欠けた茶碗
ヤマシタ アキヒロ
第1話
欠けた茶碗
みんな欠けた茶碗で
ご飯を食べていた
まともな茶碗は
一つもなかった
欠けているのは
私だけだと思っていた
もっとイビツな
茶碗の人もいた
みんな口には
出さないけれど
不自由な茶碗で
なんとかやっていた
しかも驚くべきは
欠けた茶碗の人ほど
人に対して
やさしかった
自分も不自由なのに
人のことを
心配して
手を差しのべていた
かろうじてご飯が
食べられればいいさ
そんなふうに
笑っていた
欠けた茶碗は
きっと本当は
金の茶碗なのであろう
目には見えないけれど
欠けた茶碗を持つ人は
きっと
天国で神さまに
頭をなでられるのであろう
よくがんばったね
粗末な茶碗を
金の茶碗と
代えてあげましょう と
そうであって欲しい
きっと
そうでなくてはならない
どうしても
欠けた茶碗を持つ人は
やさしさと引き換えに
今日も何を
思うのであろう
あくまでこの世では
みすぼらしい
小さな茶碗に
過ぎないけれど
(了)
欠けた茶碗 ヤマシタ アキヒロ @09063499480
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