第9話 ぼっち×SランクPT


 日乃宮ハルカの所属する【アストリス】は有名だ。


 光属性の聖剣遣い日乃宮ハルカ、それ匹敵する実力を持つと言われている探索者2名で構成されているパーティだ。

 まだ学生でありながら、国内のベテラン探索者達にも引けを取らない実力を持っている。


 結成当時にSランク魔獣であるヒュドラを討伐したのは今でも語り継がれる伝説だ。


 相手は、無尽蔵に再生し増殖すると言われた多頭の蛇。


 Aランクパーティでもお手上げと言われた怪物を、誰一人欠けることなく討伐したのは驚異という他ない。


 いま日本において、ダンジョン攻略でも配信でも最も熱い、新進気鋭のパーティ。

 

 それがアストリスなのだ。


 そして、そんな超有名パーティとコラボする探索者がいるらしい。


 

 私だ。



「いや、大丈夫かこれ?」


 切腹自己紹介に次ぐ放送事故だろ、これ。

 もうね、人選からしてダメ。やっぱ根暗ぼっちの野良ヒーラーが出ても良い事無いって。


 そんな旨をハルカには伝えたのだが、「大丈夫!」の一点張りで押し切られてしまった。


 だから大丈夫じゃないって。


「アリカさんも有名になったじゃないですか? 変に噂が独り歩きするよりも、ある程度情報を出しておいた方が、拗れないと思うんです」

「ああ、そういうことか」


 確かに、コアな日乃宮ファンから、変に情報を探られたりするよりも、オープンな状態で情報を流す方が面倒が起こらないだろう。


 流石は配信者。


 情報を扱うノウハウは心得ているんだな。


「あとは私が、自分のパーティに紹介したいっていうのもあったり」

「紹介ね。いじめられないと良いけど」

「ええ!? そんなことしませんよ!?」

「冗談だよ」

 

 でも日乃宮ハルカは知ってるけど、アストリスの他のメンバーはよく知らないんだよね。


 基本的にダンジョンに潜りっぱなしで、誰かの配信もあんまり見ないし。


 やば、ちょっと緊張してきた。


 そんなことを考えながら、迷宮の入り口に到着する。


 迷宮高専の中心に存在する、超大型ダンジョン【墓標迷宮】だ。

 迷宮は扱いが様々で、古代遺跡から魔物の巣まで様々なものをダンジョンと呼ぶのだが、この迷宮がいつから存在するのか、誰も知らない謎の多い場所だ。


 ただ採取できる資源が豊富であり、全国から探索者の集まる人気ダンジョンだ。


 地上では売店やらもあるし、軒並み装備は整えられるので利便性も悪くない。


 なので大抵の探索者はここで待ち合わせをするのだが、アストリスも同じ集まり方をしているようだ。


 ハルカが辺りを見渡して、誰かに手を振り始める。

 

「あっ、いました。お待たせしました!」

「遅い。5分遅刻だよ」

「……………ん」

 

 なんか、めちゃくちゃ美人な弓使いの女生徒と滅茶苦茶厳つい黒鎧の騎士がいた。


 一人は、後ろに髪を纏め上げたスッと鼻の通った美人といった印象の弓使い少女。なんというか、張りつめた印象というか、几帳面なかんじの少し苦手なタイプだ。


 もう一人はひたすらに大柄な黒騎士。

 巨大な大槌と大きな盾を背負った、明らかにタンク職といった風体の存在だ。当たり前だが、性別は全く分からない。

 しゅこーしゅこーと、呼吸音だけが静かに響いている。


 私が一人なら絶対に近づかないだろう二人組に、ハルカが嬉しそうに駆け寄っていく。



 嘘だろ………。



 あれが【アストリス】のメンバーなのか!?



 


  


 


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