第22話 ファミレス



「アリカさん、お疲れ様です!」

「ありがとう」

「もっと飲んでください! 後食べてください!」

「ありがとう………」


 火崎ハヤトを下したその後、祝勝会という事で私と【アストリス】のメンバーはファミレスに来ていた。


 本当はさっさと家でごろ寝でもしたい気分だったのだが、年下の後輩に上目づかいで頼み込まれてしまっては、流石の私も断り切れなかった。

 本当はもっと高級な料理店の予定だったらしいのだが、流石に場違いになるので勘弁してほしいと頼んで今に至る。


 まあ基本的になし崩しである。


 クソっ、なんなんだこの銀髪巨乳後輩は………?


 見た目が良くてコミュ力が高くて、そのうえ押しまで強いとかもう無敵だろう。


「どうかしましたか………?」

「なんでもないよ」


 向かいの席で上機嫌にジュースを飲む少女をから、目を逸らす。


 まあいいや。


 とりあえずお腹もすいたしご飯を食べよう。タブレットを操作して、片っ端からメニューを頼んでいく。


 肉、肉、肉、後はイモ、そして肉だ。


「す、すごくいっぱい食べられるんですね?」

「身体動かした後はすごくお腹が減るんだよね………。大丈夫、お残しはしないから」


 身体が資本なので妥協はしない。


 食った分は必ず動くので太ることはない。なのでハンバーグやら唐揚げ、プラドポテトやらなんやらを遠慮なくかき込む。


「これが、アリカさんの強さの秘訣なんですね!」

「んぐ、いやどうだろう」 

「私も負けてられませんね! むぐぐ………」

「落ち着いて食べなよ」


 かわいいかよ。


 ハムスターみたいに頬張るな。


 小さい口を頑張って動かす彼女を見ながら、ひとしきり料理を食べきって人心地ついていると、自分のランチセットを食べきったハルカがこちらに向き直る。


「まずは謝罪を、この度は大変なご迷惑をおかけしました」

「火崎のこと?」

「SランクがFランクに決闘を仕掛けるなんて、本来はありえないことですから。成り行きで成立したとはいえ、同ランクの探索者として、無理矢理にでも止めるべきでした」

「気にしてないよ。疑われるような身分だったし」


 下層に出没するFランクヒーラーなんて怪しいが過ぎる。火崎のやり方に問題があったとはいえ、疑われるのはやむ無しではあっただろう。


 とはいえ今回の件で、ある程度の実力も証明できたのだ。私としてもそこまで気にはしていないのが実情だ。


「だから日乃宮が謝る必要はないよ。別に私のそろ探索には支障はないだろうしね」

「そこなんですが………」

「ん?」


 ハルカが躊躇うような素振りを見せる。


 何かを言おうとしては、目を伏せて口をつぐむを繰りかえす彼女を見て、どこか様子がおかしいことを感じ取る。


 何だろう。


 実は私の知らないところで、問題でもあったのだろうか。どきどきしながら、彼女の言葉を待っていると、隣に座る弓月カザネがあっさりと話し出した。


「アンタを【アストリス】にスカウトしたいのよ、うちのリーダーは首ったけだからねー」

「か、カザネさん!?」

「迷宮下層に単独で潜れる実力に、高い回復技術、しかもSランクの剣士を倒してる。能力的にも、世間的にもSランクパーティに入る資格は十分でしょ」


 日乃宮ハルカを助けたっていう実績も込みでね、とカザネが話す。


「実際、ハルカがここまで入れ込むのは珍しい。いつ声を掛けるかずっと見計らっていたからな」

「クロガネさんまで!? 勝手に言いたい放題言わないでください!」

「違うのか?」

「そ、それはっ! 違いませんけど………」


 顔を赤くしたり、あわあわと慌てふためいたりしながら、日乃宮がこちらを見る。


 そこまでになってようやく気付く。




 もしかして、ついにぼっち卒業のチャンスが来たのでは?





―――



明けましておめでとうございます。

そして今年もよろしくお願いします。


モチベありきの投稿になりますが、この小説が誰かの楽しみになれば幸いです。





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