精霊仕い

忌野希和

1章 精霊(ロボット)に愛された少年

第1話 世代交代

「それじゃあシキ、今からお前に儂の持つ精霊の加護を授けるぞ。よいな?」


「うん、わかった!」


 紺のローブにとんがり帽子を被った、いかにも魔術師といった姿の老人が、シキと呼んだ少年の元気の良い返事に頷いた。


「これからは年老いた儂の代わりに国防を頼むぞ」


 おほん、と軽く咳払いをしてから老人は手に持つ節くれ立った杖を掲げる。

 そして呪文を唱えた。


『マスター権限変更。ロナンドからシキへ譲渡』


「ん? 今のって」


『権限変更の命令を受諾しました』


 凛とした美しい声が聞こえたかと思うと、シキの目の前に突然女性が現れる。

 声の通り上品な雰囲気を漂わせた銀髪銀眼の美女で、地上から50センチほどの位置に浮かんでいた。


 しかし精霊と呼ぶにはその服装は少し……いやかなり変だ。

 ぽかんと見上げているシキに微笑んでから、美女が喋りだした。


『こちらの言語を理解されていないと思いますが、規則なので説明させて頂きます。マスター権限の変更によりシキ様にはこれから108の規約に同意して頂き――』


『いや、わかりますよ。思いっきり日本語だし』


『こちらの〈私はロボットではありません〉にチェックを入れて……えっ』


 返事があるとは微塵も思っていなかったのだろう。

 空中に新たに出現した画面について説明していた美女が、驚愕の表情を浮かべながらシキを華麗に二度見した。


「じいちゃん日本語使えたんだね。そうならそうと早く教えてくれればいいのに」


「えっ、なんじゃそれは」


「えっ」


 三人とも驚きを隠せないまま、こうして精霊の加護の引継ぎが始まったのであった。

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