第27話 関係性(B1パート)三谷と与田
第三の容疑者である
川崎市幸区で被害者の
そしてそのまま川崎区の自宅へ帰っていることが裏付けられていた。
このパブとスナックは隣り合って営業している。
しかし、女性従業員は三谷と飯賀がつながっているとは思いもしなかったろうから、口論していることを三谷に話したとする理由にもならない。
また飲酒をしていることもあり、殺害した被害者を車で運んで部屋に遺棄したと考えるのは難しい。仮に検問にでも引っかかれば逃げようがないからだ。
「三谷は状況証拠だけだと容疑者には入らないような気がしますね。川崎市にいて殺せる状況でしたが、東京にある飯賀の自室まで遺体を運ぶのは不可能ではないですか」
「協力者がいれば不可能ではないわね。誰かに運搬を任せれば、遺体を動かすのはそれほど難しくはないはず。問題は誰に運ばせるか、だけど」
「宅配ドライバーの
「宅配ドライバーだから遺棄に適しているとはかぎらないわね。ただ、その日の与田は配送エリアから外れて川崎市まで出向いていることは裏付けられているから、それを加味すれば死体を遺棄できるかもしれないわね」
「じゃあ与田が殺して運んだと考えるのが無理はなさそうですね」
「
金森は了解すると端末を操作し始めた。まず与田の勤める東京配送社のサーバーから与田の個人情報を取得。その情報と照らし合わせるために東京配送社の運用サーバーへと侵入する。そして事件当日の勤務実態を明らかにしていく。
「どうやら夜に川崎区へ立ち寄ったようですね。飯賀は幸区で見かけられたので、関係ないかもしれません」
「でも夜だと三谷さんと近いところにいたことは確かなのよね。与田の通話記録から三谷さんが出てこないかしら」
「仕事用の端末ですよね。配送会社は私用のスマートフォンは預けて、仕事用の端末を支給されますから」
通話記録のボタンを押すと履歴が表示される。そこに三谷の電話番号が含まれていた。
「仕事用の端末には三谷からの連絡があったようですね。ということは呼ばれて川崎市に出向いてきたということでしょうか」
「被害者の飯賀さんと与田さんとの通話記録が残っていたはずだけど」
「ありますね。飯賀の通話記録と、与田の通話記録を突き合わせると、その日の昼に接触した形跡がありました」
「ということは、飯賀さんは与田さんに川崎区へ来るように指示をしていたと考えられるわね。セキュリティの強い自宅だと誰に見られるかわからないから。とくに脅している相手がなにを喚き散らすかわからない以上は。ちなみに飯賀さんと三谷さんの通話記録はあるのかしら」
「それはないようですね。ただSNSを介しているかもしれません。その場合はどのSNSを使っているか特定して、アカウントも調べないといけません。かなり時間がかかりますが調べてみますか」
「とりあえずメジャーなものからお願いします。へたをすると時間で消えるSNSを使っていた可能性もありますので、どこまで追えるかは不明でしょうね」
「確かに。犯罪につながるようなやりとりを記録の残る短文SNSや顔写真SNSや写真投稿型SNSなどでやりとりしているとは思えませんから」
「警察のサーバーから飯賀のスマートフォン履歴を取得したところ、やはり時間で消えるSNSアプリがインストールされているのでそれを使っているようですね。あとは写真投稿型SNSをメインで使っていたようです。こちらは運用サーバーに侵入して写真やコメントが取得できますが、どうしますか」
「とりあえず写真を検索してください。その中に三谷さんが写っているものがあるはずです」
「それじゃあAIのパターンマッチングに設定します。かなりの写真がありますので少々お待ちください。まだ出来立てのAIなので、手順に習熟するまではどうしても時間がかかります」
「警察の目と記憶だけに頼るよりは早いし確実ですからね。頼りにしているわよ」
「そう言っていただけると助かります」
おそらくだが、飯賀は三谷のなんらかの写真を撮ったことで、三谷から逆恨みされていたのではないか。そう考えれば、どんな写真だったのかを知れば殺意の大きさがわかるはずだ。となれば。
「金森くん、写真を探すときに削除したものがサーバーに残っていればそれも検索してください。おそらく表からは削除してある可能性が高いでしょう」
「了解しました。範囲を拡大します」
これでどんな写真がヒットするのか。三谷の顔写真をもとに、サーバーに残る何千何万という写真データと突き合わせていく。
「結果が出ました。一枚もヒットしません」
「一致しないってことよね。どういうことかしら。飯賀は三谷のなんらかの弱みを握ってしまって逆に脅されていたんじゃないの」
「こうなると三谷と飯賀を結びつけるのは難しいんじゃないですか。時間で消えるSNSだと関係を追えませんが、それ自体もあまり関係ないかもしれませんね」
しかし調べていくと三谷とは同じ時間に川崎市にいたくらいしか接点がない。もしかしたら、その短い時間で犯罪が行われたのではと推測していた。
「こうなったら与田さんを調べるほかないでしょう。
(第7章B2パートへ続きます)
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