第15話 本能

「本能」


マンションの出入口の赤目樫(あかめがし)の樹に、どうもそれらしきものがあった。

粗雑に枝をいくつか寄せただけの、スカスカの巣。キジバトの巣だ。

ボウボウ だか、 ぼっぽぽー だか、言っている声は少し前からあった。


外を見ると、地味な羽根の鳥が、低空飛行している。

葉と枝の重なりの多い所をよく見ると、赤い目をしたキジバトがすわっている。


しばらく放っておいて、気にもしていなかった。

時々、天気のいい日に、窓に鳥の羽ばたく影が映っていたりした。


しかし、ボウボウ ぼっぽぽー の声はしなくなり、無残にも、巣は、こわされていた。

下には、細かく短い羽根と、卵のカラが、散らかっている。


数日前、猫が、巣の下をうろついていた。そして、上をじっと見ていた。

 やってしまったか‥‥


この辺の樹には、場所を変えながらも、よくキジバトが来ては、懲りもせず

巣をかける。

一度だけ巣立っていく姿を見たことがあったが、だいたい、いつも空っぽになった巣ばかりが、残されている。


猫は、お腹が空いていたわけでもないだろうに。

ただ、動く物が好きで、楽しいのかもしれない。

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チャポンタエッセイ 戯画実(ぎがみ) @ichijiku-neko

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