28 僕とプリセラ、アウラの関係についての現状整理

 プリセラとアウラは僕の前でバチバチと視線の火花を散らしている。


 そしてその合間に僕をチラチラと見ている。


 はたから見ると、二人の美少女が僕を奪い合っているように見えるかもしれない。


 では果たして――僕はこの二人からモテているのか?


 あらためて、彼女たちとの関係を頭の中で整理してみようと思う。


 まずプリセラだ。


 彼女は【スキル鑑定】を持っているため、僕の【アスモデウス】が『異性とセックスすることでステータスアップやスキル学習をする能力』という効果を見抜いてしまった。


 そして、僕が【アスモデウス】を使って不特定多数の女子と関係を持つかもしれない、と危惧をした。


 だから、不特定多数じゃなく自分だけで僕の『行為』を受け止める、と自らの体を張ることを提案したのだ。


 僕に女をとっかえひっかえするような男になってほしくない、という気持ちだったんだろう。


 プリセラは昔から優しかったから、僕のために体を張ることを選択した。


 僕はそんな彼女の熱情に打たれ、同時に彼女の魅力に惹かれたこともあり、肉体関係を持った。


 そして、それ以来、何度となく体を重ねているわけだ。


 だから、僕とプリセラの関係は――一言で言うなら彼女の『献身』だ。


 次にアウラ。


 彼女の弟はモンスターによって呪いを受けて昏睡状態だという。


 その呪いを解くためには、最高レベルの術師が必要であり、依頼料や術師を頼むコネを作るためには高ランク冒険者になるのが一番手っ取り早い――ということで、アウラは強さを求めている。


 だから彼女は僕に迫ってきた。


 他の女子たちを僕の前から追いやったプリセラも、さすがにアウラの事情を聞いて無下にはできなかったみたいだ。


 そして、それは僕も同じこと。


 彼女の境遇への同情と、何とか協力したいという思いもあって、僕は彼女を抱いた。


 まあ、正直に言えば、それらの思い以外にも、純粋にアウラの魅力に惹かれたところはある。


 プリセラに負けず劣らずの美少女だしね、アウラって。


 一方のアウラは、プリセラみたいに『僕に他の女子を近づけない』という気持ちはない。


 彼女が、僕自身になんらかの思い入れがあるわけじゃないだろうし。


 僕との関係は手っ取り早く強くなるための『打算』というわけだ。


 そう、プリセラにしてもアウラにしても、僕に対して純粋な恋愛感情を抱いているわけじゃない。


「まあ、ケンカはそこまでにしようよ。プリセラは『僕が不特定多数とエッチなことをしない』っていう目的で一緒にいるわけだし、その目的は達してるでしょ? アウラ一人なら『不特定多数』とは言えないよ」

「あーくん……?」

「アウラだって必要なのは僕のスキルでしょ? さすがに毎日とはいかないけど、それなりの回数の、その『行為』をして君だって結構強くなってるはずだよ?」

「アーロン……?」

「だから二人の目的は達している。僕らは別に恋人同士じゃないんだし、こういう関係でいいんじゃない? いがみ合う必要なんて全くないよ」

「恋人同士じゃない……?」

「まあ、そうよね……確かにね……」


 プリセラとアウラの表情が一気にこわばった。


 あ、あれ?

 僕を見る目が、やけに冷たいような――。


 僕、何か失言したのかな?


 そんなはずない、よね……?


「……もうちょっと、あたしたちの魅力を分からせた方がよさそうね」

「……その方が何かと都合がいいですね」


 プリセラとアウラが何やら囁き合った。


「えっ? えっ?」

「あーくん!」

「アーロン!」


 同時に二人が僕に詰め寄る。


「「抱いて!」」


 これまた同時に叫んだ。


「えっ、でも二人とも鍛錬があるんじゃ――」

「ステータスが+1されるんだから、これも立派な訓練!」

「そうよ! 効率のいい基礎訓練じゃない!」

「え、えっと……」

「さっさとあたしを抱いて!」

「さっさと私を抱いて!」


 二人から同時に迫られ、僕は首を縦に振るしかなかった。




****

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