第9話 ゴブリンダンジョン

ん、あぁ?えーっと……


気がついたら昨日寝ていたようでソファに寝転がっていた。昨日のカチャトーラは思ったより上手くできてよかった。


「たしか、今日からゴブリンのいるダンジョンに向かうんだよな。とりあえず飯食ってシャワー浴びるか」


俺は昨日の残りのカチャトーラの残り汁にご飯を入れ、チーズをかけて火を通しリゾットを作った。


朝から食うには少しばかり胃に重たいような物ではあるが、これからする戦闘の事を考えればカロリーの多いチーズや腹にたまる米を食うことにした。


「うっまいなぁ、昨日のカチャトーラが米に染み込んでていいな、それに加えてチーズの塩味が更に食欲をそそらせる…」


俺はそのトマトチーズリゾットを噛み締め、味わった。腹も脹れたところで歯磨きやシャワーを浴び動きやすいジャージを取り出して着た。


なんっていうか、不格好だよなぁ…ずっとジャージじゃなかったからなぁ。まぁ、動きやすいからいいか。


☆☆☆


【ゴブリンのいるダンジョンはツノウサギのダンジョンよりも先にありますね】


俺はしばらく歩き、ツノウサギのダンジョンを超えた辺りにあるアパートの裏にある空き地へとやって来た。そこもツノウサギのダンジョン同様に扉にはゴブリンと思われる緑色の醜悪な顔が描かれていた。


俺はダンジョンへ続く扉を開き、前回と同じく楓ちゃんに地図マップを展開してもらった。


今回のダンジョンは前回と違って丘のようになっており傾斜が所々にあることがわかった。丘の頂上を起点としてゴブリン達が二、三匹で行動していることがわかった。


俺は刀を手に持ちいつでも抜刀できるように柄に手をかけるようにして歩き始めた。


【ゴブリンを視認できました、ゴブリン三匹がこちらに気づく前に背後から斬り掛かることをおすすめします】


正々堂々なんて言える状況でもないし、俺はゴブリン達の背後に忍び寄りその首をはねた。ツノウサギ達よりも首の肉や骨は固く感じたがそれでも難なくその首を跳ね飛ばす事ができた。


この三匹のゴブリンからドロップしたアイテムは、魔石(小)ゴブリンの角が三つづつ手に入った。魔石の大きさも極小ではなく小になった。


俺は続いてゴブリンを狩るために、地図の確認を行い背後から狩る、というのを何度か続けた。


「ん、?これはなんだ?」


しばらくゴブリンを狩り続けた俺の目の前に扉が突如現れた、その扉にはゴブリンの顔よりもゴツイ顔だが、ゴブリンにしか見えなかった。


【ボス部屋への挑戦が可能になったようです。このダンジョンのボスはホブ・ゴブリンと言ってゴブリンよりも全体的に能力が高いだけですが、油断しないようにしてください】


「あ、これ入れってことね」


楓ちゃんから早く入ってくださいと促された俺はその扉を開けた。扉を越えた場所にも丘があり、その頂上に剣を持った大人の男性程の背があるゴブリン―――ホブ・ゴブリン―――の姿を確認できた。


そのホブ・ゴブリンの周りには三匹のゴブリンが待機しており、棍棒と木の盾を装備していた。



「気づかれてるなぁ、これじゃあ背後から首を狩るのは難しいな…まぁ、正面から戦っても負けはしないから大丈夫かな」


俺はホブ・ゴブリンと目が合った、するとホブ・ゴブリンが雄叫びを上げゴブリンを率いて丘を勢いよく下って来た。


「グギャァァァ!!!」



「注意するところってある?」


【ホブ・ゴブリンの雄叫びには同族に対してのバフがつくようです。そこだけ気をつければ問題ありません】


俺は楓ちゃんにありがとう、とだけ言って刀を抜いた。



「ゴギャァァ」


俺は棍棒を大きく振りかぶるゴブリン三匹の懐に入り込み、手際よくその首を落としていった。レベルの恩恵により、力も俊敏性も高くなっていた俺にはゴブリンが攻撃を仕掛ける間もなく討伐に成功した。


その光景に呆気に取られるホブ・ゴブリンだが、俺は気にせずホブ・ゴブリンの首を胴体から切断した。



「なぁ、俺が強いのかこいつらが弱いのか……どっちなんだろうな」


【ホブ・ゴブリンは大人の平均男性よりも力強いですがその知能は平均以下なので微妙なラインです。しかしマスターはレベルを上げた恩恵により、以前よりも強く賢くなっています】


「なるほどなぁ、、ん?これはなんだ」


俺は目の前に現れた宝箱に触れた。


【これは、ダンジョンボスの攻略報酬ですね】


俺はその宝箱を開けた、その中にはコートが入っておりそのコートは深緑色をしていた。ローブは魔道具だったらしく、その効果などを楓ちゃんに鑑定してもらうとこれはダンジョン初回クリア報酬らしく『気配遮断β版』『斬撃耐性β版』が着いているらしい。ここのダンジョンボスの討伐報酬は耐性スキルがランダムに付与されたコートらしく、『気配遮断β版』が初回クリア報酬で得られたものらしい。


「おぉ、意外と似合うな」


【えぇ、そうですね。ふふふ】


……楓ちゃんが少し人間らしくなったのか、?それとも俺の耳がおかしくなったのか楓ちゃんの言葉に意思が乗ってるように聞こえた。


「楓ちゃん?」


【マスターどうかなさいましたか?】


いや、気の所為だったようだ。いつも通り機械音声のような楓ちゃんの声がした。俺はダンジョンを後にし、住居へと帰った。



「ゴブリンって肉をドロップしないんだな」

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