道化師あるいは手品師

茶村 鈴香

道化師あるいは手品師


彼らはいつもふたりで現れる

小道具は何もない


片方が相方の頭を小突く

脳天が二つに割れ

小さい孔雀が飛び出す

万雷の拍手


孔雀は羽を広げ

その隙に

割れた頭はガムテープで貼られる

『ねぇ雑すぎない?』

ここらでひと笑い欲しいとこだけど


彼らはいつもご機嫌で現れる

小道具は何もない


片方が空中からトランプを出し

相方の恋占いをする

『生まれ変わっても見込みなし』

本気で恋をしていた相方は

真紅の血の涙を滝のように流す

万雷の拍手


涙の滝は止まらず溢れに溢れ

相方ももう片方も見物客も

真紅の血に胸まで浸かり溺れるしかない

『ねぇこれ誰か笑ってくれてるのかな?』


これは手品

これは魔法

呪文も杖もないけど

たしかに手品

あるいは魔法


招待状はいかがでしょうか

ただいま半額でご覧になれます

(ただし

命の保証はありません)


生きて帰れた方は

どうぞアンケートをご返送下さい

(抽選で2名様に

道化師の目玉を差し上げます)


暗転からの明転

舞台に残るサンパチのマイク


彼らは既に

他の劇場の

他の幕袖で出囃子を待つ

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道化師あるいは手品師 茶村 鈴香 @perumi

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