45 僕の現在地は、思ったよりも高い

 勝ってしまった。


 Aランクパーティのリーダーを務める戦士に。


 確かにプリセラやアウラとの日々で、一日に複数回、彼女たちに二人と交わったりもして、それだけステータスが上がったとは思うけど――。


 思った以上に、僕の能力は上がっているということか。


 この先、もっと回数を重ねていけば、僕はどこまで強くなれるんだろう。


 ワクワク感と同時に、多少の恐ろしさも感じる。


 強くなっていくスピードが、少し異常な気もしてきたのだ。


 一度の性行為でステータス+1というのは、微笑なパワーアップだと思っていた。


 けれど、積み重ねというのは馬鹿にならない。


 それに――『+1』という数値は、僕が思っているより大きいものなのかもしれない。


 何せ僕以外の数値は不明なわけだからね。


「……くそぉっ!」


 リーダーの男子生徒は悔しげに吐き捨て、背を向けた。


 これで戦いは終わりだ。


「よし、一段落したな。じゃあクエストの続きをしようか」


 と、それを見計らったようにキリカ先生が言った。


 かなり激しめのバトル展開だったのに『一段落したな』で済ませる辺りが、この人の性格を表している気がする。


 ゲーム内でも結構豪快で切符のいいお姉さんキャラだったからなぁ。


「血の気の多いお前らには、今みたいないざこざも時には必要だ。アーロン、やるじゃないか。ベルナルド、もう少し相手を見てケンカを売ることも覚えろ」


 今のも――キリカ先生からしたら『授業』の一環だったんだろうか。


「少々荒っぽい展開もあったが、これより昇格クエストを開始する。お前ら、気を引き締めろよ」


 と、キリカ先生。


 そう、いよいよだ。


 絶対に昇格ポイントをたくさん取って、高ランクパーティになるための足掛かりにしなければ――。


 僕は、燃えていた。




 僕らはダンジョン内を進む。


 五組のパーティが一列になり、キリカ先生は先頭にいたり、最後尾まで行ったり……とチョコチョコ動いていた。


 先頭は、さっきケンカしたベルナルドもいる《グレイランサー》だ。


 やっぱり戦士系の多いパーティが前衛になるよね。


 僕ら《ラストブレイカー》は三番目……中央に位置している。


 パーティ編成が魔術師二人(僕とアウラ)、剣士一人(プリセラ)だから、主に魔法攻撃で、時には剣で戦ってくれ、ということだろう。


「……正直、アイゼリックと一緒の組に入らなくてよかったよ。気まずいし」


 僕はプリセラとアウラに苦笑交じりに言った。


「だよね。あたしもこの間までアイゼリックと一緒のパーティにいたけど、あんなふうに思われてたなんて知らなかった」

「純潔を奪った、とか絶叫して――ちょっと不気味でした」


 プリセラとアウラがそれぞれの感想を告げる。


「あいつ、あたしに無理やりキスしようとしたのよ」


 と、プリセラ。


「えっ……」

「あ、未遂よ、未遂! 唇なんて一ミリも触れさせてないから! あーくんが守ってくれたし!」


 プリセラがにっこり笑って僕を見た。


 この様子だと、この間のショックは払拭できたんだろうか?


 いや、あれだけ泣いてたんだし、完全にショックが消えたとは思えない。


 今も心の傷になってるのかもしれない。


 僕が、ちゃんと支えなければ――。




****

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