱいを腕にぐいぐいと押し付けられる。


 あまりの感触に変な声が出た。


 そして、サヤは俺の耳もとで媚びるような上目遣いと猫なで声で囁いてくる。

 


「好き♡ 旦那様の子供、産ませてくれ♡」



 俺は迷わなかった。


 勇者に相応しい毅然とした態度で即断即決をする。



「いただきます!!」



 俺はズボンを下ろし、雄々しくなった息子カリバーを抜く。


 第二ラウンド、ファイ!!


 

 






―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「一度でいいから本物のうさみみ美女の耳と尻尾の付け根辺りの匂いを嗅いでみたい」


ア「極まってやがる……」



「山賊秒殺で草」「うさみみ最高!! うさみみ最高!!」「変態だ……」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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