第8話 カチャトーラ
「どうやって食おうかなぁ…」
俺は目の前に置いたツノウサギの肉を眺めながらどう調理するか考えていた。
ウサギ肉と言えば、淡白な味で鶏肉に似ているというのは知っているが実際に食べた事はないんだよなぁ。
【ウサギ肉の煮込みはどうでしょうか?イタリアの家庭料理のカチャトーラと呼ばれる料理があります】
作り方は簡単で、ウサギ肉をイタリアの定番であるトマトソースや香味野菜など野菜と煮込むだけ…らしいです。(楓ちゃん情報)
俺はその情報を元に作ろうとした…が、トマトソースも野菜もない、恐らくアパートにもない。どうやって作るべきか…焼いて食うか?どうしよっか。
「ふっふっふ、新しいスキルを君に授けようじゃないか!」
「うん、それで?」
「もっと反応してくれてもいいじゃんか!」
急に現れたゲームマスターに適当に相槌をうち、俺は早く要件を言うように促した。
「君に新しいスキルを授けようその名も『ショップβ版』だよ!」
βテスターってこんなに恵まれてるもんじゃないはずなんだけどなぁ?バグだらけっていうイメージがあるからな、、、それはそうとして
「何で買えばいいんだ?金とか入金すればいいのか?」
「このショップではね、魔石とか魔物からのドロップ品を売ることができるんだ、その売ったお金で買い物ができるって事だね。簡単でしょ?」
俺は説明された通りショップを開くと既に100000円の残高が入金されていることに気がついた。
「それはプレゼントだね。とりあえずはそのお金で買ってほしいかな?実はね、まだ魔石とかの値段設定が終わってないんだよね…」
「まぁ、助かった。それじゃあな」
俺はそう言ってゲームマスターを住居から半ば強制的に追い返すように促すと、光の粒となって消え去った。
☆☆☆
よし、とりあえず買い物はポチポチっと終わらせた。トマトソースと野菜を買うだけだったのでそこまでお金は減っていないようだが、『ショップβ版』にも物価高が反映されているようで少し高く感じた。
気になるお値段と残高だが、初回限定の無料サービスをしていて、色々買って住居に置いておく事にした。後々、色々と作る予定の料理で紹介しようと思う。
【誰とお話をされているので?声がダダ漏れですよ?マスター】
「ん?なんでだろうな?分からんな。とりあえず料理に取り掛かるか」
早速、カチャトーラを作るために買った玉ねぎを切っることにした。玉ねぎはみじん切りに切るらしい。
次はウサギ肉を切るのだが、今回使いたいのはモモ肉のため、皮だけが剥がされた状態のウサギを各部位に分けて捌いた。ウサギのモモ肉は一口大に切り、塩コショウをまぶして、薄力粉を満遍なくまぶした。
「生肉って美味いのかなぁ?ユッケとかって生だし、大丈夫なのか?」
【食中毒や寄生虫によって体調を崩す可能性の方が高いですが、それでもいいなら大丈夫ですよ?】
それ、大丈夫じゃないですよー楓ちゃん。
続いて、中火で熱したフライパンにオリーブオイルをしいて薄力粉をまぶしたモモ肉を両面に焼き色が着くまで焼く。
【次はそのフライパンで、初めに刻んでおいた玉ねぎを弱火で炒めてください。次にモモ肉とトマトソースをフライパンに入れるのですが、トマトソースのトマトの果肉をざるでこすと口当たりが滑らかになります】
そう言われたら、するしかないだろう。俺はざるを取り出しトマトソースを滑らかなソースになるまで果肉を潰した。
「そして、フライパンにソースとモモ肉、白ワインとローズマリー、そして時短のために用意した固形のブイヨン」
ブイヨンは三、四時間ほど弱火で煮詰めないといけないので固形のやつを使う事にした。さすがに俺も腹が減ったからな。
【あとは、蓋をして弱火で煮詰めると完成です。モモ肉に火が通り柔らかくなったら取り出し盛りつけをします】
☆☆☆
「おぉ、旨そうな香りだなぁ」
【えぇ、そうですね】
楓ちゃんって鼻どこについてるんだろうね?まぁ、そんなことは今どうでもよくて、目の前にあるカチャトーラという料理を目の前にしてヨダレが垂れてきた。思ったよりも綺麗に盛りつけができ、それが余計に食欲を刺激してくる。
「もっと野菜を入れても良かったな、、、」
俺は次作る時には野菜たっぷりにしようと決意した。すると、ピーッという機械音がなった。事前に用意していた白米が炊けたようだ。俺が炊飯器の蓋をあけると光り輝く白米がこちらを覗いてきた。白米とカチャトーラをさらに盛った。
「いただきます」
ツノウサギの肉を口に含むと、旨みが凝縮されており、玉ねぎのほのかな甘みがよりウサギ肉を美味しくさせる。今回の作り方は、トマトソースをざるでこしたからスープのような滑らかな舌触りだが、もっとゴロッと具があってもいいと感じた。
俺はそんなことを頭の隅で考えながら白米をかきこんだ。確かにトマトソースを使ったカチャトーラと白米が合うのか?という疑問があるが基本的に白米は何にでも合う、俺は再度その認識が間違っていなかったと感じられるほどに白米が進んだ。※なお伊藤龍司、個人のかんがえです。
「ごちそうさまでした」
俺は食器を洗い少しくつろぐことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます