56 タイムリミットの前に


「【デッドリィボルト】!」


 僕に接近するリンゼアが、スローモーションのような速度に見える。


 これなら、こっちの攻撃を当てるのは簡単だ。


 奴の動きの先を読み、必殺の魔法を撃ちこむ。


 しかも、その魔法は今までの僕とは桁違いに威力がアップしているらしく、


 るおおおおおおおおおおおおおおんっ。


 稲妻が竜のような形に変わり、放出された。


「幻獣に姿を変えた!? 魔王級魔法か!」


 リンゼアが叫んだ。


 魔王級魔法。


 そうだ、このゲームの魔法は竜や鳳凰などのモンスターを模した形の魔法を撃ってきたっけ。


 ビジュアルがすごく格好いいんだよな。


 まさか、僕がそれと同じ魔法を撃てるとは。


 もはや、これはただの【デッドリィボルト】じゃない。


 名づけるなら、そう――。


「【雷竜烈波らいりゅうれっぱ】――!」


 ゲーム内で魔王たちが使っていた雷撃と同じ名前だ。


「がはあっ……!」


 雷撃の竜に打ち据えられ、リンゼアは倒れた。


「はあ、はあ、はあ……し、信じられん魔力だ……人間ごときが――」


 全身から白煙を上げ、ボロボロになったリンゼアが、弱々しく立ち上がる。


 とはいえ、立ち上がっただけだ。


 こっちに向かって来ようともしないし、魔法を撃とうともしない。


 もはや死にかけ、といった様子だった。


「終わりだ、リンゼア」


 僕は冷然と告げた。


 が、正直言うと、魔力がかなり減衰しているのが分かる。


 さっきの雷撃をあと一発撃てるかどうか。


 たぶん、その一発を当てれば、いくら高位魔族リンゼアでも倒せるんじゃないだろうか。


 見た感じ、すでに瀕死だからね。


 ただし――こいつを外せば終わりだ。


 そう思うと、プレッシャーがすごい。


 とにかく、僕が消耗していることをリンゼアに気づかれないようにしないと……。


「――ふん」


 リンゼアが口の端を歪めるようにして笑った。


「消耗しているわけか。さっきの女と同じだな。しょせん人間には魔王の力は耐えられまい」

「っ……!」


 まずいぞ、いきなり気づかれた。


 なるべく平然とした態度を取っていたつもりだったけど――。


 僕の内部の魔力がどんどん減っているんだから、気づかれるのは時間の問題だったか……。


「つまり、時間を稼げば、お前の魔力は尽き、逆に俺は回復していく……くくく。すぐに形勢は逆転するだろうぜ……!」


 こうなったら、まだ魔力が残っているうちに、奴の必殺の一撃を叩きこむしかない。


 ただ、向こうも警戒心を高めているだろう。


 どうする――?


 僕の全身から温い汗が噴き出してくる。


 高位魔族リンゼアとの戦いは、いよいよ最終局面だ――。




****

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