言葉にしきれない感情が揺れる物語。美鶴と薫の関係は、互いを試しながらも求め合うような絶妙な距離感があります。
花魁の所作を思わせる美鶴の仕草には戯れと挑発が入り混じり、薫はそれに振り回されながらも、どこか楽しんでいるように見えます。二人のやりとりには甘い誘惑が漂いながらも、ふとした瞬間に生々しい孤独や切なさが顔を覗かせます。
暖炉の炎、グラスの響き、煙草の煙――物語の舞台となる静かな空間が、二人の距離を際立たせています。主導権を握っているのはどちらなのか。まるで綱引きのようなやりとりが、危うさと心地よさを同時に生み出しています。
甘美な誘惑と冷たい現実の狭間で揺れる二人。その関係は、ティラミスのように甘く酔わせながらも、ほろ苦さを残していきます。