第21話 終戦


「終わったみたいだね」

「そのようだな」


 Bランク探索者の弓月カザネが呟き、Aランク探索者の土御門が答える。


 観客席からは、つんざくような悲鳴が響き渡る。

 

 当然だ。


 この場の決闘は火崎ハヤトの勝利を見に来たファンが大半。勝ちの決まった勝負を見に来た者たちで溢れかえっているのだ。


 結果は惨敗。


 爆心地の中心で、逆さまに地面に突き刺さる彼を見たファンからすれば、天地がひっくり返るような出来事だろう。


「接近戦ができるヒーラーか………、やっぱり探索者の常識が変わるね」

「誰でも真似できるスタイルではないだろうがな。少なくとも、これからの彼女の存在は時代を変えるだろう」


 Sランクという、この国の最高の探索者の一角を落としたのだ。良くも悪くも、あらゆる勢力が彼女に干渉しようとするだろう。


 強力な探索者というのは、それだけで脅威であり、宝物であり、特権なのだ。


「悪い事したかな、積極的に名を挙げるってタイプではないだろうし」

「なるべく守れるように、私の実家には話を通しておこう」

「流石は五大名家の土御門。頼もしいね」

「だが、他の家がどう動くかは読めないな。仮想結界内とはいえ、火崎の面子を潰していると言えなくもないからな」


 極東において、迷宮が生まれたその日から現代にいたるまで、ダンジョンからの脅威から国家を守護してきたとされる名家。


 火崎、水篠、雲凪、土御門、立花の五つの家をもって、五大名家と呼ばれている。


 迷宮全盛の時代は過ぎているが、探索者を未だ必要とする現代においても、5大名家の影響力は健在だ。


「どちらにせよ、慌ただしくなりそうだ」

「ま、リーダーもいるし。そこら辺はなんとかなるでしょ」

「ところで、そのリーダーは何処へ?」

「ハルカなら終わった瞬間に、控室へ走って行ったよ。なんだかんだ言って心配で仕方なかったみたいだからね」


 伏見アリカが戦っている途中、ハラハラとした表情で見つめるハルカの表情を思い出して、弓兵と黒騎士は苦笑した。




―――



年末なので、今回は特に軽めです。

話の構想自体はあるので、モチベーションアップに評価とかいただけると幸いです。


調子出れば年明けにも次話出るかもしれないです、たぶん。



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