30 魔法と剣の両立――それが僕の戦闘スタイル
僕はマルグリット先生と一緒に鍛錬場にやって来た。
「構えなさい」
と、模擬戦用の剣を構える先生。
「えっ、先生と模擬戦をするんですか?」
「君の場合、基礎的な身体能力は高いんだし、あとは技術と実戦経験よ」
マルグリット先生が言った。
「実戦の中で技術を培うのが、おそらく一番手っ取り早いでしょうね。これは君の基礎能力が高いからこそよ」
本来の僕は人並み以下の運動能力しかなかった。
【アスモデウス】でコツコツとステータスを上げたおかげで、今では平均よりある程度上の身体能力を身に付けているわけだけど――。
『基礎能力が高い』と教官であるマルグリット先生から言われると、なんだか誇らしい気持ちになれた。
「君は魔導師だから、今までは近接戦闘なんてあまり経験していないでしょう? 君に何よりも不足しているのは実戦経験。それを今から私が補うわ」
「……よろしくお願いします」
僕はゴクリと息を飲み、剣を取った。
構える……が、ぎこちない構えになってしまう。
「格好は気にしないで」
マルグリット先生が微笑んだ。
「じゃあ、私が軽く打ち込むから、アーロンくんはそれに合わせて。防御や回避でもいいし、反撃してもいい。私から一本取ろうとしてもいいし、ひたすら逃げに徹してもいい。実戦だと思って戦いなさい」
「は、はい」
僕は緊張気味にうなずいた。
僕のクラスは魔導師だから、こんなふうに剣で一対一で戦うっていうレッスンは初めてだ。
「最初から上手くできる人なんていないわ。気楽にね。私も手加減して打ちこむから」
「――よろしくお願いします」
僕は集中力を高めた。
「いくわよ!」
マルグリット先生が剣を上段に構え、向かってくる。
緩やかだけど隙の無い動き。
たとえるなら流れる水、あるいは華麗に舞う風だろうか。
僕はその動きをジッと見つめる。
なにしろ剣術に関しては素人だから、半端に予測しても仕方がない。
とりあえずは――反射神経任せで対応する。
「はあっ」
軽い気合いとともに、マルグリット先生が剣を繰り出した。
「!」
見える――。
手加減してくれているからなのか、それとも僕の動体視力がそれだけアップしているからなのか。
鋭い斬撃が、スローモーションのようによく見えた。
僕は第一撃を避けた。
すかさず剣が予想外の軌道を描きながら、僕を追撃する。
「くっ……」
これも反射神経だけで避ける。
が、斬撃のスピードが速くて、避ける際に体勢を崩してしまった。
そこに放たれる第三撃。
体勢が崩れている僕は避けきれない。
「このっ……!」
苦し紛れに剣を振り回した。
マルグリット先生はそれを易々と避けて、そのまま僕の喉元に剣先を――。
「おおおおっ……!」
その瞬間,体が半ば勝手に動き、マルグリット先生の剣を避ける。
「えっ!?」
今度はマルグリット先生の体勢が崩れている!
僕はその間になんとか体勢を整え、突進した。
夢中で剣を繰り出し、彼女の胸元に剣先を突きつけた。
「あ……」
僕とマルグリット先生、両方から驚きの声がもれる。
勝っちゃった……。
****
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