十四話
迫害される日々を送るアンコールは授業で行われる魔法の話をぼんやりと聞いていると、興味深い話が耳に入った。
「そういえば、そろそろお前ら無能共が下剋上が出来るかもしれない、決闘の時が近づいてきたなあ」
にやにやと不快な笑みで語る教員の話にアンリ―ナは冷めた視線を一瞬だけ向けた後考える。
——決闘ねェ、確か上位の生徒に勝てばクラスが入れ替わる……って噂の大イベントだよなァ。
年に三回行われる決闘。またの名を下剋上イベント。
S~Eクラスの生徒同士が複数回決闘を行い、勝てば昇進負ければ降格という最底辺の人間からすれば見下した相手をねじ伏せる事が出来る最高のイベント。
例えばEクラスのアンリ―ナがDクラスの生徒に勝てばアンリ―ナはDクラスに昇進できるが、代わりにDクラスの生徒はEクラスへと降格する。奴隷だとなんだと見下した相手に逆に見下されるという、最底辺の人間からすればどんな手を使ってでものし上がりたいと思うイベント。
アンリ―ナは最底辺のEだと判定されても落ち込まなかったのは、この決闘イベントがある事を前から知っていたからだった。
「まぁお前ら無能共が下剋上なんて出来ないだろうがな! いやぁこの一年お前らの顔だけを見るんだろうなあ」
生徒達に説明を終えた教員はげらげらと下品な笑い方をした。
この教員は「もしも下剋上を実現できたのならば」という既定の為に授業内容は同じにしているが、価値無価値の話となると途端に見下しだす。それは決して国の規定だからではなく、自分が価値ある存在に罵られる事が苦痛であるから、そのストレスを発散する為に自分より無価値な存在を罵る事で快感を得ている――と言ったものだとアンリ―ナは察していた。
——あの表情が絶望に満ちた瞬間、ぜってェ気持ちいいよなァ……。
下剋上が実現できるとアンリ―ナは確信しているので、見下し嘲笑う教員の未来を想像しほんの少しだけ口角を上げた。
——あ~今から無能共を蹴散らせるって考えると、ふふ、ふはは、ははははは! やばい興奮する! あとでシロコと作戦会議すっか。
周囲が教員の言葉に落ち込んだり、逆に闘志を燃やす中、アンリ―ナは内心の感情を隠す為にあえて頑張ろうと意気込むような演技をした。
前世異世界出身害悪キャラは女神の怒りを買いTS転生されました~魔力量が全ての世界で彼女は最高の召喚獣を召喚して成り上がりを期待したのに、どうやらこの世界はゲーム?らしい~ 蒼本栗谷 @aomoto_kuriya
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