祠ぶっ壊したら「君、助からないよ」と言う人が１０人現れたんですけど

資料５ 通信記録

　　　　　……………

　資料：魔術団体『隠者の薔薇』日本支部諜報部通信記録　２０２２年１１月８日１５時４０分～１６時８分

２０２２／１１／０８／１５／４０／０３／：ＨＱからＲＬへ、近隣地点での急激な魔力量的変化を観測。波形から１メガトンから３メガトンの強度を持つ神霊の可能性。また、魔界府秘匿課派遣員、その他団体の急激な活動の活発化が予想される。現場の状況を報告せよ。

２０２２／１１／０８／１５／４３／４３：ＲＬからＨＱへ、急激な魔力的変化の原因は任務１の目標物の物的損壊に伴う封印の解除と推定される。人為的な破壊が為された跡があり他団体の工作の可能性も存在する。現場画像を送信する。また、直接の魔力量計測において１ギガトンの強度を観測。詳細な計測データを送付するためＨＱでの精密な分析とそれを基にした任務遂行における判断を仰ぎたい。

　現場周辺には現在５名の『違法魔術師』が観測され、内三名は『古僧會』所属と考えられる。また、第一級相当指名手配『天出仁』と目される術師が確認されている。しかし一名、『天出仁』と目される人物と接触し『呪物』を贈与されながら魔力量反応が乏しい人物が存在し、違法魔術師かの判定が難しい。各人の画像を送付し、ＨＱでの画像解析による詳細分析を希望する。

　引き続き術師に対する捜査は続行する。

２０２２／１１／０８／１５／４７／２１：ＨＱからＲＬへ、任務目標１番の調査に関して危険と判断し任務１と任務２の中断を指令する。

　近隣に現れた違法魔術師について送信データ解析から、『古僧會』所属『忍如』『心念』、独立違法魔術師『香室雅』、独立違法魔術師『天出仁』とそれぞれを断定したことを報告する。

しかし『天出仁』と接触したとされる一名に関しては類似した画像などはなく、魔力量から推定しても世俗人である可能性が高い。不明な点が多いため追加任務３として対象の直接の尋問を指令する。達成目標としては１．対象の所属、魔術師か否かの情報。２．対象の『天出仁』との関係性。１．の達成が困難と判断された場合は例によって２．の達成を以て任務達とし次に指令する任務に蒼穹に移行せよ。

　追加任務４を通達する。現在近辺に魔界府秘匿二課課員三名が移動中。ＲＬは直ちにこの三名の移動の目標を調査、任務目標１番に関連した目的であった場合移動を妨害せよ。

　達成目標としては１．秘匿課員全員の任務続行不能。２．秘匿課員全員の負傷。１．の達成が困難と判断された場合は例によって２．の達成を持って任務を離脱せよ。

　任務４付随情報として秘匿課員の用車のナンバー『北海道１Ｘ―ＸＸお』。秘匿課員の推定魔術師免許等級は２級である事を加えて通達する。

　２０２２／１１／０８／１５／４９／２２：ＲＬよりＨＱへ、任務目標の変更を確認。これより任務３目標人物の尋問を開始する。魔術的異変、新たな違法術師の発見などは逐次報告する。

　２０２２／１１／０８／１５／５５／３１：ＲＬよりＨＱへ、任務３の遂行を報告。目標人物は任務１目標物の損壊に関わる人物であること、完全な世俗人である事、『天出仁』とは初対面である事が判明。目標人物の呪物や接触による精神操作術なども確認されていない。また、『天出仁』から贈与された呪物は護符であることも判明。精神操作術などの行使によらないが状況証拠から妥当な論理として当人の返答をそのまま事実として報告する。音声データを送付する。

　このまま任務４への移行を要請する。

　２０２２／１１／０８／１５／５６／５１：ＨＱからＲＬへ、任務３目標遂行を受理、任務４への移行を指令する。

　２０２２／１１／０８／１５／５７／０４：ＲＬからＨＱへ、了解。これより任務４を開始する。

　２０２２／１１／０８／１６／０３／２１：ＲＬからＨＱへ、追加の違法魔術師発見報告。赤い服をまとった１６名の集団のうち１名に二級魔術師相当の魔力量反応を確認。写真データを送付するため、ＨＱでの確認を要請する。

　２０２２／１１／０８／１６／０８／０５：ＨＱからＲＬへ、画像解析の結果と周辺魔力量変化観測についての報告。

　送られた赤い服を着た男性の画像はハイチを拠点とする違法魔術団体『不知火の園』の構成員『溝呂木タクヤ』であることが確認された。同人物についての情報は現在捜査中であり、判明した情報は追って報告する。

　加えて、時刻１６時５分ごろに周辺での魔力量変化が観測され、波長から半径２キロメートルに及ぶ封印術の発生した可能性が高い。場合によっては通信が困難になるため、圏内からの早急な離脱を任務に優先して進める事を指令する。

　補記：２０２２／１１／０８／１６／１０／４４：ＲＬとの通信が完全に遮断されたことを確認。同時刻、周辺の魔力量変化から１６時５分に発生した結界術が変質したことが原因と考えられる。本部はこれを受け、北海道方面で活動中の諜報員３名からなる救援部隊を組織し出動した。

報告者：隠者の薔薇日本支部諜報部部長・佐藤汐音