14 二人の美少女に挟まれて修羅場

「じゃあ、君は何? あーくんの彼女じゃないよね?」

「私は別に彼の恋人になりに来たわけじゃありません。彼の力の恩恵を受けたいだけです」


 と、アウラ。


「もちろん、私も彼に対価を払います。彼の望むものなら、なんでも。つまりこれは――取り引きです」

「その……さっき言っていたアウラの『譲れない事情』って?」


 彼女の執念にも似た眼光が気になり、僕はついたずねてしまった。


「私は――」


 僕をジッと見つめるアウラ。


「弟を救いたいの」

「えっ?」

「とあるモンスターによって呪いを受け、昏睡状態の弟を……解呪のためには最高レベルの術師に依頼する必要があるのよ」


 言って、アウラは空を見上げた。


 遠い目をしながら、続きを語る。


「依頼料は莫大なものになるし、そのレベルの術師に頼むためには、ある程度のコネもいる――となると、この学園で上位の成績を上げ、最速で高ランク冒険者になるしかない」

「それが――君が力を求める理由?」

「そうよ」


 アウラは力強くうなずいた。


「そのためなら、あなたに純潔を捧げても構わない。もちろん、あなたが受け入れてくれるなら、という前提条件が付くけどね」

「……僕が断った場合は?」

「違う方法を探すだけね。私はどんな手を使ってでも、必ず弟を救う手段を得てみせる」


 アウラの言葉がさらに力強く響いた。


 強い――何よりも強い意志を感じさせる言葉だった。


「そのために私自身がどうなろうと、どんなふうに堕ちても、汚れても一向にかまわない」


 やっぱり意志は固いようだ。


 少なくとも僕に群がってきた他の女子生徒たちとは、明らかに様子が違う――。


「だけど……アーロンくんには迷いがあるみたいね。私のこと……抱いてみたくない?」


 ジッと見つめられ、僕は思わず視線をそらしてしまった。


「ほら、見なさい。あーくんは君なんて相手にしないの。彼が抱いてくれるのは、あたしだけ。うふふふ」


 プリセラが勝ち誇ったようにアウラを見る。


 アウラはそんなプリセラをにらんだ。


「負けませんよ、先輩」


 その視線は火花を散らすほどに熱く、激しい。


「とはいえ――今日は邪魔が入ったし、また出直すわね。あなたが私を求めてくれるように、もっと女として磨きをかけてみるわ」


 言って、アウラは去っていった。


 絶対諦めてないよなぁ、あれって……。


 僕は内心でため息をつく。


 きっと近いうちにまた現れるはずだ。




「はあ……とりあえず帰ったみたいね」


 プリセラが大きく息をついた。


「あんな可愛い子があーくんに迫ってくると、さすがに焦るね。まあ、彼女を拒絶してくれてよかったけど」

「拒絶っていうか、その……」


 僕はプリセラから視線を逸らす。


「彼女の事情を聞くと、むげに断る気にもなれないよ……」

「弟を救いたい、って言ってたよね、あの子……」


 言って、プリセラは拗ねたように口を尖らせた。


「むー……あんな話を聞いちゃうと、おいそれと断れないじゃない」

「いや、断るか受け入れるかを決めるのは僕なんだけど……」

「あたしは君の保護者でしょ」

「保護者ではない、と思う」


 僕は苦笑した。


「とりあえず気持ちを整理してから、彼女に返事をするよ」


 正直、僕としてはアウラに力を貸したいと思っている。


 そのためには僕と彼女が……その、肉体関係を持つことになるんだけど。


 ただ、それは彼女の望みを叶えるためなんだ。


 うん、まあ、あれだけの美少女とエッチなことをできるのが嬉しくないのか、って言えば、やっぱり嬉しいわけだけれど。


 でも、エロ心だけでOKしたいわけじゃない。


 それは本音だ。

 と、


「ねえ、今日も一緒にいていい?」


 ふいにプリセラがたずねた。


「君の部屋で過ごしたいの」

「えっ」

「……駄目?」


 上目遣いに僕を見上げるプリセラ。


 こういう表情が本当に可愛いんだよな。


 断りづらくなってしまう。


「変なことしない……?」

「それって普通、女側の台詞じゃない?」

「だってさ……」

「しないしない……と思う、かも、たぶん、おそらく」

「なんか、あやふやだなぁ……」


 二人っきりになったら絶対迫って来るでしょ、プリセラ……。


「じゃあ、あーくんはあたしとシたくないの?」


 プリセラがたずねる。


「い、いや、シたくないかと言われると……まあ」


 僕だって健全な男子学生だ。


 しかも相手はとびっきりの美少女だし、行為をしたいかしたくないかで問われたら――まあ、したいけどさ。


 でも、恋人同士でもないのに、そういうことをするのは……という葛藤も当然ある。


「これはステータスアップするための『修行』でしょ」


 プリセラが強調するように言った。


「で、あたしはあーくんに変な虫がつかないように発散させてあげるって目的を達成できるし、あーくんだって気持ちいい思いができるじゃない?」

「まあ、確かに気持ちいいけど……って、言い方!」

「ふふ、あたしたちがするのはあくまでも修行よ、修行。エッチなことすることで強くなれるんだからいいじゃない。ね?」

「うーん……」


 まあ、お手軽に強くなれる方法ではある。


 言いながら、僕はチラリとプリセラに視線を走らせる。


 制服の上からでも分かる豊かな胸の盛り上がり――。


「ね?」


 プリセラがさらにたずねてくる。


 僕はゴクリと喉を鳴らしつつ、うなずいたのだった。




****

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