最終話 これからも本当の恋人として付き合って行こうね♡
「はい、これね。チョコバナナパフェ、特大サイズ」
二人のテーブルに、ファミレス店員として働いている
デザートというわりには大きすぎて、すでにお腹が満たされている和樹は、テーブル前の席に座ったまま無言で拒絶していたのだ。
そのチョコバナナパフェは、通常サイズよりも五段階ほど大きいと思う。
「ありがと」
玲奈は持ってきてくれたウェイトレス姿の梨花にお礼を告げていた。
「稲葉さんって、結構な大食いなのかしらね?」
「大食い? そんなでもないわ。ご飯とデザートは別腹なんですよ。知らないの?」
「へえ、そうなのね。というか、その栄養はどこに行くのかしらね?」
「普通にお腹の方にだけど」
「へえぇ、でも、お腹よりも胸の方が大きいような?」
「なに? 別にいいでしょ。というか、私、今は和樹と一緒に過ごしたいんだけど。邪魔しないでくれる?」
二人の間で火花が散っていたのだ。
梨花は、和樹と玲奈が夏休み中に一緒にデートをしていた事が許せないのだろう。
梨花は
数日前、
「業務が終わったら、元の場所に戻ったらどうかしら? いつまでもいられると食べづらいんだけど」
玲奈はパフェを食べるためのスプーンを手に持ち、梨花の方をチラッと横目で見やっていた。
「そうよね。でも、今の時間帯は店内が空いてますし。お客様に何かあった時用のために、私、ここにいるんですけどね」
梨花も対抗するかのように適当な理由をつけて、その場から動こうとはしなかった。
「今のところ問題はないわ」
「でも、これから何かがあるかもしれないでしょ」
玲奈も梨花も、一向に引こうとはしない。
店内での拮抗状態が続いていたのだ。
「二人とも、これくらいにしないと色々と問題になるって」
和樹が二人を仲裁するように割り込んでいく。
「というか、あんたがちゃんとした事を言わないからでしょ」
梨花からジロッと見られる。
「そうね、この状況は、和樹君に決めてもらいましょうか」
「それがよさそうよね」
先ほどまで火花バチバチだった二人が、なぜか協力し始め、その視線は和樹へと向けられていたのだった。
「ね、和樹君」
「和樹!」
対面上のソファに座っている玲奈と、テーブル前に佇んでいる梨花から問われていたのだ。
「「どっちを本当の恋人にしたいの!」」
店内に二人の女の子の声が響く。
今まさに和樹は窮地に追いやられていたのだ。
ここで変な返答をした日には、もう一環の終わりなのである。
逆に考えれば、自身の意見をハッキリと伝えられるチャンスでもあるのだ。
いつまでもクヨクヨと考えてはダメだと思い、和樹は男らしく真剣な瞳を見せた。
すると、玲奈と梨花も、その態度にハッとしたのか、少々動揺していたのだ。
「俺……玲奈とこれから付き合っていきたいと思ってるんだ。だから、恋人にしたいのは、玲奈の方だから」
「ありがと、和樹君!」
玲奈は感謝する瞳を浮かべ、それから梨花の方を見やった。
「ほらね、和樹君は私の恋人なの。だから、和樹君とプライベートで一緒に過ごしてもいいでしょ」
「うッ……んんッ!」
梨花は後ずさる。
拮抗していた二人を見定める審判である和樹から下されたセリフを前に、梨花は顔を強張らせていた。
何も言い返せる言葉もないようで、口元を震わせていたのである。
玲奈は、梨花をさらに追い込むために、和樹に対し、スプーンで掬ったパフェの一部を食べさせていた。
その瞬間を目撃する羽目となった梨花は、現状に耐え切れなかったらしく、瞳を潤ませながら立ち去って行ったのである。
「和樹君、これで二人きりの時間を過ごせるね♡」
「そうだね」
「ありがと。和樹君が私のことを選んでくれて嬉しい♡」
「俺は当然の事をしただけさ」
「でも、和樹君が言ってくれなかったら、収拾つかなかったと思うし、これはこれで正解かもね」
玲奈は和樹が口にしたスプーンでパフェを食べていたのだ。
「ふふ、間接キス的な感じね」
玲奈は蠱惑的に笑みを零していた。
「じゃあ……それ以上の事をやる?」
「え?」
玲奈は目を点にしていた。
「和樹君って、そういうことって言うんだね」
「な、何となくね。たまたまだよ。そもそも、恋人らしい事をしようって言ってきたのは、玲奈の方でしょ。だから、俺からも言ってみただけだよ」
「和樹君もそういう気分なら、私もいいよ」
「え? ほ、本当に?」
「和樹君が、その時になってから動揺しなければいいんだけどね」
玲奈は対面上の席に座っている和樹の方を見つめ、悪戯っぽく言う。
「俺、そんなに小心者じゃないよ」
「そっか。まあ、昔よりかは、ハッキリとした意見を持つようになったし、もう小心者じゃないよね」
ちょっとばかし、玲奈からはからかわれていたが、それでも和樹は、彼女と一緒の時間を過ごせているだけで幸せだった。
「美味しかったね、最後に食べた特大パフェ」
「う、うん。美味しいには美味しかったけど。うッ、もうお腹が苦しい……今日の夕食はもういいかな」
お昼の時間で、一日分の食事を行ったと言っても過言ではなかった。
街中のファミレスを後にした二人は、家のある方角へと向かって歩き始めていたのだ。
「そんなに?」
「う、うん」
「じゃあ……和樹君って、今から私の家に来れる?」
「今から?」
「そうだよ。ちょっと休んでいきなよ」
玲奈は軽いノリで誘ってくる。
「いいの?」
「いいよ。今日は両親が帰って来ないし。それに、和樹君がさっき言っていた事もちゃんとやれるし」
「⁉」
「やっぱり、本当にやるってなると恥ずかしい感じ?」
「べ、別に、そんな事はないよ」
和樹は隣を歩いている玲奈の姿を無意識的に見た。
玲奈はプライベートで着るようなフワッとした軽い私服を着用しており、ゆえに出るとこがちゃんと出ている。
爆乳さが際立っており、彼女のカップ数はKもあるのだ。
彼女のおっぱいの大きさを妄想すると、先ほどまで感じていた食事後の息苦しさが半減されていくかのようだった。
「私、和樹君の事を――」
午後の二時の時間帯。
まだ夜ではないのに、玲奈は突然、和樹にだけ聞こえる声で囁くようにエッチな発言をし始めたのだった。
罰ゲームで付き合っていたと言って振った彼女。俺が、えっちな美少女と付き合い始めた途端、手の平返ししてきた件――後日談 譲羽唯月 @UitukiSiranui
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