第19話 ぼっちVS炎の貴公子④
【属性術式】
というものがある。
迷宮という危険地帯に潜る探索者が使用する戦闘技能。言ってしまえば、私が使用する身体強化と同じ魔力を用いた攻撃方法だ。
人の魔力には、火や水といった属性が存在し、その魔力の属性を攻撃に利用する。
簡単に言ってしまえばそれだけのもの。だが、その効果の応用力は単なる身体強化を遥かに超える。
単純な遠距離攻撃、
共通するのは、使い方次第で戦況を一変させることが可能であること。
故に探索者のもつ切り札。
逆境を覆す最強の一手。
それが、Sランク探索者の術式であればなおさらに。
「術式発動――――――
火崎の埋まっていた、瓦礫が消し飛ぶ。
炎が逆巻くように溢れ出し、立ち上がった火崎の剣に集束していく。
炎の剣として収束していく。
「
広大な試合場の端から、私の立つ中心に届くほどの熱量を放つ炎剣。
あんなもので斬られれば一撃で行動不能だ。
階層主クラスのボスモンスターも一撃だろう。
「それがあなたの術式なんだね」
「……………正直、この術式を使うとは思ってもいなかった」
ボロボロの姿で火崎が話す。
もはや、最初の頃の馬鹿にした表情はない。
真剣な瞳で私を見据えていた。
「伏見アリカ、キミは強い。だから僕も全力でキミを倒そう」
「へえ、手加減してくれないんだ」
「人は、ゴリラに真っ向勝負できるほど強くないんだ。手段は選べない」
言うじゃねぇか。
冗談かと思ったが、目に必死さがにじみ出ている。
つまり、Sランクが本気で倒しに来るという事だ。経験も魔力の技術も使って本気で殺しに来るという事だ。
それでいい。私は強い奴と戦いたい。強い奴と戦って、私はもっと強くなりたい。
「いいね、来なよ【炎の貴公子】。今この瞬間から私たちは対等だ。第一印象が最悪だったから念入りに潰してやる」
「………手加減とかしてもらえないかな?」
「いいから来いよぶちのめしてやる」
やや引き攣ったように火崎が微笑み、私は無表情で切り捨てる。
加減なんてできない。
相手は極東最強クラス。
油断すれば文字通り一撃で落とされる強敵だ。
「――――――ならば、斬る!!」
火崎が剣を構え突っ込んでくる。
この試合が始まった中で最も速い動き、この勝負を幕引くための最後の突進。
試合場が湧きたつ。
私は火崎の突進に対して――――――腰を低くして手を広げて構える。
「まてまてまてまてまて」
「受けの構え!?」
「避けないのか!?」
【
どんなモンスターでも「当たれば一撃」が謳い文句の必殺技。
私の
「だけど逃げるのはなんか違うよなぁ?」
避ければ勝てる。
横にずれてスカした顔に拳を撃ち込む。あるいはひたすら逃げ回って消耗したところを潰せば勝てるだろう。
だが今回は圧勝するのだ。
なら、そんな勝ち方はナンセンスだ。
魔力を全身に巡らせる。
到達した、火崎が剣を振り下ろす。
集中しろ。
「ハァァアアアアアアアアア!!」
「――――――勝負」
迫る紅蓮の炎剣に、音もなく私は動いた。
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