第二話
森と石柱。 岩肌と緑のコントラストが綺麗。 何処かで見たことあるな… 中国だっけ…
見下ろしてる… 私、空飛んでるんだ…
あれ、身体がびしょびしょだ。 ん?また、この5人。 私は何もしてないのに… なんでバケツ持って笑ってるの? 醜い笑顔。
またこの人たちだ。みんな粗末な…貫頭衣? 食べ物と花と…裸の女の子。 私は要らないよ。 私を崇めても、雨は降らないし、病気も治らない。 あの人たちに話してあげるから、あなたはお帰り…
魔力が無い、魔法が使えないのがそんなにダメなこと? いいよ。相手してあげる。 スマホのカメラまで構えて、覚悟あるんだよね。 みんなも同じ考えなんだね。 私の事は信じられない…そういうことなんだね。 不本意だけど、どちらが正しいかハッキリさせよう…
私、今怒ってる? …ここは六肢竜が来て良い所ではないの… 傷つけるのも、傷つくのも嫌。 私を嫌う理由は何? 私も貴方もこの星の存在なのに…
やりすぎ? なんで? 最初に手を出してきたのはあの人たちだよ。 力を使えば同じ事? 違うよ、私は私を守るためだもん。あの人たちは笑いながら人を傷つけるんだよ…
ねぇ、あなたはもう話してくれないの…なんでそんな悲しい目で見るの…
私が間違ってるの… ねぇ、私の話も聞いてよ…
この世界は私が憎いのか…そんなに私は邪魔なのか…
私は居ちゃいけないの…私はそんなに邪魔なの…
じゃあもう何もしないよ。何も言わないし、何も聞かない、何も見ない… そうだ、わかった。ずっと寝ていればいいんだ。 すっと静かにしていよう。誰にも見つからない所へ行こう…
でも…
「でも…」
「ん? あれ… しらな…」
おっと危ない、言ってしまうところだった…
でも、ここどこだ?
「あやみサン、目がサめた! 大丈夫!?」
顔を向けると横にティさんが座ってた。
「ああ…ティさん…ここは…」
だんだん頭がハッキリしてきた。周りを見ると…病院?
「あやみサン、コんビニで倒れたンだよ! ッあやみサンどこカ痛いの? 泣いてるノ?」
「ううん、大丈夫…」
自分の頬に触れると濡れていた。涙か…あれ、夢でも見て…た…
ギリリ!!!!!
「痛った!」
頭痛った!!! 頭に針が刺さってる?!
思わず頭を押さえた。頭には何も刺さってない!?
痛い痛い痛い痛い体中痛い! ベットで何度も寝返り打って、痛くないポーズを探すけど見つからない!
声も出ないよ!!
「あやみサン!! あやみサン!!」
右腕がズキっとする!
「あやみサン暴れナいで! あぁ、点滴ぬケちゃったよぉ」
ティさんの悲しげな声が聞こえる。あぁティさん。
数十倍の痛みが来た。
「ぐあっ!!」
体中にすごい力が入る! 体がのけ反る!! 背骨が折れる!痛い!!
「あやみサン!! あやみサン!!」
「どうした、ティさん……おい!七帆君!!」
立花の声が聞こえる。誰でもいい!助けて!!
唐突に全ての痛み、力、光、音が消えた。
「ン! あれ? 痛くない… なんで?」
ここは何処? 真っ暗だ…何も見えないけど、でも…
「手は見えてるなぁ 暗いのに光源がある感じ… 変なの」
さっきの痛みから解放されたせいか、この状況に落ち着いていられる。 私浮いてるの?
「…ん?」
前の方に何か浮かんでる。 なんだろ…人? だんだん近づいてくる… 鏡? じゃない、真っ裸の私だ… うーん、私も真っ裸だ…
でも、私だけど、水面に映ってるような… 近付いてきて、向こうの私と胸が触れる。 触れた所から波紋が現れる。
『ああ、この体は【魂】を眠らせているのか… でもこれで【魂】<こころ>と【魄】<からだ>が揃う。 私はここで眠る。 力は全部使っていいよ…』
「え? なに? 誰の声?」
『小さな、連なるもの… 私は黒き者【
「どういうこと…」
向いの私が安心したように微笑んだ。すると、波紋を接点に私の中にスルスルと吸い込まれるように入ってくる。
「な、なん!」
体が動かないので防ぎようがない。
最後にスルンと入ってきたものに鱗があったように見えた。
「ちょっと待って!」
私はベッドの上で起き上がっていた。
「へ?… ここって…」
左側にある窓の外は空が大分暗くなっている。
「さっきの病室? 一体どうなってるんだ」
右側から光が射しこんでくるのに気付いた。
「
開いた引き戸から人が入ってきた。
「お母さん…」
「さっきまでバイトのティさんもいたんだけど…暴れたかと思ったら、すぐに気を失ったって…先生も起きたら検査しましょうって…気分悪くない?頭痛くない? ごめんね綺水、すぐに来れなくて…先生呼ぼうか…あ、ちゃんと寝てないと…体は痛くない? そういえば、あなた今日誕生日じゃない? あと、ティさんと一緒にいた大きな人って」
「お母さん一旦落ち着いて、私は大丈夫だから…」
捲し立てるお母さんを落ち着かせる。
心配そうな顔で忙しないな。
「そうだ、お父さんに電話しなきゃ…飛行機取れなくて新幹線で来るって…」
お母さん…もう…
「……お母さん、私ちょっと寝るね」
「そうね綺水は寝てなさい。お母さん電話してくるわね」
お母さんが忙しなく部屋から出て行くと、私はベッドにバタッと倒れた。
そのまま目を瞑る。やけにはっきり覚えているさっきの【夢】を思い出す。 【夢】なのか?
思い返してみると【夢】の内容がだんだん現実っぽく、自分の記憶として思い出されてくる。2つの記憶が混ざっていく…
空を飛んでいた記憶、意味もなく崇められていた記憶、…殺し合いの記憶… 全てがスーッと溶け込んで脳に染み渡るような…
「そうか、アレは私なんだ… 私の記憶だったんだ…」
私は誕生日に前世の記憶を『思い出し』、病院のベッドで眠りについた。
散々な一日だったな…
つづく
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