第11話 転生陰陽師は魔術を破る
※本日二話更新しておりますご注意下さい。
土日は二話更新で行くつもりです(PVの推移次第でやめるかも)。
「到着いたしました」
「……結構かかるわね」
「関東県の方の多くはお車で来られますので、そのせいかと……」
「あらそうなの? 次に来るときはモノレールにしましょうよ」
「りんかい線の駅が徒歩五分圏内にございますので、それが宜しいかと……」
車を止めドアを開けた運転手は、母の雑談に付き合う。
眼前には立派なホテルがあった。
「おっきい~」
「地上16階もあるホテルですから大きいですよ? 都心まで約20分と観光地へのアクセスも良く、東京湾を一望できる景色をお楽しみいただけるかと……」
運転手さんは俺のような子供にも丁寧な言葉遣いで説明してくれる。
優しい。
しかし、まあ、一体幾ら掛かっているイベントなのだろう?
「アレ! アレみたい!!」
「あれ?」
父は呆けたような声を上げる。
「多分ロボットの巨大立像のことよ」
「……よし、じゃあ明日にでも行くか」
「うん!」
「外に出るためには精気をコントロールできるようにならないと妖魔に襲われて危ないから、勉強しような」
「では私は車を置いて参ります」
「任せる」
ロータリーに停まったままの車にサッと乗り込むと、遅滞なく離れていった。さすが国産のハイブリッド車、エンジン音が小さい。
お手伝いがドアを開けロビーに入る。
床にはフカフカの敷物が敷き詰められ、慣れないと足が疲れそうだ。
「直毘人気分は悪くない?」
「うん、大丈夫!」
「車の中で修行を始めるものだから不安だったけど……気分が悪くなったらすぐに言うのよ?」
「はーい」
ロビーには達筆な筆文字で「適合魔術師子弟懇親会」と書かれた紙が飾られている。
「
「くらはし?」
「
今日一日の父母の話を整理すると、今回の『懇親会』を主宰する
つまり俺にとっては前世の兄弟の末裔にあたる。
同業他社で作られた組合のお偉方が開く懇親会ということだ。
そして面倒なことに二大宗家の子弟は同年代らしく、傘下の適合者がピリピリしていることは想像に難しくない。
今日は久々の娑婆に出てはしゃぐつもりだったが、予定変更だ。
恐らく懇親会の主役でもある彼ら彼女らは、重要人物にどうにかしてお近づきになりたいところだ。
生きていく上でコネは、あって損することはない。
コネがあれば金も、より良い人脈も得やすくなる。
これは俺の人生哲学だ。
「……つまりすごい、いえって……ってコト!?」
「……まあ、そういうことだ。術の系統が違えど名家同士だ。無礼なまねはするなよ?」
「もちろん」
両親は安心したような表情を浮かべた。
「ならば安心だな」
父はグシャグシャと乱暴に頭を撫でる。
「髪が崩れちゃう!」と悲鳴のような声を上げ、母は髪を整えた。
父はバツが悪そうな表情を浮かべた。
エレベーターに乗って会場のあるフロアまで昇る。
映画なんかと違ってパーティーなどの主要ホールは、五階までにそろっているらしく、犯罪集団のせいで高層階で取り残されると言った様式美は難しそうだ。
そんなことを考えていると、チンと音がなりドアが開いた。
その瞬間、周囲の視線が注がれているのが分かる。
ホールのドア付近に立った。警護と思われる複数人の男女が視線を向けているこの異質さに薄気味悪さを覚える。
魔力や霊力を目に集中させて、俺の霊力を暴こうとしてくるのだ。
エレベーターホールから数メートルのところでパーティーの受付に辿り着くのに、術者たちの威圧感は凄まじい。
父もそれに気が付いているのか「何でもない」と言った態度を崩すことはない。
俺も普段通りに振る舞うことにする。
……が、不躾な視線を向けられるのは不快感が強い。
魔力を眼球に集める。
父さんに比べると全員低いな……まあそれは当然か……
良家の警護の術者としてはどうなんだ? 魔力はそこまで大きくないように感じる。
良家の警護の術者としてはどうなんだ? 魔力はそこまで大きくないように感じる。
魔力低っくッ! たったの5か……ゴミめ、いや本当に5か分らんけど……
アニメで見たごっこ遊びをしていると、魔力を感知できているのに……どこか違和感を感じる。
何かある場所が空白になっているような……そんな感じだ。
確かめてみよう……
「父さん、あそこおかしいよ?」
そう言って指を指した。
「どこだ?」
そう言って父は瞳に魔力を込める。
「何にもいないぞ?」
「そう? じゃあ試してみる」
魔力を込め
「
刹那。
長方形のただの紙切れは鳥の姿をとって目標に向け飛行する。
三歳児とは思えない一連の動作を見て、周囲の大人の視線が集まる。
「ハッ!」
魔力の篭った右の人差指と中指だけをピンと立て、まるで剣でも振り下ろすかのような所作によって式神は破壊さる。
魔力の光が周囲に舞う。
それはライトアップされた夜空に舞う粉雪、あるいは月明かりに照らされた桜吹雪のような美しい情景だった。
さきほどの手は刀印だ。右手で行うということは女性か……
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