第三話
私、
難産と産婦人科での大轟音を伴う謎の停電事故に会って、一瞬の心停止があったそうだ。
アポカリプティック・サウンド? と言うらしいが、停電にも負けず、私は一命を取り留めた。
私が2歳くらいの頃、【ダンジョン】からモンスターと資源以外に出てきた物があった。
最初、モンスターに囲まれた軍人が、弾切れの銃から火の玉を打ち出したのが始まりで、【ダンジョン】で様々な不思議現象が起きたらしい。
インチキでもトリックでもない不思議パワーは、何の捻りも無い【魔法】または【ソーサリー】と呼んで、使い方があっという間に世界に広まる。
見た目や、お金、地位、運動能力以外で人を評価する【魔法】を使える能力【魔力】が調べられるようになると、人間関係が大きく変わる。
中学入学のころには、学校で普通に【魔力測定】が行われて、学力がイマイチでも【魔力】が高く、強い【魔法】が使えるとわかれば、スクールカーストのテッペンが取れるガチャのような世界。 ハンターが世の中で偉そうにしている原因はこれだ。
私も【魔力測定】をした。結果、【魔力】量ゼロ、【魔法】適正無し。中学校生活は酷かった。 こんな差別社会を作った世界を恨んだ。 私という存在を魔力量に置き換える学校生活にさっさと見切りをつけて、学校を『やめた』。 逃げたなんだと煩い周りを黙らせるために、卒業程度認定試験を受け合格した。
私は、【魔力】が全てみたいな世界を生んだ【ダンジョン】が大嫌いだ。でも他の魔力無しの人とつるむつもりもない。人として生きていくのに【魔力】は関係ないことを知っているからだ。
でも…
『♪~今年は照和100年のメモリアルイヤー! ファミローでは照和100年を記念して特別な商品が盛りだくさん!』
「…しゃっせー」
私はまたこのコンビニに来ている。そしてフライヤーの油に酔っている。
結局、病院では2日の入院となったため、私は新たに生えてきた過去の記憶を思い返してみた。
数百年前の記憶とかそういう話ではなく、“新たな記憶”は、異世界の【龍】の記憶だった。
ん? 私の祖先って異世界人ってこと? 人ですらない?
父方、母方両方のおじいちゃん、おばあちゃんは皆、東北生まれとか関西生まれとか言ってたし、異世界の血は入ってないと思うけど。もっと昔とか…
「【魔法】か…」
【魔力】、【魔法】ではホント嫌な思いをしてかなりの事をしてしまった。 【魔力】量ゼロ、【魔法】適正無しだった私が、いまではそのどちらも、とんでもない力となっている。下手すれば、SS級ハンターを軽く超えている。 私が今までしてきたこと、考えてきたことが無意味になる。 間違っても周りに魔法が使えるようになりましたとは言えない。
「とりあえず、魔法の把握をしないとなぁ 使うかどうかわからないけど…」
「あやみサン、なにか言っテるの?」
「ううん、何でもないよ」
「大丈夫? 無理しナいデね」
「うん。 ティさんありがとう」
油に酔っててあまり大丈夫ではないけどね。
ピロリロン ピロリロン♪
「…しゃっせー」
「おい! 本当にこの店にヤツが来たのか!!」
「間違いねぇーっすよ! レッドアームの立花が来てたんすよ!」
「ちょっと調べたんですが、アイツ結構この店に来てるらしいです」
「そうか…」
声も汚ければ顔も汚い。デカくてうるさい声には聞き覚えがある。
「おうネエチャン、ここに腕の赤いハンターが… お、この前のネエチャンか!」
やっぱあの時のクズ4人組か。なんだよ一人増えてるじゃん! レジには…私一人。
店内は…ここのお客は察しがいいね。
「この前はエライ舐めたまねしてくれたなぁ!あぁ! おい!立花は何処にいる!」
レジカウンターにドンと腕を突き大声で威圧してくる。
煩いなこいつ。
「申し訳ございません。お客様の個人的な情報にはお答えいたしかねます」
「このアマ、またふざけたことこと言いやがって!」
ピロリロン ピロリロン♪
「じゃぁこっちの外人のネエチャンに聞くか!」
店の裏にあるごみ捨て場から最悪のタイミングでティさんが戻ってきた。
あぁ、もうティさん!
「おい!ここに赤い腕の男が来るだろう!ヤツは何処にいる!!」
「きゃ! やめてくダさい!」
リーダー的な大男が店に入ってきたティさんの腕をつかむ
大男は、背中に大きな戦斧を背負った髭面で、魔物素材らしい光沢のアーマーを付けている。
「お客様! 乱暴はおやめください」
チッ また店長がいない! 通報ぐらいしてるんだろうな!
マニュアル対応も、ちょっと限界。
「このネエチャンでも、レジのネエチャンでもどっちでもいい! 立花の居場所を教えろ!」
そんなことコンビニ店員が知るワケないだろ 普通に考えればわかるだろ!! バカか!
「おい!早くしろ!!」
「イヤッ!!」
戦斧の男が、ティさんを引き寄せる。
「ちょ、おま「おい!やめろ!!」んだよ」
な! 私の声にかぶせるように店内からかわいらしい大声が聞こえてきた。
「ゲンジ!その手を放せ!」
店内の男たちに注意をしながら声の方を見ると、中学生くらいだろうか、ショートカットの人物が、戦斧の男を睨んでいる。
初心者が良く着る紺色の樹脂プロテクターを身に着けた、150cmあるか無いかの女の子だった。
つづく
色々あって、マジでダンジョンが大嫌い! ~必要に迫られてるんで潜りますけども、本当に嫌ッ~ rina103 @rina103
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