48 ダンジョンの奥で出会うもの


「まあ、私とはまだ知り合ったばかりですし、まずはお互いのことを知るところから始めましょ?」


 ティナはそう言って、僕に投げキスをした。


「くそ、俺たちのティナに――」


《グレイランサー》の三人が僕をすごい目でにらんでいる。


 特にベルナルドは今にも憤死しそうなほど怒っている様子だ。


 うわぁ、めちゃくちゃ恨みを買ってしまったかも……。


 プリセラの件は彼女を守るためだから当然の行動をしただけだけど、ティナに関しては巻き添えみたいになっているなぁ……。


 仕方ない。


 頭の中をクエストのことに切り替えよう。


 昇格に向けて、大事なイベントだからね。




 僕らは引き続きダンジョン内を進んだ。


 途中、何度かモンスターに遭遇したけど、各パーティが持ち味を発揮し、苦戦らしい苦戦をすることなく下の階層へ、また下の階層へと進んでいく。


「時間だ。そろそろ折り返しにしよう。後は地上まで戻るだけだが、今回はかなり優秀だな」


 キリカ先生は満足げだった。


「だが、だからこそ油断するなよ。ここは学園が調査済みの『訓練用ダンジョン』だが、すべてを把握できているわけじゃない。未知のモンスターが潜んでいる可能性だって――」


 どがぁっ!


 突然、前方の床が爆裂した。


「……その未知のモンスターが現れたみたいだな」


 表情を引き締めるキリカ先生。


 前方には三つ目の巨人がいた。


 見たことのないタイプだ。


「地上に戻る前にあれを倒すとしようか」


 キリカ先生が言った。


「ただ、未知の相手だからな。私も加わるから――」


 と、言いかけたところで、


「はっ、いくぜ!」


《グレイランサー》のベルナルドたちがいきなり飛び出した。


 三人が連係し、巨人を槍で切り付けていく。


 そこにプリセラも混じった。


「はああああああああああああああっ!」


 さすがの剣の冴えを見せ、さらに巨人を後退させる。


「アーロン、アウラ! 今っ!」

「【デッドリィボルト】!」

「【アイシクルバレット」!」


 僕の雷撃とアウラの氷が巨人を直撃し、その全身を凍らせ、さらに粉々にして焼き尽くした。


「ひゅうっ」


 キリカ先生が口笛を吹いた。


「見事だ。私が出るまでもなかったか……今回はお前たち二組が昇格ポイント最大になる」

「えー? こいつらと同じ評価なのか?」

「俺たちの方が上だろ? なあ、延長戦とかねーの?」

「どうせなら決着付けてぇよ」


 と、《グレイランサー》の面々。


「お前らもどうだ? 俺らが勝ったら、その二人を俺たち全員で一晩自由にしていい、ってのは?」


 とんでもないことを提案したのはベルナルドだ。


「っ……!」


 僕は彼をにらんだ。


「プリセラもアウラも景品じゃないよ。そんな提案には乗れないし、そもそもクエストはこれで終わりでしょ」




「――いいや、クエストとやらはまだ続く」




 声が、した。





****

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