最終話「おじさん」

そして次の日・・・


私と父と母の前に水道局の男性職員が正座をしていました。


父と母に何度も頭を下げ謝罪をしています。


職員が紙袋からブリキの戦車を取り出し私の前に置きました。



謝罪にもブリキの戦車にも興味を失っていた私は、何も言わず立ち上がり隣の部屋に行きました。



生まれたばかりの弟に、小学生からもらったプロ野球カードを見せ選手の名前を教えていると、父の声が襖越しに聞こえてきました。


「なぜ、マンホールの蓋が開いていたのか!?」


「なぜ、水があふれていたのか!?」


「なぜ、誰も入れないように柵を設けなかったのか!?」



私はそんなことより、「マンホールの中で私の両足を強く握ったおじさんが一体誰なのか?」を知りたかった。




あれから何十年も経ちましたが、今も私の足首におじさんの手の感覚が残っていま

す。




私の身体を水面まで押し上げてくれた手の感覚を・・・




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ぞっとする昭和実話怪談『マンホールの住人』 redrock @redrock5555

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