異世界攻略RTA
憑弥山イタク
最終話 異世界転生者 大勝利! 希望の明日へレッツ・ゴーッ!!
俺はRTA走者の
異世界を題材としたアニメやラノベは既に履修済み。女神からの転生特典とやらでスキルも授かった。
よってこれより、俺は、異世界攻略RTAを行う。
RTAスタートの合図は、転生手続き完了後、異世界の地に降り立った瞬間である。
そして今、俺の眼前には、舗装されていない異世界の大地が広がる。僅かに宙へ浮く俺の装いは、既に死亡時点のものではなく、異世界攻略RTA用に誂えたものとなっている。とは言え安っぽい甲冑でも、或いは絢爛な鎧でもない。
俺が纏うのは、黒いトレンチコート。それも、俺自身に対して悪影響を及ぼす類の魔法を全て無力化する、超・特別製である。
あと僅かで着地。その時、上空に巨大な赤い数字が羅列された。数字は全てゼロで、全てがデジタル時計のような形をしている。数字が2つ続く事に「:」があり、合計8桁。「:」で区切られた8桁の数字は、明らかに時計を再現していた。
「異世界攻略……スタート!」
着地した俺の宣言と共に、上空の時計が動き始めた。
「
女神より与えられた俺のスキル。それは、生前の世界に実在していたものをこの世界に出現させる能力、
だが、俺はこの異世界攻略RTAで、100万本の剣は召喚しない。
俺が召喚するのは……!
「B29!」
上空から響く機械の羽音が、俺を除くこの世の生命全てに恐怖を与えた。どんな巨大な蝿よりも重く、どんな巨大な蚊よりも不快な羽音の正体は、俺の召喚した、B29爆撃機の群れである。
異世界攻略RTAを完走する為の最適解。然り、存在しない文明による圧倒的火力を用いた完全制圧。使い慣れない魔法を用いるよりも、幾つもの命を奪ってきた実例を用いた方が効率的なのだ。
「貴様! そこで何をしている!」
羽音が響く空の下で、俺はB29の向かう先を見つめる。そんな俺に槍を向ける者が数人。俺はひとまず、敵意がないことをアピールすべく、顔に笑みを塗って槍持ちと向き合った。
「アレを操ってるのさ」
笑顔のまま、俺はB29に指先を向ける。すると槍持ち達は一斉にどよめき、隠しきれない困惑に眉を顰めた。
「今日中に、あの国に居る連中を虐殺する。生き残った個体が居れば、隷属として繁栄させよう」
異世界攻略RTAの完走条件は、3つある。
1つは敵対する「人間」と「魔族」の和平締結。
1つは敵対側の絶滅。
最後の1つは、敵対組織の隷属化を前衛とした降伏の受諾。
選択肢は3つあるのだが、俺の中には既に、和平締結という選択肢は無くなっている。目指すべきは、絶滅、或いは隷属化。
これより、俺の召喚したB29の群れは、敵対側に空襲を仕掛ける。テレビもラジオも存在しないこの世界に於ける、最初にして最後の大空襲である。
空襲が終わった後の生き残り個体数次第で、絶滅か隷属化を決める。少なくとも現時点では、俺のプランは揺るがないだろう。
「貴様……何者だ? 人間じゃないのか?」
訝しげに尋ねる槍持ち。そんな槍持ちを嘲笑うように、俺は満面の笑みで応えた。
「人間として生まれたが、人間は、俺の敵だ」
俺の選んだプランは、人間の繁栄ではない。
魔族の一員となり、人間という種族の絶滅、或いは隷属化を実現させるプランである。
「さあ、祭りの始まりだぜ……!」
どんな作品よりも早く、この世界の攻略を実現できそうである。焼夷弾の落ちる音を微かに聞き取りながら、俺は人間の死滅を煽るように両腕を左右に伸ばした。
「人間、滅びろ!」
大空襲により人間が絶滅する、即ち、異世界攻略RTAが完走するまで……のこり、15分未満。
異世界攻略RTA 憑弥山イタク @Itaku_Tsukimiyama
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