52 契りし魔妃1(プリセラ視点)



 SIDE プリセラ



「う……そ……」


 プリセラは呆然と目を見開いた。


 目の前でアーロンが魔族の光弾によって胸を貫かれ、倒れる光景を。


 ただ、呆然と見つめていた。


「嘘……よ……」


 みるみるうちに両目に涙がたまり、あふれる。


 最初は、淡い恋心だった。


 幼なじみとして過ごしてきた彼にこの学園で再会し、懐かしさと共に少しずつ慕情が増していった。


 アーロンが第一等級スキルを身に付け、それが無差別に女性と交わって力を増すスキルだという概要を知ったとき、その思いは嫉妬を交えて、一気に増した。


 アーロンと他の女が『そういう行為』をするのは嫌だ――。


 半ば衝動的に、プリセラは彼に体を許し、今の関係が始まった。


 おかげでアーロンは他の女に手を出すことは、ほとんどなかったはずだ。


 そうして彼と体を重ねる日々を過ごし、彼と一緒に過ごす時間が増えるにつれて、プリセラの慕情は積み重なっていく。


 やがてアイゼリックに唇を奪われそうになり、それをアーロンが助けてくれた事件を経て――プリセラが彼に抱いている想いは、確かな恋心だとはっきり自覚できた。


 そんな恋しい幼なじみが今、目の前で倒れている。


 ピクリとも動かない。


 どう見ても、即死だった。


 アーロンは、もういない。


 もう二度と話せない。

 もう二度と笑顔を向けてくれない。

 もう二度と抱いてもらえない。


 もう二度と――。


「う、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……っ!」


 プリセラは絶叫した。


 彼女の体から真紅の光が放たれる。


「これは――!?」




『プリセラ・ウィンゾードが【契りし魔妃エンゲージ】としての資格を満たしました』

『魔王の力の一部を行使可能です』

『行使しますか?』




 目の前に光り輝く文字の羅列が浮かび上がった。


「魔王の……力?」


 今、自分の中からあふれるこの熱がそうなのだろうか?


 いや、なんでもいい。


 今は何よりも力が欲しい。


 恋しいアーロンを殺した憎むべき魔族を討つために。


「使うよ、魔王の力」


 プリセラが『光る文字』に向かって言った。




『魔王の力を剣として生成します』




 ヴンッ!


 あふれる光が右手に集まると、長大な剣が生成された。


「魔王の力の――剣……!?」


 真紅の刀身に黄金の柄を備えた優美な剣。


 初めて目にするはずなのに、なぜか懐かしさを感じる剣。


 手にすると、右手によく馴染む。


 まるで体の一部であるかのように。


 重さもほとんど感じない。


「力を感じる……この剣から巨大な力を!」


 プリセラは赤い剣を構えた。


「この剣なら――いける!」


 本能的に確信する。


 この剣に宿る力は、高位魔族にすら対抗しうる、と。


「お、お前、その剣は……」


 一方のリンゼアは驚愕の表情を浮かべていた。


「その刀身に刻まれた紋様は、まさか!」


 この剣の出自に付いて何か知っているのだろうか?


「まさか、魔王エルメリアの――!?」


 リンゼアが叫んだ。




****

〇『死亡ルート確定の悪役貴族 努力しない超天才魔術師に転生した俺、超絶努力で主人公すら瞬殺できる凶悪レベルになったので生き残れそう』

書籍版がKADOKAWA・エンターブレイン様から発売中です。

https://www.kadokawa.co.jp/product/322407001435/

こちらから販売ページに飛べますので、ぜひ! 新規エピソードも大量に加筆してます!


カクヨム版はこちら

https://kakuyomu.jp/works/16818093084659950544


〇読んでくださった方へのお願いm(_ _)m

☆☆☆をポチっと押して★★★にして応援していただけると、とても嬉しいです。

今後の執筆のモチベーションにもつながりますので、ぜひ応援よろしくお願いします~!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る