第4話解決編

宮本大次郎は楽屋で喫煙していた。

コンコン

と、ドアをノックした。彼は疲れ切っていた。


「誰だ?」

「警察の者です」

「入れ」


ガチャッ!


「宮本先生、スタジオで黒井川さんと仙岩寺さんがお待ちです」


宮本は灰皿にタバコを押し付け、スタジオに向かった。


スタジオには、黒井川と仙岩寺が立っていた。

「私は逃げも隠れもしない、早くお縄をちょうだいします」

「はい。まず、焦らずに。逮捕はします。しかし、過失致死と計画殺人では罪が違います。そこを慎重にしなければ」

と、黒井川は言った。


「ほう、面白い。話しを聞かせてください」

と、宮本は堂々たる姿だった。


「まず、気になったのはほこらです。セットが組み上がったのは今夜です。祠に大事な観音様がありませんでした。調べたらセット裏に置いてありました」

「それで?」

「仙岩寺さん、ご説明を」


「ちょっと、このフイルム見て下さい。今、一時停止しています。あなたのデビュー作の「清水次郎長物語」のワンシーンです。ここに祠があります。この観音様に見覚えありませんか?」

「いや、無い」

「そんなはずは」

「そう言われても」

「このフイルムは1975年の撮影です。49年前のあなたの出世作の大事なシーンです。この観音様と今セットしてある観音様は同じ観音様です。観音様の裏に書いてありました。

1975年清水次郎長物語にて使用と。あなたは美術品に大変こだわると聴いております。だから、出世作の観音様を2代目の返り血で汚す事は避けたかったのです。それで、誰も居ない事を確認してから、観音様をセット裏に置いたんです」

「……」

「これは、立派な殺意の証明です。まだ続けますか?」

「……いや、結構」

「自供してもらえますね?」

「……はい。後、土屋君の事だが、彼は何もやっていない」

「はい。それは、承知しています。真剣とイミテーションの刀をすり替えることは出来ても、殺陣の段取りを彼は変えることは出来ません。以上です。黒井川さん」


「仙岩寺先生ありがとうございました。いいよ」

と黒井川が言うと、警官が駆け寄り、宮本の脇に立った。

黒井川は、宮本に手錠を掛けた。

宮本はパトカーに乗った。それを見届けた黒井川と仙岩寺は喫煙しながら、

「この名宝キネマはどうなるんでしょうね?看板役者が居なくなって」

「大丈夫だと思いますよ、黒井川さん。彼らなら、乗り越えられる。若手もいますし」

「頑張って欲しいなぁ」

「同じ気持ちです」


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殺しのリハーサル 羽弦トリス @September-0919

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