【解説】無言の抗議

 読者の皆様は、この物語の語り部が誰であったのか、気付くことに成功しただろうか。


 こんな書き出しをする以上、この物語を語っていたのが教師ではないということはご理解いただけただろう。

 さて、では語っていたのは誰か。誰一人として〝私〟の声が届かず、姿形も見えない存在。――つまり幽霊だったのだ。


 地の文の主語をこれでもかというくらい省くことで、教師が語っているようにこの作品は作られている。

 当然、ヒントはたくさん隠されている。特にラストシーンでむくりと起き上がる描写は、間違いなく人間には不可能。


 宮本と西村に接近するシーンも、近付いた時点でどちらかが気付いてもおかしくないはずなのに、何の反応も示さなかったという点ももちろん伏線である。


 このシーンでは主人公「幽霊」が西村に憑依し、宮本を屋上から突き落とし、西村に憑依したまま飛び降りた結果、本文のような描写になっている。


 幽霊とともに教室を出ていった教師がどうなったかは作者である私も考えては居ない。おそらく職員室にでも戻ったか、他の教員に見つからないような場所でサボっているかだろう。


 この学校では、いつまで〝私〟による無言の抗議が続くのだろうか……。






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【くすんだマネキンの腕だった。】

(全一話・約九六〇〇文字)

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