アエテルタニスの星

再再再試

第1話 アニテルタニスとフェルの願い

永遠の国アニテルタニス

様々な種族の生物が暮らすこの王国の片隅に

「パルヴァム」という妖精の村があった。

アニテルタニスには様々な種族がいる。

よって衝突を避けるために種族ごとに居住区が分かれていた。

その為ある程度の年齢になるまでは他の種族の存在に気づかない、そんな事もあった。

さて、この村には

フェル

という妖精がいた。

両手を広げた長さと同じくらいの羽が背中から生えており耳が少しとんがって長かった。

目は妖精らしく黄色、

髪は母親譲りで、夜の様に青かった。

この世界に生まれてから15年が経っていたが、

この村から1度も出たことがなく、世間知らずというよりも、世界知らずだった。

村にあるほんの僅かな本とごくたまに王都に行く連絡係の妖精からしか情報を仕入れるしかできず、

世界を知ることに憧れを持っていた。


ところで多く妖精は大体村から出る事は無かった。

王都に村の近況を報告したり王都からの連絡を持ち帰ったりする連絡係以外の妖精は、

大概は村から出ずにその生涯に幕を下ろす。

何故そうなのかというとそれには妖精の地位が関係していた。

というのもアニテルタニスには階級制度があった。

職業なども階級によって決められ、重要な職業などは階級が高くないと出来ないのだった。

階級は種族ではなく自身の実力で決まるのだが

やはり種族ごとに能力には格差があり

大体は自分の種族がよくやる職業に就くのだった。

妖精のやる仕事は大体が農業。

村に広大な畑があるためそこでしか働くことをせず、よって村から出る事はなかった。


しかしフェルはそんな人生を望まなかった。

妖森林伐採や農業ではなく

王国のトップに直接仕える仕事がしたかったのだ。

それには相当な階級が要求される。


この国では階級ごとに決まっている色を国民は着用しなければならなかった。

フェルの洋服の色は黒。

階級が無いという意味の色だ。

階級の色は黒、紫、青、緑、黄色、橙、赤、灰、白の順に偉くなっていき、

そして王国のトップ

(この国ではレックスと呼んだ。)

レックスに仕える為には橙色の階級にならなければならなかった。

妖精は大体黒の1つ上の紫色の服を着ていた。

つまりこのままここにいてもレックスに仕える事は出来ないのだ。

しかし階級を上げようにも階級試験は1つ1つが難しくお金もかかるため、

受けるのが難しい。

しかし一気に階級を上がれる方法があった。


「フェルー。そろそろ時間だよ。」

「うん、すぐ行く。」


今日フェルはこの村を出て王都にある

「王立ロット学園」

の入学試験を受けに行く。


この学園は王国トップの難関校で

なんと学費はタダ。

どの種族でもどの階級の生徒でも通うことができ、

さらにもう1つ。

卒業する事が出来れば橙色の階級になることができるのだ。

連絡係の妖精からそう情報を聞いてから5年。

遂にこの日が来た。


(絶対合格して、私はレックスに仕えるんだ。)

そうフェルは心に固く近い今日まで様々な準備をしてきた。


「フェル、頑張ってね。」

父からの声援を背中に受けフェルは助走をつけ

崖から思いっきりジャンプした。

そしてすぐに羽を全力で動かした。

風が下から吹きつけてくる。

雲が近くなり、鳥が近くを飛んでいる。

練習の甲斐もありいつも以上に速く飛ぶ事が出来ている。

景色がどんどん変わる。

村にある広い畑も一瞬で通り過ぎた。

幼い頃はいくら走ってもあの畑から抜け出す事は出来なかったのだ。


しかし今、フェルは畑どころか村を囲っている柵すら飛び越えて王都に向かいその羽を広げていた。

目には希望を宿し、心に炎を灯しながら。

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