13 第二のヒロイン・アウラ登場

「ふう……なんとか逃げられた……」


 僕は女子生徒たちが押し合いをしている隙をつき、なんとか教室から脱出した。


 そのまま屋上に移動した。


 なんだか息が詰まる気がして、外の空気を吸いたかったのだ。

 と、


「あの、アーロンくん……よね?」


 屋上に入ったところに、一人の女子生徒が立っていた。


 肩の辺りでそろえた紫色の髪が風に揺れている。


 同じく紫色の瞳には、意志の強そうな光が宿っていた。


 明るく快活そうな印象を与える美少女だ。


 リボンの色を見ると、僕と同じ二年生のようだった。


「そうだけど、君は――」

「私は1組のアウラ・リーリ。アーロンくんとお話したいことがあって来たのよ」


 彼女が名乗った。


「あ、初対面なのに不躾ぶしつけでごめんなさい。私、ちょっと事情があって――強くなりたいのよ」

「強く……」


 それって、つまり僕の【アスモデウス】絡みの話だろうか?


 きっと、そうだろうな……。


「たぶん、あなたが今考えたとおりだわ。単刀直入に言うと――私はあなたのスキルの恩恵を受けたいの」


 アウラが言った。


「悪いけど、さっきから色んな女の子が同じように迫ってきて、ちょっと疲れてるんだ。希望に沿いたいとは思うけど、人数が多すぎるし、それに――」


 スキルを使うためのトリガーは『性交渉』である。


 そう簡単にホイホイできることじゃない。


 まあ、プリセラやマルグリット先生とはしちゃったわけだけど……。


「ただでとは言わないわ。あなたの望む通りのことをするから」


 アウラは退かない。


「私にも……譲れない事情があるのよ。だから――」


 言って、彼女は胸元のリボンに手をかけた。


「えっ、アウラ?」


 しゅるり、しゅるり……。


 リボンを解き、いきなり制服を脱ぎ始める。


「ち、ちょちょちょちょ、ちょっと待ってーっ!?」

「くっ……全部脱ぐのは……でも……うう……」


 下着姿になった彼女は、さらにためらいを見せつつも、すべてを取り去って全裸になった。


「う、うわっ……」


 まぶしいくらいに白い肌。


 小ぶりだけど形よく膨らんだ胸、凹凸は控えめながら、艶めかしい丸みで構成された体のライン。


 グラビアアイドル然としたグラマーなプリセラの体型とは違うけど、こっちはこっちで色っぽい――。


 ……って、思わずガン見してしまった。


 だけど、あまりにも綺麗な裸体に目が離せない。


「お願い、私を強くするために……私を抱いてほしいの!」


 言うなり、裸のままアウラは土下座をした。


 全裸土下座。


 いきなりの展開に僕は完全にフリーズしている。


 ど、どうしよう……。


 どうリアクションすればいいのか分からないよ、僕……。


「ねえ、駄目かしら……?」


 土下座したまま、アウラが顔を上げた。


「えっ、固まってる……? もしかしてマニアックすぎた?」

「いや、マニアとかそういう問題を言っているわけじゃなく」

「やっぱりマニア路線より正統派路線よね……よし!」


 アウラはいきなり立ち上がると、全裸で詰め寄ってきた。


 興奮しているのか、顔が赤いし、鼻息も荒い。


 このまま押し倒されそうな勢いだ。


「えいっ!」

「うわっ!?」


 と思ったら、本当に押し倒された!


 裸の美少女が僕にぴったり体を重ね、のしかかっている。


 柔らかくて、温かくて。


 ここまでされて欲望を感じないはずがない。


 僕の下半身には急速に『熱』が集まっていった。


「ねえ、このまま――」

「お、屋上では、さすがにまずいよ……」


 言いながら、彼女と『最後までする』こと自体には心理的な抵抗を感じなくなっている自分に気づく。


 もし、このまま部屋に移動したら、きっと僕は――彼女と交わるだろう。


 そんな予感がした。

 と、


「ちょっと待ちなさーーーーーいっ! あーくんに何してるのよ!」


 屋上の入り口辺りから怒りのにじんだ声が聞こえた。


 この声は――。


 ギクリとして振り返ると、案の定そこにはプリセラの姿があった。


「あーくん?」

「彼のことよ。あたしは彼の幼なじみで暫定彼女なの」

「暫定彼女……」

「だって、もう『そういう』関係だし」


 言いながら、プリセラが僕の腕に自分の腕を絡める。


「ふうん?」


 が、アウラも全然退かない。


「あくまでも暫定なんですよね、先輩?」

「あ?」


 プリセラがめちゃくちゃ怖い顔になった。


 こんなしゃべり方するの、初めて見たんだけど……。


 なんだか、修羅場の予感がするぞ――。



****

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