47 治癒魔術師ティナは小悪魔系?

「すごい……Bランクモンスターを一撃で倒すなんて……それにベルナルドさんでも歯が立たないなんて……素敵です……」


 ぼそっとつぶやく声が聞こえた。


「……ん?」


《グレイランサー》の女の子がこっちを見ている。


 ゆるくウェーブがかかった栗色のロングヘアに緑色の瞳、眼鏡をかけたおとなしそうな容貌の美少女だ。


「おい、ティナ。俺たち以外の男に色目使ってんじゃねーよ」


《グレイランサー》の男の一人が顔をしかめた。


 このパーティは槍使いの男三人に治癒魔術師の女一人という構成だ。


「つ、使ってません……」

「お前には俺たちがいるだろ?」

「俺たちの誰かを選べよ?」

「ったく、愛想振りまくくせに、キスも許してくれないんだからな、お前は……」


 と、三人が不満げに言った。


「ふふっ、私の初めては簡単には捧げませんよ?」


 ティナが微笑んだ。


 清楚な外見だけど、その笑顔はやけに小悪魔じみて見えた。


「このパーティのみなさんより、彼の方が強いみたいだから素敵ってつぶやいただけですよ?」


 言って、ティナはこちらにウインクをした。


「ど、どうも」

「冒険者学園二年、ティナ・アトリマールです。初めまして」

「僕も二年だ。アーロン・ゼラです……」


 ティナに挨拶をされ、僕も自己紹介を返した。


「ち、ちょっと、あーくんにモーションかけてない!?」


 すかさずといった感じでプリセラが割って入る。


「あら? この方はプリセラ先輩の彼氏ですか?」

「えっ!? い、いや、彼氏……までは行ってないけど……だって、あーくん告白してくれないし……」


 と、口ごもるプリセラ。


「では、私が彼に声をかけても問題ないですね。ふふ」

「確かに彼のスキルは『相手』をした女の能力も上げてくれるからね。声をかけたくなる気持ちは分かるわ」


 今度はアウラが割って入った。


「あら? 私は彼のスキル目当てだなんて言ってませんよ? ただアーロンくんが素敵だな、って思って、素直に伝えただけです」

「素直? そうは見えないけど?」

「ふふふ……もしかしてヤキモチですか?」

「まさか。私が彼と一緒にいる理由こそ打算だもの」


 ティナの言葉にアウラが言い返す。


「で、男の人って女を『相手』にできる回数にも限度があるでしょ? 彼の『相手』が増えると、それだけ私のパワーアップの機会が減るというわけ」

「どこまでも打算だ、と?」

「そういうこと。だから彼に近づく女子は見過ごせないのよ」


 アウラが不敵に笑う。


「……なかなか手ごわそうな女子がついてますね、彼」

「そうよ。近づくつもりなら気を付けてね」


 うわぁ、なんか二人の間で火花が散ってる……。





****

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