第3話 簡単キーマカレーと薬膳キーマカレー

 さて、僕ことクロジのレシピ帖も3回目まで進んできた、主菜、副菜ときたので、今日はご飯ものを紹介しようかと思う。前回のきんぴらが比較的工程が多かったので、今回は簡単なものがいいなと思い、簡単キーマカレーを紹介しようと思った。


 クマイさんに相談したところ、アレンジバージョンとして薬膳バージョンもどうかと言われた。なぜか知らないが、クマイさんは中医学や漢方、薬膳に興味があって時々研究している。


 「今回は前置きもそこそこに、材料の紹介に入るよ!」


材料(簡単版)

・ひき肉(なんでも可) 150g (Sサイズ1パック)

・にんじん 中1本

・玉ねぎ 中1個

・じゃがいも 中1個

・マッシュルーム 1パック (舞茸等他のキノコでも可)

・カレールー 2~3個 (顆粒カレールーは1袋)

・青唐辛子 1~2本 (好みで省略可)

・ワイン 100ml程度 (赤でも白でも可)


「とりあえず基本のキーマカレーを紹介するよ!」

「まずは材料をみじん切りにするんだろ!」

「そうそう、野菜類は全部3~5ミリ角のさいの目に切ってね!」

「どうせ後で火を通しちゃうので、厳密でなくていいですからねぇ!」

「マッシュルームだけは削ぎ切りでキノコ感出しても美味しいぜ!」


 3人で手分けして切ると、ものの10分ほどで材料が切り終わった。正直、この工程が一番面倒だと言える。


「……ってことで、全部切ったら、フライパンに油を引いてひき肉を炒めて!」

「炒めてます!」

「ざっくり火が通ったら刻んだ野菜を入れて……」

「入れたぜ!」

「蓋をして、ワインを入れて10分くらい中火にして……」

「日本酒でもいいんですかねぇ?」

「ウイスキーやブランデーみたいな高アルコール度数のお酒でなければ、なんでもいいよ!なければお水でも!」


 この工程は、出来るだけ密閉度の良いふたがいい。無水鍋や鋳物の鍋があれば一番いいし、フライパンでやる場合はできればしっかりと密閉できる蓋があるといい。野菜からじっくりと水分と旨味を出す工程だからだ。焦げないように火加減の調節だけは気を付けてほしい。


「野菜にしっかりと火が通ったら火を止めて、ルーを2個入れて、蓋をして3分待ちます」

「少なめだったら、1個から始めてもいいんですよねぇ?」

「もちろん、加減しながら作るのが上達のコツだからね!」


 ここでは、火を止めた状態でルーを入れ、ルーが柔らかくなるのを待つ。最近登場した低脂肪の顆粒ルーの場合も全体に振りかけて蓋をして待ってほしい。


「3分たったらふたを開けて、弱火にして木べらでしっかりと混ぜてね!」

「焦げないように気をつけろよ!焦げは最大の失敗の原因だからな!」

「カレーの香りがたまらないですねぇ!」


 焦げないように気を付けながらカレーを混ぜると、いい香りが立ち上ってくる。ある程度で火を止めて、スプーンで一口ずつ味を見る。


「いいんじゃねえのか?」

「特に追加でルーとか、塩は要らないと思いますねぇ」

「とりあえず、この部分で色々調整してくれれば大丈夫です。少しルー多めが良ければ水を足して煮立たせて、火を消してルーを足してもいいからね!」


 ここで、最後の仕上げである青唐辛子を刻み、カレーにふりかける。青唐辛子を刻むときは、手に辛み成分が残ってしみたり、目を触って痛くなったりする可能性があるので手袋をしておいた方がよい。


「これがあると無いとでは、大ちがいなんだよね!」

「辛いのが苦手な人は無理しなくていいぜ!」

「香り付けでほんの少し入れるだけでも美味しくなりますよねぇ!」

「じゃあ、食べてみよう!」


 あとで薬膳版も作るので、軽くご飯をよそってカレーを添える。汁気の少ないカレーなので、カレーは「かける」というより「添える」という感じになる。カレーを少しずつご飯と混ぜながら食べていく感じになる。


「辛さが突き抜けててうまいぜ……!」

「お野菜の味がしっかりと感じられて、美味しいです!」

「ルーも少なめでヘルシーだよ!」


 一通り簡単キーマカレーの解説が済んだところで、ここからはクマイさんに薬膳キーマカレーの説明をしてもらう事にした。


「では、ここからはボクが薬膳版を作ります!ご安全に!」

「たぶん、手順はそんなに大変じゃないけど、説明が長い感じだよね!」

「クマイスタイルだから、そこは勘弁してくれ!」


「じゃ、材料を紹介しますよ!」


材料(薬膳版の追加材料)

・蓮の実 20個程度

・松の実 20g

・クコの実 10g


「まず蓮の実は一晩水につけておいてくださいねぇ!そして、手で半分に割ると中に芽が入っている場合がありますので、これは取り出しておいてください。苦いので料理には使いませんが、芽も薬効があるんですよ!」

「これは、どういう効果があるんだ?」


「蓮の実、または蓮子れんしは、収渋類しゅうじゅうるいという分類になります。これは、臓器を引き締める効果を持ちますので、咳止めや汗が出やすいとか、あとは尿漏れなんかに効果がある種類の食品です。特に蓮子は補脾ほひ益腎えきじん安神あんじんの効果があります。わかりやすく言うと、胃腸を強くしてアンチエイジングの効果があり、あと心を落ち着けて不眠にも効果があります!」


「副作用とか無いの?」


「蓮子は上品じょうぼんに分類される生薬で、不老長寿薬、つまり常食しても特に害がなく、体を健康に保つ薬なんです!ただ、性質上下痢止めの効果があるので、便秘になりやすいかもしれません。これは、松の実を入れることで改善しています!」


「これでほっこりホクホクして旨いんだから、言う事がねえよな」

「芽は更に強力な安眠効果がありますから、苦いですけど煎じて飲んでほしいです!」


 例によって情報量が多めである。


「つぎは、松の実について解説してくれる?」


「松の実は滋陰類じいんるいに分類されます!これは、身体に潤いをもたらす効果があるんですよ!松の実は特に滋養強壮効果が高く、咳を止め、腸を潤して便秘を防ぐ効果があります。だから、蓮の実と相性がいいんですねぇ!」


「お互いの欠点を補い合えるわけだな!」

「松の実も上品じょうぼんに分類されるので、頻繁に食べても問題ないですよ。これもアンチエイジング効果が期待できます!」


「料理にはどう使うの?」

「カレーには、出来上がったら最後に混ぜる感じで使うと良いと思います!」


「じゃあ、次はクコの実だね!」


「クコの実、または枸杞子くこし滋陰類じいんるいに分類されます!これは益腎、つまりアンチエイジング効果が高くて滋養強壮になります。咳を止めたり、視力の改善、耳鳴りなどに非常に効果があると言われています!これも、もちろん上品じょうぼんに分類されています!」


「なるほど!ところで、中品ちゅうぼん下品げぼんはダメなのか?」

「いえ、そうでは無くて、中品ちゅうぼんは少量なら常食しても大丈夫なものが多く、下品げぼんは効果が強いだけに使い方に注意が必要と言う事ですね!」


「で……肝心のカレーへの使い方は?」

「これは、少量の水でもどして、最後に上にトッピングしてください!一緒に煮ると甘みがでますので!」

「甘み重視のカレーなら一緒に煮てもいいの?」

「そういう使い方でもOKですよ!」


 とりあえず、説明が長いのでまとめておくと、蓮の実は一晩水に戻して野菜を煮るタイミングで一緒に入れる。松の実は出来たタイミングで混ぜる。クコの実は少量の水でもどして上にトッピングする、ということになる。


「さあ!こっちも食べてみましょう!」

「蓮の実の食感がいいな。味もクセが無いし、ホクホクした感じが好きだぜ!」

「松の実はナッツみたいで味にコクがでるし、クコの実は付け合わせみたいな感じで食べられるね!」

「これで身体にいいんですからねぇ!」


【作り方のまとめ】


材料(簡単版)

・ひき肉(なんでも可) 150g (Sサイズ1パック)

・にんじん 中1本

・玉ねぎ 中1個

・じゃがいも 中1個

・マッシュルーム 1パック (舞茸等他のキノコでも可)

・カレールー 2~3個 (顆粒カレールーは1袋)

・青唐辛子 1~2本 (好みで省略可)

・ワイン 100ml程度 (赤でも白でも可)


材料(薬膳版の追加材料)

・蓮の実 20個程度 ※一晩水につけておく

・松の実 20g

・クコの実 10g


 野菜類はマッシュルームを除き3~5ミリ角にカットする。マッシュルームはそぎ切りにする。


 フライパンに油を引き、ひき肉を炒める。


 野菜類を入れ、軽く炒めた後でワインを加え、蓋をする。中火で10分程度加熱する。[薬膳版:このタイミングで水で戻した蓮の実をいれ、野菜と一緒に加熱する。10分たったタイミングで蓮の実が柔らかく煮えているか確認する]


 野菜が柔らかくなったら火を止め、カレールーを入れる。火を消したまま蓋をして余熱で3分カレールーを溶かす。


 3分たったらルーと具材をよく混ぜる。ここで味を見て、ルーが不足していればルーを入れ、塩味が不足していたら塩を入れる。好みでカレー粉をふったり、ガラムマサラを入れてもよい。[薬膳版:このタイミングで松の実を入れる]


 味の調整が終わったら、刻んだ青唐辛子をいれる。青唐辛子を扱う際は手袋等をした方が良い。


 ご飯をよそってカレーを添えて完成。[薬膳版:このタイミングで水に戻したクコの実をトッピングする]

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