RepeTitioN

久遠惺

第1話

音を聞いて。

すう、すう、ごおごおと穏やかに、厳かに吹く風。自然の恐ろしさと優しさを肌に理解させる。

周りは荒廃し不毛な砂の大地と、そこに

並んで立ったり寝転んだりしている建物達。

雨が降ったからだろうか、地上の光もなく空は幾億もの輝きが見える。ただ、それだけ。そこに

無数のキャンパスを見出すものはいない。

生命とは合間見えなくなった世界。

疲れた足で何とかして歩いてみる。

ざっ、ざっ、ざっ。無い道を作って歩く。

果てしない、果てしない。永遠の言葉が浮かぶ

ような道のり。しかし、そんなものは無い。

ある一本の樹が見えた。

周りの景色とあまりにも非対称的に力強く佇む

それに、こころなしか風の音もそれに操られる

ように樹の方に風向きが変わる。

まるで周りから生きる力をすいとっているのではとすら思う。

からから、ぱらぱらと枝が擦れ、葉が擦れる音。

知覚されることでさらにその音は強くなる。

少し怖かった風の音はかき消されていく。

近づいていく。遠くから見えていたよりも大きく見える。やがて見上げる程の位置にまで近付くと、ほのかに温かさを得た気がした。

自らも輝きを発しているようにも見える一枚一枚の葉と、星のデュエットがよく映えている。

そして、樹に触れられる位置まで来る。

そっと、触れてみる。それに確かに打ち返してくる樹の生命力に、安心を覚える。

そして、そっと目を閉じる。

耳を澄まして。

風で木が軋む音、さらに強くなった枝葉の音。


もっと、耳を澄まして。


声だろうか。微かな音量、

しかし何となく分かる。声に違いない。

声は少しずつ強くなっていく。それは明確に理解出来るまでになる。言葉が聞こえる。

様々な声。気持ちを伝えるために出した声。

伝えられなくて自分の中でこだました声。

生きるためにやぶれかぶれに投げた声。

死にたいとつぶやいた声。

呪う声。罵倒する声。

その中で、

ひときわ強く聞こえてしまった声があった。

ああ。こんなことは、あまりにも無情だ。

もうやめてしまいたいのだけれども。

見るのを忘れてしまっていたから、

一応、耳を傾けてみるだけしようか。

期待はしないように、言い聞かせておこう。

「全部、同じことの繰り返しなんだ。」



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