第39話 上目遣い耐性

 藤音に「みゅーじっくあそーと!」の事をを話し、許しを得るために時間がかかったのはここだけの話。

 なにか事象を話せば、それがなんで起こったのか。

 藤棚に集まったことを話せば、何を話したか細かく訊かれる。

 凄く興味を持っていた。

 嬉しいこと……なのかな?

 何よりも、本当に(物理的に)放してくれないもんだから、恥ずかしいったらありゃしない。

 なんていうかその……藤音も女子なのだ。

 そりゃ気になっちゃうだろ!

 距離感バグってる。幼馴染ってどこもこんな感じなのだろうか。


 ◇


「ただいま〜」

「おっかっえり〜っお兄ちゃんっ!」


 玄関を開けると、すぐに兎々虹が迎えてくれた。


「母さんは?」

「いる……けど、どうかしたの?」

「ちょっと相談があって」


 すると、兎々虹は珍しいものを見るような目をした。


「お兄ちゃんが相談なんて珍しい! 恋の病か!?」

「ちゃうわい。兎々虹には関係ないから」


 僕は靴を揃えると、母さんが居ると思われるリビングへ向かった。

 すると母さんはやっぱりリビングでテレビを見ていた。


「ちょっと相談があるんだけどいい?」

「なに急に! なんか変な物でも食べた!?」

「なんでそうなるんだよ」


 兎々虹と反応ほぼ一緒じゃないか。

 普通そんなに驚くか?


「いや、玲桜って相談とかしないタイプだから……」


 そんなことも無いと思うけど……。


「それはそうと、どうかしたの?」

「なんというか……東京に行きたい」

「高校?」

「じゃなくてじゃなくて! 東京で音楽関係のイベントがあって。それに参加したいっていう話」

「あぁなるほどね」


 僕が音楽を好きなことについて母さんはよく知ってることだろう。


「友達といっしょに行きたくて。許可を得ようと思って」

「泊まりなの?」

「多分」

「じゃぁあたしが付いて行かないとねぇ」


 確かに。親無しで遠出するのは危ないだろう。

 そんなこと思いつつ、昔、椿に付き合わされて遠くまで親無しで行ったことを思い出す。

 今考えるとあれ、ヤバかったな。

 それに気づける僕は大人だ。うんうん。


「あたし付きって条件で、いいわよ」

「え、ありがとう」

「玲桜は昔から音楽が好きだったからね」


 あとでグループチャットで伝えておこう。

 うちは許可が出た、と。

 これで一件落着だと良かったのだが……。


「兎々虹も行きたい!」

「はぁ!?」


 まさかの兎々虹が乱入。


「行く行く行く行く!」

「駄々こねんなって」


 いったい何歳だよ。

 幼稚園児じゃないんだから……。


「ねぇ良いでしょ?……お兄ちゃん♡」


 上目遣いで見てくる兎々虹。

 さんざん見慣れた妹の上目遣いなんぞなんてこと無いぞ。


「そうね! 兎々虹も居ると盛り上がるわねっ」

「なんでそうなる!?」

「ヤッター!」


 だからなんでそうなるのってば!

 上目遣い耐性で調子に乗るんじゃなかった……。

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みゅーじっくあそーと! 音心みら👒 @negokoromira

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