当たり前に明日が来ると思っていた

白川津 中々

◾️

当たり前に明日があると、勝手に思っていた。


「救急車……救急車……!」


誰かが俺のために救護活動をしてくれているが、もう駄目だろう。脳が無理だと語りかけている。葬儀屋に直電した方がいいくらいだ(誰も悼んでくれないだろうが)。


しかし、そうか。俺も終わるか。つまらん人生だった。若い頃は青春なんてなかったし、今もフリーターでその日暮らし。山も谷もないずっと底辺を這いずる生活。ある意味ここで断ち切られてよかったかもしれん。未練もとくには……



あ、待て、待て待て、公道で倒れているということは、合法的にスカートの中とか覗けるんじゃないだろうか。三十五年生きてきて未だ拝んだ事のない女性の下着。これを眼に納める千載一遇。ぜ、絶対に見たい……


「う、あぁ……」


「お、おい動くな」


「すぐ救急車くるからじっとしてろ」


うるせぇぇぇぇぇぇぇ今は俺の命よりパンツなんだよぉぉぉぉぉぉ女ぁぁぁぁぁぁぁぁ女どこだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ


「あの、大丈夫ですか」


女。

女が俺の前に屈んだ。

スカートを履いた女だ。

心と体が、漲る!


「み、見せてくれ……そのスカートの下を……!」


恐らく最後の生命力。文字通り死力を尽くしてのヘッドスライディングにて股座に突入。目の前には……


……


……


……



「つ、ついてる……」


細い布から大きな⚪︎がこんにちは。しかも∩こう。⚪︎∩⚪︎こんな状態。これ見て終わり。俺の命はもうお終い。こんな、こんな残酷な事が……!



あ、駄目だ……


意識が消えていく。

ちくしょう、今際の際に見た最後の景色が⚪︎∩⚪︎だなんて、本当に俺の人生なんだったんだ。ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう……


消えゆく意識。身体が軽くなる瞬間。俺の姓、いや生は、最後まで報われる事がなかった。

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