椹野道流のすゝめ

藤木美佐衛

BLに関する私見とオススメ本

 私がBLに初めて出会ったのはおよそ二年前。椹野ふしの道流みちるという作家の作品がきっかけだ。


 この作家が保護猫を数匹、家猫として飼い、その後新たに拾った子猫の成長記録をX(旧Twitter)に載せ始めた。


 猫好きの私が、そのポスト(ツイート)をフォローし、毎日成長記録を読んでいる時に、この人が小説家だという事を初めて知った。


 さらにそのポストの猫の写真の背景に映り込んでいた本棚に並んでいる書籍に関心を持った。


 その書籍のタイトルは思い出さないが、悪魔とか呪いとか多分そんな言葉がついた書籍がずらりと並んでいたと思う。それは自作を書く際の参考文献らしかった。


 ミステリーとホラーが大好物だった私は、この人の小説を読んでみたいと思った。


 最初に読んだのは、『妖魔と下僕の契約条件』という小説だった。妖魔という言葉に惹かれた。


 読んだら、それが何とBLだった。


 人生初のBL。これが、ものすごく感動ものだった。妖魔と人間という異種間の恋愛なのだが、平安時代から千年以上生きている妖魔の考え方が、台詞を通してなんか胸に突き刺さった。


 それまで私が読んできたのは、ミステリーとホラー一辺倒。それ以外は受け付けないとばかり没頭していた。恋愛小説は、中学で卒業していた。


 私はこれを境にこの作家の他の小説を読んでみたいと思い、ブック◯フオンラインで次々に取り寄せ、一年間で170冊近く読んだ。椹野ふしの作品ほぼ全クリだ。中にはミステリーもあったが、半数以上がBL、またはそれもどきだった。


 かくして、ここに一人の高齢腐女子が誕生した。


 高齢腐女子はその後、小説に飽き足らず漫画アプリに手を染めた。BLばかりを読みまくり、動画を見てはガチャを回し、コインと時短アイテムをかき集めた。“待てば0円”区間が終わると、続きをブック◯フオンラインで1円でも安く手に入れてさらに読みあさるという、腐女子街道をまっしぐらに突き進んだ。



 ところで、椹野ふしの作品のBLは、物語として楽しめるものがほとんどだったが、一つ考えさせられた一冊がある。


 それは、『茨木さんと京橋くん』という本。


 主人公は、大学病院の耳鼻科の医師 (京橋くん:男性)と、薬品会社の研究員 茨木さん:男性)。二人が恋人関係。


 この椹野ふしの道流という作家は法医学の医者なので、大学病院が舞台の作品が多い。


 茨木いばらきは、ある時、トルコに出張するが、現地で起きたテロに巻き込まれる。京橋くんは恋人に連絡が取れなくなり心配で眠れない日々を過ごす。


 トルコ大使館とのやりとりは、仕事での渡航だったため、薬品会社の者が行い、京橋くんは家族でもない関係上、何もできない。


 小説では、無事に帰って来た恋人に空港で会えた京橋くんが号泣し(ここで私も泣いた)、その後二人は、本気で養子縁組を考えたって結末に至る。


 これは小説であって架空のお話だが、 きっとこんなことが、実際に男性同士、女性同士のカップルにも起きているのだろうなと、この小説を通して理解した。


 結局、どんなに愛し合っていても、今の日本の法律では、家族にはなれない。


 同性愛は、以前は他人事として関心なかったのだが、この本を通して、真剣に考えてみた事を覚えている。


 〜 〜 〜 〜 〜


 文中で紹介した『妖魔と下僕の契約条件』はKADOKAWAより文庫本で現在五巻まで発売されています。興味がある方は是非読んでみてください。絶対オススメです!


 二人は今のところまだプラトニックな関係なので、BLが苦手な方も読んで頂けると思います。幽霊退治とか、付喪神とか出て来るので、ホラー好きの方はより楽しめると思います。


 とにかく描写を通して語られる妖魔の司野しのが美しくて尊いのです。口は悪いのだけど。


 (この妖魔の美しさに惚れてしまった高齢腐女子は、ネットから司野しのの画像を手に入れ、アップルウォッチの文字盤をその画像にしてしまうという暴挙に出る。もはや、ウォッチの機能は台無しだが、元より全く使いこなせてない高齢腐女子はそんなことは気にしない)


 あと、『最後の晩ごはん』もオススメです。こちらもKADOKAWAさんから出ています。


 作中に出てくる料理のレシピが巻末にあって、お話も面白いです。付喪神も出て来ます。文庫本で20巻まで出ていて、BLではないです。


 そういえば、大好きなBL漫画の『純情ロマンチカ』もKADOKAWAですね! KADOKAWA、いい仕事してるね!(ここでKADOKAWAにゴマをすっておく)


 それから、このカクヨムにも『猫と私』という椹野先生のエッセイが載ってます。こちらは、そのうち書籍化されるようなので、タダで読めるのは今のうちだけかも。


 さらに言えば、NOTEにも『ちょいちょい書くかもしれない日記』というエッセイが載ってます。


 現在、椹野ふしの先生は二度目のコロナ感染の後遺症に苦しんでいます。加えて昨年コロナで亡くなったお父様(医師)関連のさまざまな後片付けと、認知症になったお母様のお世話と、最近一匹増えて六匹になった猫の世話もあってなかなか執筆できないという事情を、XとNOTEで報告されています。


 先生が早く回復なされて、たくさんの素敵な本を書けるようになる事を祈っております。


 以上、同性愛に関する私見と、本のオススメでした。


 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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