番外編 波川さんの二十歳記念日

「それでは、海莉さんの20歳の誕生日を祝して…」


「「「「「「乾杯!」」」」」」


今日は喫茶「ジャスミン」の近くにあるレストランで、海莉さんが20歳の誕生日を迎えたお祝いをしている。ジャスミンでは従業員の誰かの誕生日には、夜営業をお休みにして、こうやってみんなでお祝いしているのだ。


そのなかでも今日は今まで以上に大きな、海莉さんの20歳の記念日だ。20歳になると色々なことが解禁される。お酒にタバコにギャンブルに…。様々な楽しいことが待っている。

今日は海莉さんを含めて成人しているメンバーはお酒を飲んでいて、まだ未成年の俺と真奈美さんはソフトドリンクだ。


「プハァ!お酒って美味しいですねぇ!今飲んでるカシスオレンジみたいに甘いものもあるけど、アルコールが入っててソフトドリンクとは違った印象がして!」


人生で初めてのお酒を飲んで、ソフトドリンクとは違う感覚に海莉さんはすごく満足そうにしている。


「ハハハ、それは良かったよ。だけど、飲みすぎて飲まれないようにしてね」


「うん。特に若い子でお酒を初めて飲む人とかは、自分の体の許容量が分かってないことが多いんだ。それによる急性アルコール中毒を防ぐために、ちゃんと控えめ控えめで考えながら飲むんだよ」


朋子さんと厳さん─ジャスミンの中でも人生経験の長い二人がお酒の怖さを海莉さんに教えている。実際、お酒に弱い人はとことん弱いので、自分の許容量を見極めることはとても大切だと思う。


(父さんがお酒にめちゃくちゃ弱いから、もしかしたら俺もめちゃくちゃ弱いのかも)


大人組の様子を見ながら、そんなことを思うのだった。

***********************

「ふうぇぇぇぇぇ。頭がフワフワするぅぅぅ」


「あー、言わんこっちゃ無い」


「これでも抑えてた方だと思うよ。海莉さんはお酒に弱い。まあ今日はそのことが分かっただけ良しと思えばいいんじゃ無いかな?」


一時間ぐらい経ったころ、海莉さんはカシスオレンジ1杯とほ◯よいを2杯ほど飲んでいたのだが、それでも酔っ払ってしまったのか、今は朋子さんと厳さんが介抱してあげている。あの量であれだけ酔っ払うということは、俺の父さんほどではないがかなりお酒に弱いんだろう。今日こうやって目の前でお酒で酔いが回って倒れているのを見ると、お酒の怖さを否が応でも理解でき、俺も将来気をつけないとと思った。


「ねえセンパイ?お酒って美味しいんですかね?」


突然、隣の席の真奈美が聞いてきた。美味しいかって聞かれてももちろん飲んだことがないので答えられない。

「それは俺も分からない。まだ未成年だからお酒も飲んだことないし。真奈美さんは将来的に飲んでみたいとかは思うの?」

「うーん。飲んでみたいとは思いますね。なんだか大人って感じがしますし」

「そっか。俺も飲んでみたいとは思うけど、父さんがお酒に弱すぎるからもしかしたら俺も弱いのかなって思っちゃって、なかなか手を出せない気がするんだ」

俺は父さんほどお酒には弱くないと信じたい。ちょうど父さんと海莉さんの間ぐらいになってくれたら、ものすごく嬉しい。

「まあそんなことはさておき、海莉さん起こしますか。おーい海莉さーん、起きてくださーい。ここで寝ちゃダメですよー」

海莉さんの耳元で割と大きめな声を出すと、海莉さんは飛び起きた。

「うわぁ!何、何!ビックリしたんだけど!」

「ここで寝てる方が悪い。お酒は飲んでも飲まれるなって言葉はよく聞くでしょうに」

「う、ごめんなさい」

そう謝ってもらったことで、俺は怒りを引っ込めて元の席に戻ってため息を吐いた。そして内心、ニヤリとした。

(この件、海莉さんをいじるのに使えそうだな)

そうして食事の時間が終わるまで、俺はずっと悪巧みに没頭するのだった。

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好きな子に告白して振られたら、振ってきた子含め何人もの女子に追われてます 夕凪 @ys200758

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