第2話 もしかして:ロボット
「つまりじいちゃんは日本語を喋れるわけじゃないのか」
「儂が知っているのは精霊を召喚するためのいくつかの呪文と、空中に現れる魔導書の扱い方じゃな。まあシキに精霊の加護を譲渡したから、儂にはもう精霊も魔導書も見えなくなったがのう」
「日本語での命令が呪文で、この人が精霊。魔導書ってのはこの利用規約のことかな」
『今は利用規約だけ表示していますが、同意して頂ければすぐにメインメニューをお見せしますよ!』
シキの呟きに空中に浮かぶ美女が答えた。
当初は凛として落ち着いた雰囲気を醸し出していたが、今は興奮していて鼻息も荒い。
ちょっと怖い。
「日本語だけでなくこの国の言葉もわかるんですね? ええっと」
『私は総合支援AIのオルティエと申します。私を含めた全ユニットのAIはマスターの指示を忠実に、且つ迅速に達成するため最上位品質の量子型中央処理装置を搭載し学習することが可能です』
「えーっと、つまり言葉を覚えることもできる?」
『はい』
「そこまで優秀ならじいちゃんに日本語を教えても良かったんじゃないですか?」
『優秀だなんてそんな……おっほん、失礼。私たちAIはマスターの忠実なる僕ですので、直接干渉する権限はありません』
シキに褒められて? てれてれと照れだしたオルティエであったが、途中できりりとした表情に戻った。
「そ、そうなんですか。それじゃあ早速規約を読みますね。なになに、
要約するとそれはネトゲの利用規約であった。
お馴染みの規約の定義、同意、変更、プライバシーといった注意事項が小難しい言葉で並んでいる。
ただしシキの知るものよりもこれらの規約は膨大で、より先進的なものであった。
「拡張表示の投影による脳への負荷ダメージについて……こわっ」
『規約上謳う必要があるだけで、実質的な危険はほぼありません』
「いやまあ、じいちゃんから引き継いだ以上、同意しないわけにはいかないんだけどね。規約って後で読み直すことも出来るんですか? それなら画面をスクロールして……おお、指だけでなく視線でも動かせるのか」
シキが長い規約に同意すると、視界に広がる画面が切り替わった。
中央は巨大なモニターになっていて、鬱蒼と茂る森林を航空写真のように俯瞰した映像が映し出されている。
画面の上部には〈ユニット〉〈部隊〉〈ガレージ〉〈設定〉などといった項目が並んでいた。
森林の中にいくつかの光点を見つけたので、シキがそのうちのひとつに意識を向けると、そのユニットの情報が小窓で表示された。
〈SG-071 シアニス・エルプス〉という名称と共に、重厚な装甲を纏った人型兵器の機体画像が映し出される。
「えすじーぜろなないち……オルティエさん、これってどう見てもロボットだよね」
『はい。正確には換装式汎用人型機動兵器ですが、俗称でスプリガンと呼ばれています。当初は圧倒的な継戦能力を揶揄され〈
「うーん惜しい。スプリガンといえば精霊じゃなくて妖精だよね」
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