最終話


「おはよー」

「よ、コウジ! 今日も寝坊か?」

「寝坊してないよ」

「えぇ? 寝癖ついてるけど?」

「マジ? ちょっと、タイチ、どうにかしてよ」

「いや、ムリ。ほら、行くぞ! 早くしないと遅刻だ」

「え、待って、待ってよー!」

 ぼくらは、なんてことない日常を生きている。

 少し前、ぼくは頭が痛くなって学校を休んだらしいんだけど、その時、他にも何人か、頭が痛くて休んだ人がいたんだって。

 でもね、ぼくがなぜだか、女の子と一緒にロボットの腕を下ろした後から、みんなの頭痛は飛んでったんだ!

 きっと、あのロボットは、頭痛を治してくれるすごい機械だったんだと思う。

 そんな、すごい機械と共に暮らしている女の子は、相沢レイっていう。

 ぼくは、どういうきっかけで彼女と出会ったのか覚えていないけれど、今でも彼女と仲良くしてる。

 最近は、お菓子を持ってお家にお邪魔して、一緒に家を片付けたりしてるんだ。

 でも、もうすぐ引っ越しちゃうんだって。

 誰も気づいていなかったみたいなんだけど、お父さんもお母さんもいなくなっちゃって、ひとりで暮らしていたみたい。

 同い年だっていうのに、すごいよね。

 だけど、家から出るのが怖かったみたいで、ご飯は缶詰とか。

 その缶詰も、もうすぐ無くなりそうだったみたい。

「おかげさまで、叔母の家で生きられることになりました」

 レイちゃんは、そう言って笑った。

「元気でね」

「コウジくんも。あの、もし嫌でなければ、お手紙を送らせていただきたいのですが……。よろしいですか?」

「うん。もちろん! 返事、絶対書くからね」

「ありがとうございます」

「ありがとう、だけでいいんだよ?」

「あ、あぁ……ありがとう」


 今日、ぼくの元へ待っていた封筒が届いた。

 レイちゃんからの手紙だ。

 レイちゃんはいつも、不思議なものを入れてくれる。

 だから、開けるのがとっても楽しみ!

「今日は、何かなぁ……って、ええ? 透明な板?」

 工作しようとして、する前に入れちゃったとか?

 そんなミス、レイちゃんがするとは思えないけど。

「なんだ、なんだぁ?」

 その板を窓の近くでヒラヒラさせながら見つめた。

 そうしたら――

「うわぁ!」

『どうしたの? 何かあった?』

 変な声を出したから、お母さんに心配されちゃった。

 ぼくはこのことをナイショにしたくて、嘘を叫んだ。

「なんでもない。でっかい虫がいただけ!」

『やだ! 退治しておいて!』

「オッケー」

 また嘘をつきながら、板に浮かんだ文字を見る。

 ニヤけずにはいられない。

 ぼくのこの、はじめての恋のことは、もうしばらくお母さんにナイショにしておくつもりだ。






 ―了―




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大人にナイショ! 湖ノ上茶屋(コノウエサヤ) @konoue_saya

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