第36話

side 成瀬涼子





見合い相手の遺志か。いい加減腹括らなきゃね。

私の思わせ振りな言葉にオタオタしてる湯島秀人。普段の仏頂面が嘘みたいだ。

所詮しょせん跡継ぎ娘だし結婚するなら草食系。よく働いて私に甘い人。

それなら浮気しても良いや。

なんてタカをくくってたけど

実際好きになったのは自由気ままに女を食い散らかしてた若頭。しかも惚れちまったから浮気は許せない。

よく働くし今のところ私には甘い。

チラリと後ろを振り向けば山崎と親しげに話す樋口。

初対面の印象がよほど良かったらしく中井も樋口も私には甘い。秀人の両親も


「こんな色ボケ息子で申し訳ない。

浮気したら秀人を追い出して涼子ちゃんに婿を取る。」


だから嫁に来てやって欲しいと二人揃って頭を下げられた。


「もう十分だよね。」


「…り、涼子っ、早まるなっ!!」


「うん。結婚しよう。」


私が笑うと


「…へ?」


秀人はポカンと私の顔を見た。


「ほら成瀬の家に帰って来たし今日は女には声を掛けられなかったじゃん?」


男の子にはかけられたけどさ。


「だから願掛けはお仕舞い。満願だからプロポーズ受けるよ。」


クスリと笑うと


「…っ、俺、絶対浮気しねえっ!誓うからっ!!」


感極まって秀人が泣いた。

まったくロマンチックの欠片も無い男。


「ま、いっか。」


今の秀人なら簡単に手のひらで転がせそうだし?私はほくそ笑んで泣いてる秀人の頭を撫でた。





『秀人と涼子の恋』



2016.9.19 完結

2024.11.15 加筆修正

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秀人と涼子の恋 ましろゆきの @suzume1234

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