第11話 東京ナンパ物語
「いやでもこんな面白みのない男子大学生の自己紹介なんて聞いてもしょうがないですって」
「いいからいいから」
断ってもこれ自己紹介するまで話が進まないタイプのやつだわこれ、仲間にするコマンド選ばないと無限ループするやつ。
「もう分かりましたよ、すればいいんでしょ」
仕方ないと呆らめこほんと咳払いをする。
まあ自己紹介すること辞退は構わないのだが、下手に自分自身を知られている人にするのは気恥ずかしい。
「あ、ちなみに自己紹介が面白くなかったら椿の情報は何も教えないからね」
「流石に理不尽すぎねえか、普通に滑ったらどうするんだよ」
「君の何とも言えない切ない、恥ずかしそうな顔を肴に私は美味い飯とワインを飲んで帰るわ」
「いろいろと地獄だな」
「ネタが面白くても面白く無くても、お礼にご飯は奢ってあげるからいっぱい食べて帰りなさい」
「それはありがとうございます」
並べられている料理はなかなかに豪華で刺身の盛り合わせに唐揚げ、焼き鳥などが並べられており、経験から盛り付けや食器にまでこだわっているここの店はかなりの美味さと見る。
それはそれとしてここは、薔薇色の学園生活の為に全力で自己紹介をするとしよう。
「じゃあ僭越ながら自己紹介をさせて頂きます」
こほんと咳払いをする。
「すでに承知かと思いますが名を天野 と申します」
「生を受けてはや19年、色恋や青春といった唾棄する物には目もくれず、男1匹孤独ながらも自らのは幸せとは何かと常々考え阿呆と笑われながら精一杯生きて来て参りました」
「先日からタバコと夜遊びとお酒を辞めて何を希望にして生きて行けばいいかと悩んでいた所にこんなにも美しい淑女と食事を出来るとゆうことでとても嬉しく思うと共に、今後ともよろしくお願いします」
頭を下げるのと同時にに買ってきたクッキーを手渡す。
「必死ね、まあでも1人の女の為に頑張る男の子は好感触かな」
ニヤリと笑うとグイッとワインを煽る。
「それはどうも」
「じゃあお互い自己紹介も終わった所で仲を深めて行きましょうか」
「ちなみに面白さの方は?」
「まあまあね、お世辞は良かったわ」
「どっちにしても冗談だから気にしなくていいわ」
「ほんとに人を弄ぶのが好きですね」
「ええ大好きよ」
僕の不満そうな顔などどこ吹く風で彼女は上機嫌にで答える。
「こんなに面白いことを私は他に知らないもの」
「それならもっといい趣味探した方がいいですよ」
「ありがとう、でも今はこれで我慢するわ」
「さいですか」
「それよりも椿は元気にしてる?」
「まあ元気にしてますよ」
「この間遊びに行った時は僕よりはしゃいでましたし」
「それなら良かったわ」
「前に会った時は少し疲れてたみたいだから」
「もしかして椿とは知り合いですか?」
「そうね、腐れ縁って所かしら」
「愚痴に付き合いながら一緒に何件も梯子して飲んだこともあったわね」
まさか知り合いであったとは何とも驚きだ。
この様々な人間が入り乱れるこの街でまさか彼女の友人に出会えるとは思っていなかった。
「最近は会ってなかったんですか?」
「最近めんどくさいのに目をつけられてね、少しこっちもバタバタしててさ、まあ元気そうなら良かったよ」
「めんどくさいのに目をつけられたっていったいなにしたんですか」
「夜の街で男の浮気調査をしたらそいつが以外と曲者でね、嗅ぎまわってるのがバレたみたいで」
「それで今、逃げ隠れしていると」
「そうゆうこと」
「一応私までたどり着かないようにはしてるけど用心の為にね」
今日の待ち合わせ場所にこの店を選んだ理由が分かる気がする。
「それよりも天野くんは椿とはもう付き合ってるの」
「あ、いや付き合って分けじゃないです」
「でも椿の写真みたけど多分一緒にいたのはあなたでしょ?」
「それはそうなんですけど色々とありまして」
「色々ってなによ?」
ぐいっと興味深々に身を乗り出して来るのを前に少し身を引く。
「えーっとまあ話すと長くなるんですけど」
それから僕は彼女に助けて貰ってからの大体の部分を話した。
彼氏のふりをしていることから幼馴染であること。
この前のデートに文化祭まで2人でゲームをしているなど恥ずかしい所やプライバシーに関わる所はカットさせて貰ったが大体を説明した。
「なかなか面白いことになってるわね」
「こっちからしたら大変ですよ」
「ゲームだからって言って学部も本名も教えて貰えないわ、なんだかコソコソと噂話が聞こえるようになって来たりで」
彼女とあれから何度か会ってはいるが、観覧車以降から彼女についての情報は一向に増えていない。
少なくとも分かったことはいつでも可愛くて、花のような甘い匂いがして甘え上手とゆうことだけである。
「遊ばれてるんですかね僕」
「遊ばれてはいるかもね」
「ぐはっ!」
あーどうせ相手にされてないことぐらい分かってましたよ、女の子がいつも僕に気があるなって思った時はいつもこうだ。
イージーモードで遊びたいのに勝手にハードモードで調整されるとかどんなクソゲーだよ、責任者はいまぐここに来て謝罪をしろ。
「でも大体あの子からデートのお誘いは来てる訳でしょ?」
「そうですね、1週間に1回は」
「それならまだ脈ありかもね」
「マジですか!」
「あの子が積極的に誰かに懐くのは珍しいから」
これはワンチャンあるのではないだろうか。
頭の中でありえもしない長編夢物語を執筆してる中彼女は顎に手を当て何かを考え口を開く。
「じゃあ私とも一つゲームをしようか」
「ゲームですか?」
「いまちょうど人が欲しいけど、私達は派手に動けなくてね」
ガサガサとバックを漁るとスマートフォンを僕の前に置く。
「10分以内に5人分の電話番号かチャットアプリのアカウントを手に入れて来なさい。
そしたら彼女について私の知ってることを答えてあげる」
「おい、俺まだ飯も食わせて貰ってないぞ」
「働かざる者食うべからず」
「おかしいぞ、さっきいっぱい食えって言われたのになぁ。人の心とか無いの?子供の頃に道徳の授業とか無かった感じですか?道徳一発キメときます?」
「はい、よーいスタート」
「ああもう、マジでコイツ人の心ねえ!」
「帰ったらあんたの財布空になるまで、いや店の物全部食いつくからな!」
スマホを手に取り急いで扉も開けたまま店の外に駆け出す。
1人取り残された彼女は優雅にワインの香りを楽しんでいると、すっと受付の男性が現れる。
「じゃあ後は予定どうりに宜しく頼むわ」
「かしこまりました」
サングラスを掛けたた男性は深々と頭を下げ、扉を締めて立ち去った。
夜の街で潰れてたら幼馴染とホテルに行った話 @Contract
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