第2話 鳥肌

15時58分待ち合わせの天神大画面前。

珍しい、吉田がいる。

あいつは基本的に10分は遅刻する。


俺「お前の方が早いなんて、珍しいな。」


吉田「お前の前に別のヲタクと予定があったんだよ。」


俺「へぇ。今日何すればいいの俺。」


吉田「まぁ、コールとかは分かんねぇだろうから、後でタイプの子でも探してろ。」


俺「クラブかよ笑お前どうすんの?」


吉田「俺は、前方のチケットだから、前で楽しむよ。お前は、後方だから、今日のライブ無料で見れるぜ!あ、ドリンク代!600円、いや、俺が出す。」

600円を渡してきたので、とりあえず受け取った。


俺「なんだそれ。ますますどうすればいいかわかんねぇよ。かわいい子いなかったら帰りの電車代も出せよ。てか、ドリンク代600円もすんのかよ。たけぇ笑」


話している間にライブ会場とやらについた。ヲタク用語では現場と言うらしい。


「前方チケットの方から受付開始します!」


会場スタッフの声が響いた。

ゾロゾロと人が並び始めて、吉田は先に会場に入った。


スタッフ「後方、当日の方!」


人の列について行くと。どうやら前で、受付を行っていた。

俺の番

スタッフ「ありがとうございます。ドリンク代600円です。」


吉田から受けとった600円をポケットから取りだし、スタッフに渡した。


スタッフ「ドリンクチケットと、本日の特典です。ドリンクチケットはライブ開始前と終了後15分しか交換しておりません。ライブ中は交換出来ませんので、ご注意ください。」


俺「はい。」


割と狭い会場で、人の間をすり抜けながら会場(フロア)の、一番後ろでぼーっと立ち尽くした。会場で流れるアイドル曲に耳を傾け、今日見るアイドルのSNSを見ていた。公式のフォロワーは150人程度、各メンバーは200人いるか、いないかくらいだ。


急に曲のボリュームが上がり、会場が暗転した。

会場の騒がしさがました。いよいよライブが始まるようだ。


音楽が変わり、アイドルが登場した。登場曲?これをSEと言うらしい。現場やら、SEやら、フロアやら、来る電車の中で調べた俺自身が健気すぎて、少し笑いながらステージを見た。


1曲目「スタンバイミー」

割とPOPで、ヲタク達のコールについてはいけないものの、体を揺らせるくらいには、楽しめた。

2曲目「ヘ〇ーローテー〇ョン」

カバー曲もするのか、それにしても懐かしい。この曲は俺が中学の時、大バズり曲だ。懐かしい。知らない人は少ないからか、フロアは、1曲目より熱量を増して、盛り上がった。

2曲目が終わり、自己紹介という名の、MCが始まった。

「皆さんこんにちは!私たちフランパーです!よろしくお願いします!」

メンバーがお辞儀した瞬間、フロア中が拍手をした。俺も周りに合わせて拍手した。


メンバーが頭を上げた時、1番右の1人のメンバーと目が合った。


バチッ


人が多く、曲中は、MCと違いフロアが暗く、ステージから、フロアの後ろの方は見えないせいか、全く目が合わなかったので、ここで目が合った時。少し痺れる感覚があった。そう感じている間に左から順に自己紹介が始まった。1番右の彼女はどんな子なんだろう。衣装の色が同じ色でメンバーカラーも気になった。


『赤色担当 リーダー 柊(ひいらぎ)かのんです!かのんって呼んでね!よろしくお願いします!』

フロア「かのんー!」

吉田「世界一可愛いよー!!」

ちなみに吉田はかのんちゃん推しだ。

グループの1番人気メンバー。


『青色担当 あなたとわたしをつむぎます!紡(つむぎ)ゆのです!つむぎんって呼んでください!よろしくお願いします!』


フロア「つむぎーん!」

声がとても特徴的なアニメ声で、ファンの年齢層は高め。声優志望のメンバー。


『紫色担当 ひびきの声あなたにひびけ!ひびきこと塙(はなわ)ひびきです!よろしくお願いします!』


フロア「ひびきー!!」

SNSのフォロワーがいちばん多い。女性ファンが多いメンバー。


『こんにちは!桃色担当 華(はな)さくらでーす!さくらの煽りで会場にはなさかせます!今日も楽しもうね♡よろしくお願いします!!』


フロア「さくちー!!!」

コール煽り担当で、フロアを1番湧かせる。ピンチケ(若く騒がしいヲタク)が多い。


『はい!緑色担当 和(のどか)エミリーです!おじいちゃんがフランス人のクウォーターです!でもみんなからの愛は4分の1じゃ物足りないから4分の4いっぱいに愛してね!よろしくお願いします!』


フロア「エミリー!!!絶対結婚しよーなー!」クウォーターなので顔面はピカイチで美人。自己紹介はかわいいが意外と毒舌キャラなメンバー。



いよいよだ。あの子。


『黄色担当最年少高校3年生17歳。まだまだ成長中だもん。』

まただ、目が合った。しかも指さしのファンサもくれた。


『城(きずき)ひまわりです。ひまってよんでください。よろしくお願いします。』


フロア「ひまー!」


あれ、ほかのメンバーに比べてフロアの声が小さい。それにペンライトもほかのメンバーが10本くらい振られてるのに対して、2本日くらいしかない。もしかしてだけど、あんまり人気ないのか?


気になった。ライブ中ずっと彼女を目で追っていた。後ろなので目が合わないことににもどかしさを感じながら、ライブが終わった。



正直彼女の、パフォーマンスには鳥肌が立った。一つ一つの動作が綺麗で、メンバーで1番身長が小さいのに、メンバーに埋もれるどころか、1番目だって見えた。高校生とは思えないつやのある声に少し心を引かれた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

世界が変わる時、君が消える。 来来来 @only_transparent

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る