46 僕の魔法は着実に威力を増している


「そこ、私語は慎め……とまでは言わないが、ほどほどにな」


 キリカ先生が言った。


「多少の雑談は緊張をほぐす意味でも有効だ。ただし、会話に気を取られて、クエストがおろそかになっては本末転倒。バランスに気を配れ」

「了解です」


 頭ごなしに怒るのではなく、的確にアドバイスをくれる――こういう教官だとやりやすい。


「――止まれ。何かいるぞ」


《グレイランサー》の一人が言った。


 ちなみにベルナルドとは別の男子生徒だ。


 そのベルナルドは、さっきから暗い顔をしていた。


 僕に負けたのが、よっぽどショックだったんだろうか。


 まあ、一流の戦士である彼が、本職が魔術師の僕に完封されたんだもんな。


 ベルナルドってプライド高そうだし……。


「Bランクモンスター【アーマードライノ】だ。気を抜くなよ!」


 と、《グレイランサー》の名も知らぬ男子生徒が警告した。


【アーマードライノ】……一言でいえば、鎧のような装甲に覆われた巨大なサイ型のモンスターだ。


 以前に戦った【アーマードライガー】と同格で、似たタイプである。


 物理攻撃が通じにくく、魔法攻撃の方が有効だ。


「俺たちが前衛で引きつけるから、魔法を使える者が攻撃してくれ」


 さすがはAランクパーティ。


 瞬時に的確な判断をする。


 僕だったら、まずひるんでしまって、気持ちを立て直すのに多少の時間がかかったかもしれない。


「アウラ、僕らも」

「ええ」

「あーあ……あたしは蚊帳の外か」


 僕とアウラが目配せをすると、プリセラが拗ねたような顔をした。


「ここは魔術師組に任せてよ」


 僕がにっこり笑った。


「【デッドリィボルト】!」


 雷撃系の中級魔法を放つ。


 ばりばりばりっ!


 稲妻の直撃を受けた【アーマードライノ】はビクビクと体を震わせた後、その場に倒れた。


「あ、あれ……? 一発で――」


 以前にAランクモンスターと戦った時、この魔法を連発して倒したことがあるけど……。


 いくらそれより格下のBランクモンスターとはいえ、一発で倒せるほどに威力が上がっているとは――。


「す、すごい! あーくん! 素敵!」


 と、プリセラが抱き着いてきた。


「わわっ、プリセラ――」

「かっこよかったよ」


 ちゅっ。


 さすがにみんなの目があるからか、頬にキスしてくるプリセラ。


 いや、みんなの目があってもキスはするんだ……。


「私の出る幕なしね……」


 アウラがつぶやき、


 ちゅっ。


 プリセラとは反対側の頬にキスをした。


「あー! ちょっと、何してるのよ!」

「先輩だってキスしたじゃないですか」

「あたしはいいの!」

「なんですか、その理屈!」


 なんで、すぐ修羅場みたいになるの……?





****

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