心の器

こはな。

第1話11月1日

2024年11月1日

朝の出来事である


死にたい

脳が覚醒して最初に思い浮かべた言葉だった


消えたい

どうしようもなく心が悲しくなった

どうしようもなく心が虚しくなった


やりたいことはある

ちょっと面倒だけれど

やらなければならないこともある

かなり面倒だけれど


大事にしたいものと

やりたいことを天秤にかけてはみるが

どちらも欲しいのだ


欲張りなのだ

わがままなのだ


そうこうしているうちに

どうしようなく希死念慮が迫ってくるのだ


全てを放り出せたらどれだけ楽か

全てを投げ捨てられたらどれだけ幸せか


けれど、全て欲しいのだ

放り出したいと思ったものも

投げ捨てたいと思ったものも


2023年11月1日

未明のことである


体調がひっくり返った

体の中のものが全て出ていった


どんどん干からびていく中で

ああ、自分は死ぬのだろうと悟った

結局死ぬことはなかったが


しかしその中で

生きたい

と思った


まだ

死ねない

と思った


大事なものを再認識した

今ある環境が

自分を大切にしてくれる人々がいることが

幸せなのだと

このままでいいのだと

感じられるようになっていた


2024年

現在に戻り


同じ11月1日に感じていること


それは

死にたい


生きたい

だったはずのものが

ひっくり返ってしまった


変わらない日常を望んでいたはずが

変わることを望んでしまった


変わらない環境でいたかったはずが

新しい環境に手を伸ばしてしまった


覆水盆に返らず


死んだら元には戻れない

大事な人々を置いていくわけにはいかない


けれど

死にたい

けれど

死ねない


泥に沈められた人のように

上手く息ができないまま

身動きを取れずにいる


ただ覚悟が足りていないのだ

ただ逃げ道が欲しいだけなのだ

ただまだ甘えていたいのだ

ただ…ただ…


幸せに生きていたいのだ


11月1日

私が苦手とする日

今年も派手にやってきて

心にドカンと衝撃を与えていった


来年はどうなっているのだろうか

まだ私は生きているのだろうか

それとも…


どうか

生きたいが

死にたいを

飛び越していることを

願うばかりである

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

心の器 こはな。 @kohana_0

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る