第2話 尻軽ビッチも、見ようによってはアリ?
密かに想いを寄せている
人目を忍んで口付けた、あの恥じらった真っ赤な顔を思い出しただけで、俺は何度も白濁の液で妄想の彼女を汚してしまった。
「……自己嫌悪。最悪にも程があるだろう」
せめて及川さん以外の女性で抜こうと、スマホでエロ動画を漁っていたのだが、どうしても
「……ん、何だろう。寝取られ……? うわ、これってオッサンとエッチするん? ちょっと絵面がエグいな」
たまたま見たサンプル動画には、エロくて胸が大きな女子校生が巨根のオッサンとのエッチにハマっていく救いのないNTRモノが描かれていた。
最初は彼氏を救う為に大家のオッサンと嫌々ながらするという内容だったが、だんだんオッサンのねちっこいセックス中毒になって、小さく細い粗チンの彼氏から乗り換えると言った内容だった。
「及川さんが彼氏の為にオッサンに身体を許すシチュエーションか」
必死に想像してみたのだが、イマイチ盛り上がらない。たとえ彼氏を救う為とはいえ、他の男に股を開くのは及川さんのイメージじゃなかった。騙されて……いや、それも何か違う。
ヘナヘナに萎縮したムスコを下着の中に直して、俺は気分転換に外へと出かけた。
———……★
時刻は二十二時。深夜というには早い気もするが、良い子はすでに夢の中へと旅立っている時間だった。
最寄りのコンビニに入って雑誌コーナーへと足を向けた時だった。赤のツインテールに勝気な大きな目。何よりも強調された大きな二つのたわわが男の視線を独り占めしていた。
(ヤベ……っ、さっきのエロ動画の女子校生、誰かに似てると思ったらコイツ……
学園トップ5内に君臨する美少女と名高い莉子だったが、悲しいことに性格に難ありだった。
とにかくイケメン主義。しかも彼女がいようがいまいがお構いなしの取っ替え引っ替えだからタチが悪かった。教師でも保護者でも関係なしに誑かして問題を起こすトラブルメイカーだ。
おかげで女子からの評判は最低だったが、一部の男子からはお手軽尻軽ビッチとして需要があったのも事実である。
「あれー、もしかして水嶋? どうしたの、そんなところに突っ立って」
「い、いや、ちょっと気分転換に雑誌でも読もうと思って。莉子こそ何をしているんだよ?」
「莉子は彼氏待ち……? んー、彼氏じゃないしなぁ。セフレ? それも何か違うしなぁ」
彼女はファッション雑誌を眺めながら、アレはコレはと頭を悩ませていた。
「別に莉子が誰と会おうと俺には関係ないから、どうでもいいよ。はぁ……本当、及川さんとは正反対だな、莉子は」
莉子の隣に立ってインテリア雑誌を手に取ると、不機嫌な声で「はぁー?」とメンチを切られてしまった。
「ちょっと水嶋、それ聞き捨てならないんだけどォ? もしかしてソレって莉子のことをディスってる? めっちゃくちゃムカつくんですけど?」
しまった、余計なことを言ってしまったようだ。最近転入してきた及川さんは、莉子の取り巻きを奪うほどの美少女なので、一方的にライバルとして認識しているらしい。
「莉子から及川さんに乗り換えるなんて、バカなのよ。目が悪くなったのか、もしくは雰囲気に騙されているだけね。だって、よーくみたら莉子の方が数百倍も可愛いんだから。でしょ、水嶋。アンタもそう思うでしょ?」
いや、及川さん派の俺としては、真っ当だとしか思えないのだけれど?
「男子って単純だから雰囲気に騙されているのよ。あんな清楚系ぶってる女子の方が男好きだったりするんだって。その証拠に莉子、この前見たんだよ? 年上のイケメン彼氏とずーっとチュッ、チュ、チュッ、チュ、キスしてたんだから! 水着姿で肌を密着させながら、人目も気にせずにさァ」
み、水着姿で一心不乱に公開キス?
ヤバい、何それ……? え、もしかして脅されてヤラされていたパターン? 莉子が及川さんにヤラせた罰ゲームか?
「はぁ? 何で莉子がそんなことを言うわけ?」
「だって、そうでもないとAV企画みたいなことしないでしょ? 二人とも媚薬盛られて、どんどん興奮していって、盛り上がったところをカメラで撮って公開処刑」
「うわぁー、水嶋、流石にそれは引くって。エロ動画の見過ぎ……」
そ、そうなのか? くっ、あまりにもエロ動画ばかり見すぎて、現実と妄想の区別もつかなくなっているのか、俺!
「でも、ちょっと羨ましかったなぁ。莉子もあんなふうにキスしたいって思っちゃったし。及川さん、スゴくトロトロの顔でイキ顔晒してたもんなぁ」
「い、イキ顔って、そんな大袈裟な。キスだけでイくなんて、それこそAVの世界だろ?」
すると莉子は、俺を小馬鹿にしたような顔で覗き込んできた。ニヤニヤ緩んだ唇が憎たらしい。
「あららぁ、水嶋くんは本当のキスを知らないんだァ♡ 可哀想ー、キスが気持ちいいって知らないなんて」
「な、何だよ! そんなことないって!」
——と言いつつ、内心は本音を突かれて焦っていた。気持ちいいとは思ったことはあっても、イクまでの快感は得たことがない。そんな考えていると、莉子は挑発するような笑みを浮かべて、更に上目で覗き込んできた。
「ふふふっ、可哀想だね水嶋くん♡」
急に縮めてきた距離、漂う甘い香りに意識を奪われそうになった。
突き放すことも出来ず、呆然としていた俺の口角に莉子は唇を押し当てて甘く吸った。
「アンタが知りたいなら、特別に教えてあげてもいいよ? その代わり、水嶋も莉子のことを満足させてくれないと承知しないからね」
「ななな……っ! お、おい! 勝手にキスするなよ、こんなところで!」
「何言ってるの? こんなのキスのうちにも入らないって。馬っ鹿じゃない?」
すると、タイミングを見計らったように莉子の小さなバックに入れていたスマホが鳴り出した。
「あー、やっと来たァ♡ ごめんね、水嶋ァ。莉子は今からダーリンとデートだから行かないといけないんだ。続きはまた今度ね」
「い、いやいや! その続きは未来永劫訪れることないから!」
「はいはい、もう水嶋に構ってる暇ないからゴメンネー。……アレェ、なんか不機嫌っぽい? ブッキラボウだなぁ、遅刻してきたのは向こうなのに。もう、これって莉子が八つ当たりされるパターンになりそうじゃん」
不機嫌? その言葉を聞いた俺は、不意にコンビニの外へ視線を向けた。そこには車の外で俺達を睨みつけるワンコ系男子の姿が見えた。
もしかしてさっきのキスシーンを見られたんじゃ?
「んじゃーね、水嶋。また明日ねー」
「あ、明日じゃなくて! 大丈夫なのか莉子!」
「ん? 大丈夫だよ、水嶋が気にする必要なんてないからさ」
細くて長い、カラフルに彩られた指をヒラヒラさせながら、莉子はコンビニを出て駐車していた車に乗り込んだ。
本当に大丈夫なのだろうか? 心配で仕方ないはずなのに、どうして俺のムスコは興奮しているのだろう?
我慢できなくなった俺は、急いで自宅へ戻り、そのままベッドへと潜り込んだ。
———……★ (水嶋妄想タイム)
「ねぇ、莉子ちゃん。さっきの男の子って誰? もしかして彼氏とか?」
「えー、そんなんじゃないって。ただの同級生だよ。私には林ちぃっていうダーリンがいるのに、浮気を疑うの?」
「だってさっき、僕の見間違いじゃなければ、キスしていたような……」
嫉妬で複雑な気持ちで車を走らせる男に、莉子はニンマリと笑みを浮かべて「車を停めて」と伝えてきた。
急に停車するように言われて焦った林は、慌てた様子で莉子の方に身体を向けた。
「ごめん、莉子ちゃん! 僕はそんなつもりじゃなく——……!」
車を停めたと同時に唇を塞いできた莉子に、男は身体を硬直させていた。先程の口角に押し当てただけのキスとは違う、舌と舌を絡ませた大人のキスだった。
「もう、嫉妬するなんて可愛いね、林ちぃは♡ もう我慢できない……ここでシちゃう?」
「こ、ここでって、車の中だよ? それに交通量も多いし!」
「それじゃ、もう少し静かなところに行って……シよ?」
そして濃厚にまぐわう二人を想像し、俺は果ててしまった——……。
あんなに及川さんのことが好きだと言っていたくせに、今度は友人である莉子で妄想して、最低にも程がある。
だが、この上なく気持ちが良かった。
「ダメだ、俺……おかしくなっている」
自分の中に眠っていた感情を処理できず、俺は困惑したまま頭を抱えて嘆いていた。
『水嶋くんは好きになった女子が他の男に寝取られている姿でしか、興奮できない……』
そう、これは序章に過ぎない。
俺のカルマは始まったばかりだ——……。
END……★
水嶋くんは好きになった女の子の幸せな顔が見たい(たとえ、それがNTRだとしても) 中村 青 @nakamu-1224
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