54 契りし魔妃3(プリセラ視点)

 ざしゅううううううううっ……!


 プリセラの赤い剣はリンゼアの体を深々と切り裂いた。


「馬鹿な!? 人間が、高位魔族であるこの俺を……ここまで……!」

「外した――」


 プリセラは小さく舌打ちした。


 本当は一撃で首を刎ねるつもりだったのだ。


「はあっ、はあっ、はあっ……」


 息が急激に乱れてくる。


 この赤い剣を手にしているだけで、体力がごっそりと奪い取られるようだ。


 しかも、その消耗は刻々と――それこそ一秒ごとに激しくなる。


 長くは、持たない。


 だからこそ短期の決着をもくろんでいたのだ。


「まだまだ……っ!」


 プリセラは間髪入れずに次の攻撃に移った。


「――ふん」


 が、リンゼアは打ち合おうとせず、大きく距離を取る。


「俺としたことが冷静さを欠いていたか。お前の剣は、お前の体力を著しく消耗させる――考えてみれば、人間が魔王の力を長時間振るうことなど、できるはずもない。くくく……」

「ちいっ……」


 プリセラはなおも追いかけるが、リンゼアは空中を滑るように移動し――おそらく飛行魔法の一種だろう――プリセラを近づけさせない。


「どうした? お前が力尽きたら、こっちの反撃開始だぞ。くくく?」


 言って、リンゼアの両目が光を放った。


 ばちぃっ!


 プリセラの身に付けている騎士鎧が吹き飛び、アンダースーツだけになった。


 そのアンダースーツもあちこちが破れ、豊満な体が半ばあらわになってしまっている。


 煽情的な半裸を隠す余裕もなく、プリセラは赤い剣を構えたまま魔族をにらみつけた。


「変態……」

「くくく、人間のくせに中々そそる体をしているじゃないか。お前が力尽きたら、じっくりと楽しませてもらおうかな?」

「っ……!」

「惚れた男の死体の前で犯されるのも乙なものじゃないか? ええ?」

「外道が!」


 怒りが、体力の消耗を忘れさせた。


 力を振り絞って突進し、一気に距離を詰める。


 リンゼアが浮遊しながら後退するが、それを上回る速度で肉薄し、


「斬る!」


 渾身の力を込めて赤い剣を振り下ろした。


 ざんっ!


 リンゼアの首と胴が分かたれた。


「やった!」

「魔力で作った残像だ」


 喜んだ瞬間、背後に出現するリンゼア。


「残念だったな」

「あ……」

「今度は、冷静さを忘れたのはお前の方だったぞ」


 ぎゅるるるっ……!


 空中から出現した触手がプリセラの四肢を捕らえ、宙づりにした。


 赤い剣も取り落としてしまう。


 豊かな乳房や瑞々しい尻がほとんど見えてしまっている。


「くっ……」


 体中に魔族の視線がはい回るのを感じて、プリセラは恥辱で唇をかみしめた。


「さあ、犯してやるとするか……くくく。おっと、お前らも邪魔をしたければ、いつでも来い」


 背後を見回す。


 そこには生徒たちが震えながら、うずくまっている姿があった。


 誰も、抵抗する気力などない。


 当然だった。


 アウラだけは立ち向かうおうと呪文詠唱を始めるが、


「きゃあっ!}


 リンゼアが一にらみすると、無形の衝撃波で吹き飛ばされた。


「ふん、その女だけは中々の度胸だ。褒めてやる」


 言って、リンゼアがプリセラに向き直った。


「では、始めようか」


 彼女の胸元に手を伸ばす。


「い、嫌……」


 プリセラは涙を流しながらうめいた。


 そして、叫ぶ。


「助けて――あーくん! 助けてぇぇぇぇぇぇぇっ!」




 どくんっ!!!!




 地面に倒れていたアーロンの体が、突然大きく跳ね、動いた。


「えっ……!?」


 プリセラが驚いて、彼を見つめる。


「な、なんだ……!?」


 リンゼアも手を止め、彼を見つめる。


 アーロンの全身から淡い光が立ち上り、胸に空いた傷がすさまじい勢いで塞がっていく――。



****

〇『死亡ルート確定の悪役貴族 努力しない超天才魔術師に転生した俺、超絶努力で主人公すら瞬殺できる凶悪レベルになったので生き残れそう』

書籍版がKADOKAWA・エンターブレイン様から発売中です。

https://www.kadokawa.co.jp/product/322407001435/

こちらから販売ページに飛べますので、ぜひ! 新規エピソードも大量に加筆してます!


カクヨム版はこちら

https://kakuyomu.jp/works/16818093084659950544


〇読んでくださった方へのお願いm(_ _)m

☆☆☆をポチっと押して★★★にして応援していただけると、とても嬉しいです。

今後の執筆のモチベーションにもつながりますので、ぜひ応援よろしくお願いします~!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る